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【職場の喫煙マナー】非喫煙者が納得する喫煙マナーの設定方法

突然ですが、あなたの職場では、タバコを嗜む上でのルールはありますか。また、そのルールは、非喫煙者にとって納得のいくものになっているでしょうか。タバコを嗜む方には当たり前の、就業時間中の「タバコ休憩」。でも、もしかしたら非喫煙者からは、さまざまな理由から嫌がられているかもしれません。

非喫煙者からは、タバコ休憩と同等な休憩時間がないからずるいと言った声や、受動喫煙による健康被害を訴える方もいます。一方で、喫煙者にとってタバコは大切な嗜好品であり、喫煙がストレス解消や気分転換となって生産性向上につながるとの反論も根強くあります。

喫煙者も非喫煙者も譲らない主張を持つだけに、双方の間で板挟みになりがちな総務担当者。喫煙マナーをきちんと定めておくことが従業員のわだかまりを解くことにもつながります。そこで、わだかまりのない喫煙室の設け方と、社内の全面禁煙化のメリット、そして全面禁煙化の方法について考えてみましょう。

【1】喫煙ルールの設定方法とマナーの啓発


ここでは、厚生労働省の「事業者の努力義務」規定をもとに、職場の喫煙マナーの設定方法と啓発方法を考えます。

厚生労働省の「事業者の努力義務」規定によると、企業がとるべき喫煙ルールとしては次の3パターンが挙げられています。

1)喫煙室の設置(空間分煙)
2)建物内禁煙(屋外喫煙所)
3)敷地内禁煙(全面禁煙)

具体的に喫煙マナーの設定はどのようにすべきなのでしょうか。次章で考えてみましょう。

■喫煙室の設置(空間分煙)
仮に、社員に断りもなく喫煙室の設置をすると、非喫煙者からは「喫煙者のみ優遇されている」「なぜ非喫煙者が利用できる休憩ルームはないのか」とクレームがでる場合があります。喫煙者からは「もっと快適なスペースを用意してほしい」といった要望もあるかもしれません。

この場合は、「そもそも喫煙室設置は、非喫煙者の健康を守るため」という、大もとの目的を説明すると双方のわだかまりがなくなり、効果的です。

また、社内で喫煙ルームのアンケートをとったり、時代の波に従い全面禁煙運動を経営陣に提案することもひとつの案。

もしも喫煙室を設置する場合、喫煙者のマナーとして以下の3つの配慮をしてもらえるよう周知しておくとよいでしょう。

1)長居しない
2)喫煙所を清潔に保つ
3)衣類に残されるにおいに注意する

非喫煙者への配慮と節度のある使用を、喫煙者に求めることも大事です。

■建物内禁煙(屋外喫煙所の設置)

建物内を禁煙とし、屋外に喫煙場所を設ける場合には、以下のマナーが求められます。

1)窓や出入り口からタバコの煙が外にもれないよう、閉めるといった配慮
2)通行人の受動喫煙に対する気配り
3)学校や公園、民家への風向きの工夫

また、利用者に対して先ほどお伝えした喫煙室のマナーも周知しておくことも忘れずに。

■敷地内禁煙(全面禁煙)
社内を全面禁煙化することは、喫煙者は昼休み等に敷地外の喫煙可能な場所で喫煙することになります。当たり前ですが、「吸殻を捨てないこと」「近隣に迷惑をかけないこと」は周知しましょう。

全面禁煙化を実施するためには、まず経営トップの決断とともに、衛生委員会などで労使の合意を得てルールを策定し、その周知と徹底を図ります。具体的には、社内報やポスターによる情報共有や教育を繰り返し行うことが大切。全面禁煙の効果をデータ(喫煙率、疾病休業率等)で周知することも効果的です。社内を全員巻き込んで、禁煙化に取り組むようにしましょう。

【2】星野リゾートグループは、作業効率、施設効率、職場環境の向上のために「全面禁煙」を実施


事業所の全面禁煙や社員の禁煙サポートにとどまらず、「採用段階で喫煙者を受け付けない」ことを2010年に発表した星野リゾートグループ。その理由は次の3点にまとめられます。

1.作業効率
喫煙者は血液中のニコチン含有量の減少により集中力を維持することができなくなる。言い換えれば、たばこがもたらす中毒症状は、結果的に社員の潜在能力を低下させる。
2.施設効率
健康増進法の施行により、企業内の職場では分煙環境が必要。しかし、リゾート事業においては、少しでもスペースがあるなら顧客へのサービスに当てるべき。社員の喫煙場所に投資するのは非効率。
3.職場環境
喫煙者の社員には喫煙場所が設置され、より頻繁に休憩が認められることは、喫煙習慣のない社員から見ると不公平に感じる。
また、喫煙習慣のない社員で構成する会社と、全員が喫煙習慣のある社員で構成する会社が競争すれば、後者が最初から不利な環境に置かれるのは自明。したがって競争社会を勝ち抜いていく上で喫煙は望ましくない。

この宣言は大きな話題を呼びましたが、「喫煙しない」ことを採用の条件とする会社は増加しつつあります。たとえば下記の企業が挙げられます。

・半導体機器製造などの「エムテック マツムラ」
・モバイル広告代理店の「ライブレボリューション」
・北陸3県を中心に30か店の靴チェーンを展開する「ワシントン靴店」
・婚活・飲食事業などを手がける「エクシオジャパン」
・ドラッグストア「ザグザグ」
・認定NPO法人「フローレンス」

ただ、いきなり全面禁煙をするのは難しいと思われた方も多いはず。

従業員の反応や効果を観察しながら、以下のように徐々に実現していくことをおすすめします。

1)たばこ自動販売機の除去
2)喫煙室スペースを減らし、社員の憩いの場としてリフレッシュスペース*を拡大
3)来客には社内禁煙を説明し、応接室や会議室での喫煙を控えていただく

*ランチを共同で食べるスペース、カフェテリアなど

【3】ユニークな禁煙取り組み事例

タバコに含まれるニコチンは依存性が強く、自分ひとりの力での禁煙は容易ではありません。そのため、企業が従業員の禁煙を積極的にサポートするケースも増えています。ここでは、企業のユニークな禁煙取り組み事例を5つご紹介しましょう。

◆禁煙手当
株式会社  武蔵野
中小企業のコンサルタント業務と、ダスキンのフランチャイズ事業を行う株式会社武蔵野では「禁煙手当」があります。

社員の健康を心配した小山昇社長が、「吸っていることを罰するのでなく、禁煙してよかったと思える仕組みづくり」を目的として2000年に導入。課長職以上は年間20万円、一般社員には10万円が支給されました。禁煙宣言をした後で喫煙が発覚した場合は、手当の3倍の罰金が科せられる仕組み。

◆健康経営の一環として独自の禁煙促進策を実施
テルモ株式会社
「医療を通じて社会に貢献する」が企業理念のテルモ株式会社。「禁煙クエスト」と言った遊び要素のある取り組みと、座学として「禁煙セミナー」も実施しています。

■禁煙クエスト(卓上型禁煙カレンダー)は、すごろくの要領で禁煙に成功するたびにシールを貼るもの。すべてのマスをシールで埋めつくすと、100日間の禁煙達成となる。ロールプレイングゲームをイメージした個性的な禁煙の試みです。
■禁煙セミナーでは、社員の家族を職場に招く『ファミリーデー』のとき禁煙セミナーを行うことで、家族からも禁煙を促します。

これらの取り組みの結果、喫煙率は1年間で34%(2013年度)から32%(2014年度)に低下したようです。

◆禁煙&非メタボに健康手当
コアーズインターナショナル株式会社
自動車用品販売オートバックスセブンの子会社で、自動車用品の卸売をしているコアーズインターナショナル株式会社では、社員の健康は会社の財産と考え、「禁煙をすれば月2000円、メタボリックシンドロームでなければ3000円をさらに上乗せ」という健康手当制度を導入しています。

健康手当をもらうためには、「健康宣言書」に署名して禁煙を誓う必要があります。社内に限らず、家庭でも禁煙を義務づけるよう、宣言書には家族の署名も不可欠です。

◆「密告制度」を伴う禁煙活動

トリンプインターナショナル・ジャパン
世界屈指の下着メーカー、トリンプインターナショナルの日本法人では、社員が禁煙宣言を行った場合、禁煙報奨金3万円を支給しています。

さらに、「密告制度」も用意されており、禁煙宣言を行った社員が喫煙したのを目撃した場合、その旨を人事部に報告すると1万円の協力金が支払われます。禁煙に失敗した社員は6万円を自主返納しなければならないというペナルティも……。強制力がありそうです。

この活動の結果、社内の喫煙者数は138名から0名になったと同社は発表。社員が健全な職場環境を作る努力をした結果だとし、制度の対象になった全社員307人には特別賞与として一律5万円が支給されました。

◆社内喫煙可能本数の上限設定
株式会社アドウェイズ
インターネット広告事業・メディア事業を運営する株式会社アドウェイズ。休憩スペースには喫煙所を2ヶ所用意し、最新の分煙システムを導入しています。

入口のタッチパネルでは喫煙本数を自己申告するルールを設け、会社全体で1ヶ月間に吸ってもいい本数の上限を2万4000本までと規定。約150人いる喫煙者が吸える本数は1日当たり約5本となり、これを超えると翌月まで誰もタバコを吸うことができなくなるのだとか。

「喫煙者にストレスを感じさせることなく健康管理できるような配慮」とのことです。

まとめ

スモハラ(スモークハラスメント)という言葉も生まれるほど、近年、受動喫煙の影響は社会が警戒するところとなっています。特に企業内では、有能であっても、目に余るタバコ休憩や周囲への配慮を欠く喫煙者の態度は、批判や苦情の対象になりかねません。

喫煙者も大事な従業員であることに変わりはなく、双方の線引きをバランスよく行うことが総務部門には求められます。喫煙者と非喫煙者の仲介役として、誰もが納得するようなルールと喫煙マナーを設定し、遵守を促すことが大切。喫煙者と非喫煙者が対立することなく環境面でも快適な職場が生まれるかどうかは、担当者の手腕にかかっているといえるでしょう。

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