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リスクマネジメントとは?BCPを策定し災害時の企業損失を抑えよう

「リスクマネジメント」とは企業や従業員をリスクから守るための施策で、経営にかかせない要素のひとつです。昨今のリスクマネジメントの方法としては「BCP」が重要視されており、経営者や担当者は策定するための知識をつけておく必要があります。

本記事では、リスクマネジメントの考え方や重要性、具体的なプロセスを解説します。リスクマネジメントやBCPついて詳しく把握しておきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

企業を取り巻くリスクとは

企業を取り巻くリスクにはさまざまな種類があります。

以下に主な企業リスクをまとめました。

  • 自然災害(地震・台風など)
  • 感染症
  • サイバーリスク
  • 法令遵守違反
  • 事故によるトラブル
  • 情報漏えい
  • 社内トラブル(パワハラ・セクハラなど)

どのリスクも実際に発生する可能性がありますが、なかでも地震大国である日本においては「地震」への備えは非常に重要です。

内閣府「防災情報のページ」では、地震へのリスクについて「10年以内にM7.5前後の地震が発生する確率は60%程度、30年以内だと99%に達する」と発表しています。

あらゆるケースを想定し、リスク発生時に適切な対応ができるようしっかりと準備しておくことが大切です。

リスクの種類

リスクには「純粋リスク」と「投機的リスク」の2種類があります。

以下ではそれぞれを詳しくみていきましょう。

純粋リスク

純粋(じゅんすい)リスクとは、損失だけが発生するリスクのことを指します。

特徴としては、統計データをもとに発生率を割り出すことがある程度可能で、事前に対策を立てやすい傾向にあります。

純粋リスクの具体例は以下のとおりです。

リスクの種類概要
財産損失リスク地震や台風などで家屋(ビル)や商品が破損するリスク
利益減少リスク取引先の倒産により売上金が減少するリスク
人的リスク従業員が事故や怪我を負うリスク
賠償責任リスク製造責任や著作権の侵害で訴えられるリスク

投機的リスク

投機的(とうきてき)リスクとは、損失だけではなく、同時に利益が発生する可能性のあるリスクのことを指します。

具体的には以下のような種類のリスクが考えられます。

リスクの種類概要
政治情勢の変動リスク政権交代によって生じるリスク
法規制の変更リスク法の緩和・締め付けなどにより営業に影響を与えるリスク
経済情勢変動のリスク円高・円安など世界情勢や為替によって与えられるリスク
技術的情勢変動のリスク新技術の開発やAIの登場が与える影響によるリスク

災害などの企業リスクに対する備え

企業が災害などのリスクに備えるためには、さまざまな施策を検討しておくことが大切です。

例えば「予防策」としては、法的リスク(ハラスメント事案)が起きないように、徹底したコンプライアンス遵守を日頃からアナウンスすることが有効です。

また、地震や台風などの災害リスクに対しては「移転策」をたてておくこともあります。
具体的には、リスクを移転させる(自社だけが被らないようにする)ために、災害に備えた損害保険に加入しておくことなどがあげられます。

その他にも、以下のような細かい対策を社内で行っておくのもよいでしょう。

  • 地震発生時の対応マニュアル作成
  • オフィス内の家具の転倒防止対策
  • 非常時の備蓄品の準備・管理
  • 定期的な防災訓練の実施
  • 従業員の避難場所の確保・確認

リスク管理の部署担当者だけでなく、全社員が当事者意識を持って非常時の対策を把握しておくことが重要です。

企業リスクマネジメントとは

企業におけるリスクマネジメントとは、あらゆるリスクを把握したうえで、自社に与える損失を最小限に抑える取り組みのことです。

英語の「リスク(risk)」は危険という意味で、これをマネジメント(管理)するプロセスや考え方の総称でもあります。

日々発生する多くのリスクを一切なくすことはできませんが、うまく対応していく能力や知識は企業にとって必要不可欠といえるでしょう。

リスクマネジメントの種類

以下では具体的なリスクマネジメントの種類を3つ紹介します。

BCPの策定

BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、日本語では「事業継続計画」と呼ばれる施策のことです。

具体的には地震などの非常事態に備えて、事業を継続させるための手段や方法を、あらかじめ計画しておくことをいいます。

緊急事態に直面した際に、その損害を最小限に食い止めつつ中核となる事業を継続もしくは早期に復旧させるためには、ガイドラインが必要です。

非常時になってからこうした計画を立てることは難しいため、事前にさまざま想定のもと復旧プランを考えておくことが非常に重要となります。

▼BCPについては以下の記事でさらに詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

危険区域の確認(ハザードマップの活用)

ハザードマップとは、災害時に危険度の高くなる場所を記した地図のことで、指定の避難場所などがわかる資料でもあります。

地域のハザードマップは、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」や、各自治体のホームページなどで取得できます。

洪水・津波・土砂災害などの災害が発生した際、会社の所在地がどのような災害想定区域に入っているかを事前に確認しておくことが重要です。

避難場所や避難経路などもあわせてチェックしておき、従業員全員で情報を共有しておきましょう。

安否確認システムの導入

災害時に従業員の安否確認をするために用いられるのが「安否確認システム」です。

BCPに定められている、緊急時の初動対応のひとつにも「従業員の安否確認」が盛り込まれており、優先度の高い事項といえます。

災害発生直後は非常に混乱するため、従業員一人ひとりの居場所を把握するのは難しい作業になります。

安否確認ができる専用のシステムを使うと、一定の災害が発生した際に、自動で従業員全員にメールを送信することが可能です。

災害時でも瞬時に従業員の安否確認を行いたい場合は、こうしたツールの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

リスクマネジメントの重要性

企業におけるリスクマネジメントの重要性は主に以下の3つです。

  • 事業を継続させる
  • 顧客の期待に応える
  • 従業員を守る

適切なリスクマネジメントができなければ、災害やその他リスクによる損害によって、事業が継続できなくなってしまう可能性があります。

会社がつぶれてしまったり、極端に商品やサービスの質が落ちたりすれば、自社サービスを愛用してくれている顧客に迷惑をかけることになります。

また企業として従業員の雇用と身の安全を守ることも使命のひとつです。

リスクマネジメントを行うことで、さまざまな損失を防げるようになるでしょう。

リスクマネジメントの成功事例

リスクマネジメントの成功事例を3つ紹介します。

業種行ったリスクマネジメントの内容
A社自動車系・災害発生時でも稼働を続けられるよう工場の設備を強化した
・作業を単純化させて別の工場でも対応できるようにしている
B社食品系・リスクマネジメントの専門部署を作り、社内全体の意識を高めた
・被災地支援や事業の早期復旧に向けた体制を構築している
C社小売系・コンプライアンスやハラスメントの相談窓口を設けた
・年に2回定例会議を行いリスクマネジメントについての対策を共有している

業種によって重点をおくべきリスクマネジメントが変わるため、自社にあう施策を考える必要があります。

ある程度の規模の企業では、リスクマネジメントの専門部署を設置しているケースも多いでしょう。

リスクマネジメントのプロセス

以下では、リスクマネジメントのプロセスを5つに分けて解説していきます。

  1. リスクの特定
  2. リスクの解析
  3. リスクの対策優先度の決定
  4. リスクへの対処
  5. リスク対処後のデータ蓄積

リスクの特定

リスクマネジメントではじめに行うことは、リスクの特定(洗い出し)です。

どのようなリスクがあるのかを把握しなければ対策できないため、あらゆる可能性をリストアップします。

1人で行うと固定的な視点になってしまう可能性があるので、この作業はできるだけ多くの人数で行うとよいでしょう。

リスクの解析

次に、洗い出したさまざまリスクを解析します。

「このリスクが起きる原因は?」「どのような状態になるとリスク発生の可能性が高まるのか?」などを、細かく解析します。

他社や他国の事例などを参考にして、実際に発生したリスクからヒントを得てみましょう。

リスクの対策優先度の決定

リスクは無数にあり、すべての事柄に対応することは非常に難しいです。

限られた自社のリソースのなかで最大限のリスクマネジメントを行うためには、どのリスクを優先して対策するか決定しなければなりません。

さまざまなリスクのなかで、地震が多い日本において自然災害への対策は重要度が高いといえるでしょう。

どのリスクマネジメントから取り掛かればよいかわからない場合、まずは災害対策から取り組んでみるのもおすすめです。

リスクへの対処

災害対策として有効なのはBCPの策定です。

実際に地震が起きたと想定して、発生する可能性がある損害やトラブル事例を考えておきます。

非常時は電気や通信網が普段どおりに使用できないケースがあるので、こうした事態になった場合の具体的な対策も決めておかなければなりません。

また従業員との連絡手段として安否確認システムを導入しておくことも有効です。

▼BCPの策定については、以下の記事もぜひあわせてご覧ください。

リスク対処後のデータ蓄積

実際になんらかのリスクが発生し、それに対処した場合は「リスク対処」のデータを蓄積しておきましょう。

予想していたリスクとの差異や、実際に対処できたこと・できなかったことなどをまとめておくことで、今後のリスクマネジメントの精度があがります。

国や自治体で公開されている、リスクマネジメントの実例などを参考にするのもよいでしょう。

リスクマネジメントを徹底し損失を軽減させよう

リスクマネジメントは企業にとって欠かせない施策のひとつです。

なかには「いつ起こるかわからない災害に備えるために、コストや時間をかける余裕がない」と思われている担当者もいるかもしれません。

しかし、いざ災害やリスクが発生してからでは対応が後手になってしまうことは容易に予想できます。

リスクマネジメントができていない企業は、顧客や取引先からの信用を失う可能性もあるため、早急な対策が必要でしょう。

まずは適切なBCPの策定を行い、事業をしっかり継続できる体制を整えることが重要です。

リスクマネジメントの方法に迷ったら、アドバイスをしてくれる専門企業に相談してみるのもおすすめです。

トヨクモが運営する「みんなのBCP」は事業継続に関わるあらゆることをメインテーマに、総務部の方に役立つ情報を提供しています。

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