地震発生時に起こりうる液状化現象をご存じでしょうか。東日本大震災でも、液状化現象が発生したことで大規模な被害につながりました。
この記事では液状化現象について、その影響や対策方法などを解説します。防災対策の一環にお役立てください。
目次
地震で起きる液状化現象とは
液状化現象とは地震が発生した際、地盤が強い衝撃を受けることで発生します。揺れにより土で支えられていた粒子が崩れ、土粒子と水が分離し、地盤全体が液状になるのです。
内陸の平野部においても発生する危険性があり、地面が液状化すると、比重の大きい橋梁やビルなどが傾いたり沈下したりしてしまいます。一方で、比重の小さいマンホールや水道管などが浮き上がってくる被害もあり、こちらは断水につながります。また、木造住宅は基礎が浅いため、とくに液状化現象への注意が必要です。
液状化現象はライフラインへの被害が大きい都市型災害です。兵庫県南部地震、東北地方太平洋沖地震、熊本地震などにおいても、液状化現象は甚大な被害をもたらしました。液状化現象の影響と対策方法を知って、いざというときの被害を最小限に抑えられるよう準備しておきましょう。
液状化をはじめ、災害による被害を軽減するためにも、事前の準備が非常に重要です。
事業継続計画(BCP)を策定することで、企業は災害発生時のリスクを管理し、迅速に対応することが可能となります。
中小企業診断士である竹上将人氏監修のBCPマニュアルを利用すると、わずか1時間でBCPが作成できます。ぜひ、手順に沿って作成してみてください。
液状化によって被害を受けやすい土地の特徴
液状化によって被害を受けやすい土地にはいくつかの特徴があります。
埋立地のような新しい土地
造成後あまり年月が経っていない埋立地のような新しい土地では、液状化現象が発生する危険性があります。東日本大震災にて発生した液状化現象では、造成後50年〜60年以内の土地での被害が目立ちました。
かつて池や沼があった場所
かつて池や沼があった場所も、液状化現象が起こりやすい土地と言えるでしょう。池や沼を埋め立てた土地は地下水位が高く、土や地盤の状態によっては、内陸部であっても液状化現象の発生条件に当てはまる場合があるのです。
大河川の沿岸部
大河川の沿岸部や下流域は地下水位が高く、地盤の締まりが緩い傾向にあります。とくに砂質地盤の層では、液状化現象が起こる危険性は高いでしょう。よく氾濫する河川の合流部や屈曲部は注意が必要です。
砂丘間低地
主に日本海沿岸や鹿島灘などに分布する砂丘は、長年にわたって砂が蓄積されてできたものです。砂丘の砂は一様に同じ大きさで、かつ砂丘間の低地は地下水位が高いため、液状化は起こりやすいと言えます。
ハザードマップを確認し、建設予定地やお住まいの地域がどのような地盤の土地であるかを把握しましょう。
液状化現象によって起こる影響
液状化現象は、1964年に発生した新潟地震で広く知られるようになりました。その後も大規模な地震が発生した際には、さまざまな被害をもたらしているのです。
以下では、液状化現象が及ぼす具体的な影響について解説します。
砂や水の噴出
液状化現象によって地中の水圧が高くなり、砂や水が地面から噴出するかもしれません。すると地面が砂や水だらけになり、道路が使えなくなったり、車や自転車が土砂に埋もれてしまったりします。このように、液状化現象は市民生活に大きな影響を与えるのです。
他にも、田畑が水没したり砂で埋もれたりすることで、農作物への被害も考えられるでしょう。水分が乾いたあとに土砂が舞い散る粉塵被害も予想されます。
地中構造物への影響
液状化現象が発生すると、水よりも軽いマンホールのような地中構造物が浮上し、浮き上がってくることがあります。液状化した土砂がマンホール内に流れ込むと、下水道としての機能が果たせなくなってしまいます。このため、人々のライフラインにも重大な影響があるのです。
これらの被害は応急復旧までに約1ヶ月程度を要するため、生活への影響は長引くことが予想されます。
給排水の障害
地中に埋設された上下水道の管路が、切断されてしまったり引き裂かれたりすることがあります。
切断部分から土砂が入ると、給排水の機能が停止し、ライフラインに多大な被害をもたらすでしょう。また、破損した周辺だけではなく、液状化現象が発生していない地域にまで被害は広がってしまいます。
飲料水だけでなく、トイレやお風呂などの生活用水も使用できなくなります。他にもガス管が破損してしまうと、お湯が使えない、調理ができないなど不便な状態となるのです。
この場合も、復旧までには1ヶ月程度の時間を要するでしょう。
建物の傾き・倒壊
液状化によって地盤沈下が引き起こされると、水よりも比重の重い構造物は傾いてしまいます。また、木造住宅は基礎が浅いため、とくに影響を受けやすいでしょう。
建物が傾くことで倒壊の危険性も高まったり、扉や窓の開閉ができなくなったり、すき間やひび割れが発生したりなどして、生活が困難となる場合があります。また、傾いた家で生活していると、体調に支障をきたすおそれもあるでしょう。
ただし現在は、主要な橋には液状化への対策が施されているため、橋が傾いたり落ちたりする危険性は以前より少ないと言えます。
交通障害・事故の誘発
砂、水、マンホールなどによって道路が塞がれてしまい、交通障害を引き起こすおそれがあります。避難の妨げになるだけではなく、物流も停止してしまうでしょう。その場合、生活に必要な物資が手に入らないかもしれません。
また、緊急車両が通れないと負傷者を搬送できず、救助活動にも影響を及ぼすでしょう。さらに、道路が塞がれていることによって事故を誘発してしまう可能性もあります。
液状化現象の対策
これまでご紹介してきたように、液状化現象が引き起こす被害は甚大です。
被害を少しでも回避するには、液状化現象の要因となるリスクを低くする必要があります。ここからは、液状化現象による被害を抑えるため、私たちにできる対策をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
また、以下の記事も参考にして、地震対策にも取り組んでみてはいかがでしょうか。
事業所や建物周辺の地盤を調べる
建物を購入するときは、土地の事前調査をおすすめします。建物周辺の土地が、液状化現象の発生しやすい地盤であるかを確認しておくことが重要です。ハザードマップを確認すれば、液状化リスクの高い地域を知ることができます。
前述したように、新しい土地や大河川の沿岸部などは、とくにリスクの高い土地です。ほかにも洪水が発生しやすい土地は、地盤に水が溜まりやすく、液状化現象や地盤沈下のリスクも高い土地です。こうしたリスクのある土地を避けるために、ハザードマップを確認し、周辺の地盤を調べておきましょう。
ハザードマップの詳しい見方については以下をご覧ください。
工事や調査を検討する
ハザードマップよりさらに具体的で正確な調査を行うには、地盤調査がおすすめです。地盤にボーリングロッドを打ち込み、筒の入り具合や採取した土を参考に、地質を調査します。
費用はかかりますが、地層の状態を正確に把握できるため、液状化現象が起こる可能性についてより詳しく把握できるでしょう。液状化リスクの高い土地であれば、調査しておくことをおすすめします。
調査によってリスクが高いと分かっても、地盤改良や対策工事を行えば、液状化リスクを下げられます。もし液状化現象が発生しても被害を最小限に抑えられるよう、地盤、建物、基礎などの改良を検討することもおすすめです。
保険へ加入する
そもそもですが、自然災害を完全に防ぐことは不可能です。
大規模地震が発生すると、液状化現象を避けられない場合もあるでしょう。とくに液状化現象はライフラインへの影響が大きく、復旧にも相当の時間を要します。
対策のひとつとして、地震保険への加入がおすすめです。加入していると、地震による液状化現象で被害が出たとしても、保険金で補償してもらえます。万が一、液状化による被害が発生した際は、保険会社に連絡して補償内容を確認しましょう。
地盤の特徴を調べてもしもに備えた防災対策の検討を!
液状化現象は、大きな地震が発生した際、地盤の緩い土地で起こりうる災害です。
液状化が発生すると建物が沈下・倒壊したり、交通障害が起きたり、ライフラインが途絶えたりしてしまいます。液状化現象が生活に与える影響は甚大なのです。
被害を最小限に抑えるため、地盤の特徴を事前に調べておきましょう。液状化現象が起こりやすい地盤の特徴を知れば、対策することも可能です。
自然災害はいつ発生するか分かりません。日頃から防災対策を検討しておくことが大切なのです。