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氾濫危険水位とは?国土交通省警戒レベル別の用語、対処法を解説

氾濫危険水位とは?国土交通省警戒レベル別の用語、対処法を解説

「氾濫危険水位と言われても、似たような言葉が多くて分からない」という方が多いのではないでしょうか。

今回は、氾濫危険水位を中心に、水位や水害への対処方法について解説します。水害に関する用語、避難方法、対策などを知ることで、水害発生時の事業継続につながります。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

氾濫危険水位とは

氾濫危険水位とは、洪水によって破防や家屋浸水被害などのおそれがある水位です。言い換えれば、避難時に発令判断の目安となる水位です。なお、水位とは一定の基準面から計測した水面の高さのことを指し、常に複数の水位観測所で観測されています。

氾濫危険水位に達するおそれがある場合、水防団、関係行政機関、放送機関などが協力し、住民に氾濫警戒情報を発表します。

【警戒レベル別】氾濫危険水位の関連用語・防災情報一覧

国土交通省の『出水情報(河川情報)の入手について』『水防警報の種類と発生基準』をもとにした水位、警戒レベル、情報の関連性は次のとおりです。

水位警戒レベル情報
・氾濫が発生したとき5氾濫発生情報
・氾濫危険水位に到達したとき4氾濫危険情報
・避難判断水位に到達後、さらに水位の上昇が見込まれるとき
・水位予測に基づき、氾濫危険水位に到達すると見込まれるとき
3氾濫警戒情報
・氾濫注意水位に到達後、さらに水位の上昇が見込まれるとき2氾濫注意情報

水位に関する用語についても、詳しく解説します。

計画高水位

計画高水位は、計画高水量が河川改修後の河道断面を流下するときに測る水位で、護岸や堤防などを設計する基本となります。また、計画高水量とは、降った雨の一部をダムや貯水池で差し引いたあとに測る水量です。

計画高水位を上回る洪水は、堤防から水が溢れたり、堤防が決壊したりするリスクと言えるでしょう。

避難判断水位

国土交通省によると、市町村長が避難勧告を発令するにあたって、判断の目安として避難判断水位を利用するとされます。

避難判断水位を超えると、その後の降雨状況によっては洪水や氾濫が発生するおそれもあります。市町村からの避難情報に留意しましょう。

また、避難に時間のかかる「要配慮者」は、このタイミングで避難するかを判断しましょう。要配慮者とは高齢者、障がいのある人、妊産婦などです。

氾濫注意水位

水防団が出勤して河川の警戒にあたり、氾濫の注意喚起をする水位です。水防団は住民が自衛する減災組織で、洪水時の巡視、警戒、水防工法の実施をします。

この水位では、法崩れ(のりくずれ)、洗堀(せんくつ)、漏水などのリスクがあります。法崩れとは、堤防法面に貼られている芝が崩れ落ちることです。また、洗堀とは激しい川の流れや波浪などにより、堤防表面の芝が削り取られる状態です。

水防団待機水位(指定水位)

水防団待機水位とは、水防団が自宅で水防活動の準備を始める目安となる水位を指します。

水防団待機水位に達したときは、水位の状況を関係機関に連絡します。毎時観測を開始するのもこのタイミングです。

通常水位

平常の水圧で、水防団待機水位以下の状態のことです。

国土交通省によると、水位とは零点高標高(基準高)を0とし、そこから水面を測った高さとして定義されます。通常、零点高標高は東京湾の平均海面からの高さで表示します。

氾濫の種類

氾濫の種類は「外水氾濫」と「内水氾濫」があります。それぞれの特徴を知れば、水害時の対策を立てやすくなるでしょう。

外水氾濫

外水氾濫は川の水が堤防から溢れたり、溢れた水によって堤防が破られたりしたとき起こる洪水です。

大量の氾濫流が市街地に勢いよく流れ込むため、ほどなく住宅や田畑などで浸水被害が起こります。また、泥水が流れ込むと、洪水後も家に土砂が溜まってしまい、復旧に時間と労力がかかります。

国土交通省の報告によると、2015年9月の「関東・東北豪雨」で鬼怒川の堤防が決壊しました。この決壊は全壊 54件、大規模半壊 1649件、半壊 3574件、床下浸水 3385件、床上浸水 168件、死者6人(うち関連死4人)と甚大な被害をもたらしました。

内水氾濫

内水氾濫は大雨で下水道や支流の排水能力が限界に達し、堤防に守られた居住区側で浸水が発生する現象です。

国土交通省の調査によると、過去10年間における浸水被害の約3割は、内水氾濫によるものでした。また、東京都では約7割が内水氾濫による浸水と報告されており、とくに都市部で起こりやすい現象と言えます。都市部で内水氾濫が起こりやすい原因は、コンクリートやアスファルトで舗装されている場所が多く、雨水が吸収されにくいためです。

内水氾濫は2種類に分けられます。

氾濫型の内水氾濫は、短時間の豪雨で排水能力が限界に達して起こります。一方で、湛水型の内水氾濫は、河川の水位上昇で下水道や支流の排水ができず、氾濫してしまうのです。

外水氾濫と内水氾濫について詳しく知りたい方は、『みんなのBCP』の記事をご覧ください。

河川の氾濫・水害に備えてできること

河川の氾濫が起きたとき、浸水や逆流を防ぐための対策についてお伝えします。対策法を知っていれば、水害時に社屋への損失を抑えられるでしょう。

外からの浸水を防ぐ

外からの浸水を防ぐ方法として、土のうの設置、簡易防工法、水中ポンプの設置などが挙げられます。

土のうを設置すると、道路から建物内への雨水の侵入を抑えられます。また、建物の形にあわせて設置できるのも利点です。土のう袋はホームセンターで購入できます。

簡易防工法は、小規模な水害の初期段階に適した方法です。40L程度のゴミ袋を2枚重ねにして、中に半分程度の水を入れます。水のうを段ボール箱に敷き詰めてレジャーシートで包み、建物の出入口に隙間なく並べます。

水中ポンプに関しては、敷地内に溜まった水を排水する方法です。水中ポンプ自体はホームセンターで購入できます。

逆流を防ぐ

大雨によって下水処理能力が追い付かなくなると、風呂場、トイレ、洗濯機の排水溝などから下水が逆流します。汚水の逆流によって悪臭が残ってしまうでしょう。

トイレや排水溝などに前述した水のうを設置すると、逆流を抑えることができます。トイレについては、便器の上にゴミ袋1枚を敷いてから、水のうを詰めましょう。

水のうは、早いタイミングで設置することが大切です。便器からボコボコと音がする、悪臭がする、便器内の水がはねるといったときは、逆流する危険性が高いと考えられます。

早めの避難を心掛ける

河川氾濫のおそれがある場合、自治体が発令する避難情報を参照し、迅速に避難してください。

自治体が発令する避難情報は、主に以下の3つです。

  • 避難準備情報:災害発生の可能性があるときに発令され、避難準備を開始する。
  • 避難勧告:災害による被害が予想される地域に避難を呼びかける。避難所への避難を開始する。
  • 避難指示:災害発生の可能性が高いときに発令される。ただちに避難を開始する。

自宅や会社がある地域の洪水情報は、気象庁のWebサイトから確認しましょう。洪水警報の危険度分布を示したマップ(『洪水キキクル』)が提供されています。

また、避難経路や避難場所も事前に確認しておくことが重要です。

氾濫時の避難方法

ここからは、河川が氾濫してしまったときの水平避難と垂直避難についてお伝えします。避難方法ごとの注意点を知り、最善の方法を選びましょう。

水平避難

水平避難(立ち退き避難)は、自宅以外の安全な場所に避難する方法です。

水平避難は移動のリスクが伴うため、災害発生前の避難が前提としてあります。自治体から警戒レベル3相当の情報が発令されたときが、避難開始の目安です。気象庁や自治体の情報をもとに、自分で避難するかを決定する姿勢が重要です。

移動は徒歩が推奨されています。車が故障したり、被災で動かなくなったりするおそれがあるためです。原則として暗くなる前に2人以上で、動きやすい靴を履いて避難します。

垂直避難

垂直避難は、自宅や社屋の2階以上、もしくは近隣のより高い建物に避難する方法です。急激な豪雨や夜間の場合、避難所までの移動は危険が伴うため、垂直避難を選択しましょう。

洪水は、水が引くまでに最大1週間程度かかる可能性もあります。電気、ガス、水道などのライフラインが停止した状態で孤立したときに備え、生活物資を備蓄しておくといいでしょう。

企業における水害対策

企業向けの水害対策としてはまず、洪水リスクを把握することが重要です。その後、BCPも策定しておきましょう。

対策のポイントを知れば、効率よく備えができるでしょう。

洪水リスクの把握

国土交通省の『ハザードマップ』を確認し、会社で浸水が想定される場所、タイミング、程度などを把握します。

国土交通省が発表している『水害リスクライン』を用いると、大河川の浸水危険度を分析できます。中小河川用の浸水危険度が分かる気象庁の『洪水キキクル』も併用すると、河川の情報を一体化して閲覧できるでしょう。

また、国土交通省の『タイムライン(防災行動計画)』を参考にし、「いつ」「誰が」「何をするか」に着目して防災計画を策定しておきます。

備蓄の準備

企業には最低限3日間、可能であれば1〜2週間分の備蓄が求められます。

『東京都帰宅困難者ガイドライン』は、人命救助のタイムリミットである72時間は従業員を社内に留めておく必要があるとしています。

災害発生直後に従業員が帰宅すると、救出や救助の妨げになったり、帰宅困難者となったりするおそれがあるためです。

最低限の備蓄例は、以下の通りです。

  • 水:ペットボトル入り飲料水
  • 食料品:クラッカー、アルファ化米、乾パン、カップ麺
  • 衛生用品:毛布、タオル、ティッシュ、トイレットペーパー、歯ブラシ、生理用品
  • 救急用品:消毒液、絆創膏、包帯
  • 簡易トイレ
  • 医薬品:かぜ薬、解熱剤など

避難マニュアルの作成

水害に対して自社の水害リスクを把握し、BCPを策定しておきます。なお、BCPとは「事業継続計画」のことです。つまり、自然災害、感染症の流行、テロなどの緊急事態で経営環境が変化しても、重要な業務を継続し、早期復旧させるために策定する計画です。

水害の発生に備えて、避難マニュアルの作成、安否確認の方法確立、緊急組織体制の整備などをしておきましょう。

水害に備えてBCPを策定しよう

今回は氾濫危険水位に焦点を当て、避難方法や対策についてお伝えしました。

氾濫危険水位とは、洪水によって破防や家屋浸水被害などの被害を受ける可能性がある水位です。適切な避難方法を選択し、命を守ることが重要です。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。