労災隠しの罰則やリスクとは? 発覚した場合の罰則や労災に対して企業が取るべき適切な対応方法を解説

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遠藤 香大(えんどう こうだい)

労災隠しとは自社で発生した労災を報告しなかったり、虚偽の内容を申告したりすることです。企業の中にはあらゆる理由を付けて労災隠しを行うこともあるようですが、法令違反にあたるため絶対にやってはならない行為です。しかし、労災隠しを行うとどのような罰則やリスクを伴うのか理解していない方も多いでしょう。

この記事では、労災隠しによる罰則やリスクを紹介します。労災が起きたときの企業が取るべき対応方法も紹介しているので、あわせて参考にしてください。

労災隠しとは

労災隠しとは自社で起きた労働災害を隠し、必要な手続きを行わない、もしくは虚偽の報告を行うことです。通常、労災が起きた場合は「労働者死傷病報告」を提出し、労災発生の事実を労働基準監督署長に報告しなければいけません。

しかし、企業の中には労災によって法律違反が発覚するの恐れたり、ブランドイメージが下がるのを怖がったりして労災隠しを行う場合があります。

いかなる理由があるにせよ労災隠しは違法であり、決して行ってはいけません。労災隠しは内部通告や医療機関からの通報によって表出しやすく、その際は重い罰則を受けることを肝に銘じておきましょう。

企業が労災隠しを行う理由

労災隠しを行う具体的な理由に、以下のようなものがあります。

  • 労災保険料の負担が増える
  • 手続きが面倒である
  • 企業イメージの低下につながる
  • 労災保険に加入していない

それぞれについて解説します。

労災保険料の負担が増える

労災隠しが行われる理由に、保険料の負担が増えることが考えられます。労災保険はメリット制が導入されており、支給した労災保険給付の額が少ないほど保険料が安くなる仕組みです。そのため、保険料を抑えようと、労災保険を使用しない企業があります。

しかし、労災保険は事業内容や規模によって、労災保険使用後の保険料増額に違いがあります。従業員20名以下の企業では保険料が増えることはありません。

手続きが面倒である

労災発生後の手続きに面倒さを感じ、隠してしまう企業もあります。たとえば、現場作業を主としている企業では、労災のリスクも高いことからマニュアルを作成したり手続き方法を周知させたりしている場合が多いです。

一方、労災の起こりにくい事務職などは労災への知識も少なく、手続きの面倒さから企業と被災従業員の間で完結させてしまうこともあります。しかし、これはれっきとした労災隠しであり、法律違反に該当します。どのような事情があっても、適切な手順に沿って労災を報告しましょう。

企業イメージの低下につながる

労災の発生により企業イメージが低下することを恐れて、労災隠しをしてしまう経営者もいます。とくに大企業の場合は社会的なイメージができあがっており、労災によって築き上げたブランドが毀損する可能性があります。

小さい企業であれば契約を更新できなかったり、特定の取引が停止してしまったりする可能性もあるでしょう。その結果、事業活動に支障が出ることがあります。そのため、企業を守る手段として労災隠しを行う企業が存在しています。

労災保険に加入していない

労災保険に加入をしていない場合、その発覚を恐れて労災隠しをする場合があります。労災保険は従業員を1人以上雇用している場合に加入することが義務付けられており、雇用形態に限りはありません。

つまり、アルバイトやパートであっても従業員を雇用した以上は、労災保険に加入しなければならない決まりです。

労災保険への未加入が発覚すると、罰則や追加徴収される場合があります。悪質な場合は企業名が公表されるほか、ペナルティが課せられる可能性もあります。これらの事態を避けるために、労災隠しをする企業もあるでしょう。

労災隠しへの罰則

労災隠しによる罰則は、主に以下の2つがあります。

  • 労働安全衛生法違反
  • 刑事罰

それぞれについて解説します。

労働安全衛生法違反

企業には労災が起きたとき、遅滞なく労働基準監督署にその旨を報告する義務があり、違反すると労働安全衛生法違反と判断され50万円以下の罰金に処されます。

第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者

(引用:労働安全衛生法 | e-Gov 法令検索

たとえ報告しても、その内容が虚偽のものであれば罰則の対象となります。労災が起きた場合は迅速に正しい内容を報告しましょう。

刑事罰

労災が悪質の場合、刑法に基づいて処罰されることがあります。たとえば、労災によって従業員が死亡した場合、その原因が企業による危険な働かせ方だと判断された場合は、企業や関係者に対して刑事罰が下される可能性があります。

業務上過失致傷罪や業務上過失致死罪などに問われると、重い刑罰が課されるでしょう。不法行為責任や安全配慮義務違反で損害賠償を請求されることもあります。また、労災隠しが組織的に行われていた場合、処罰されることもあります。

労災隠しによるリスク

労災隠しが発覚した場合、企業が負うのは罰則だけではありません。以下の3つのリスクも高めるため、企業へのダメージは大きいものとなるでしょう。

  • 法的リスク
  • 経済的リスク
  • 社会的リスク

それぞれについて解説します。

法的リスク

労災隠しには、法的なリスクがあります。労災隠しをした企業は、被災した従業員やその家族から損害賠償を請求される可能性があるからです。とくに、労災隠しによって従業員が適切な治療を受けらないと、健康被害が拡大して多額の賠償金が発生することもあるでしょう。

また、労災隠しが発覚した場合、企業は労働基準監督署による厳しい監査を受けます。この監査によってさらなる法令違反が発見されると、追加の罰則が科されます。したがって、労災隠しを行った企業は、長期にわたって法的なリスクを負うことになるでしょう。

経済的リスク

労災隠しによる経済的リスクは、罰金や賠償金だけではありません。労災隠しが発覚した場合、企業はその対応に多大な費用と時間を費やすことになるからです。たとえば、労働基準監督署からの是正勧告に従って、社内の安全管理体制を見直す必要がある場合、専門家から指導を受けたり従業員を再教育する必要があったりするでしょう。

さらに、労災隠しが原因で取引先や顧客との関係が悪化した場合、契約の打ち切りや売上の減少といった経済的損失が発生する可能性があります。すると事業にも大きな影響をもたらし、今後の企業存続も危なくなります。

社会的リスク

労災隠しが発覚すると、企業は信頼を大きく失います。とくに、企業の社会的責任が重視される現代において、労災隠しは重大な信用失墜を引き起こすでしょう。顧客や投資家からの信頼を失うと企業のブランド価値が下がり、将来的な事業活動にも影響を与えます。

また、労災隠しによって従業員からの信頼も失くします。従業員が安心して働ける環境が整っていないと判断されると、優秀な人材の確保や維持が困難になり、企業の成長にも大きな影響をもたらすでしょう。

労災が起きた場合の企業が取るべき対応方法

労災が起きたときに企業が取るべき対応方法は、以下のとおりです。

  • 迅速に必要な手続きを行う
  • 労災保険を利用する
  • 安全衛生管理体制を強化する
  • 従業員とのコミュニケーションを強化する

それぞれについて解説します。

迅速に必要な手続きを行う

労災が起きたら、迅速に労働基準監督署へ書類を提出しましょう。労災が起きた場合、労働災害報告書や労働者死傷病報告の提出が義務付けられており、迅速な手続きが必須です。各書類の明確な提出期限は定められていないものの、遅滞なく提出することが求められています。

なお、労働基準監督署へ報告を忘れないようにするためには、責任者を任命するのも一つです。労災が発生したときの社内報告や連絡体制を明確にしておき、責任者が手続きしやすい流れを決めておくといいでしょう。

(参考:労働者死傷病報告の提出の仕方を教えて下さい。|厚生労働省

なお、労災が起きたときの対応方法は以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

労災保険を利用する

労災が起きたら健康保険が使用できないため、軽微な怪我であっても上司に報告して労災保険を利用しましょう。労災保険は、従業員が業務中に負った怪我や病気に対して、医療費や休業補償を提供する制度です。企業は労災保険の利用手続きを迅速に行い、適切な補償を受けられるように準備する義務があります。

なお、労災保険の利用については担当者だけではなく、全従業員に周知させておくべきです。従業員1人ひとりが労災保険のことを理解していれば、迅速に手続きを進められるほか、労災隠しが起こりにくい仕組みを構築できます。

労災保険については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。

安全衛生管理体制を強化する

労災が起きたら、企業の安全衛生管理体制を見直すことも重要です。具体的には、労働安全衛生法に基づいた安全管理規則の整備や、安全衛生教育の実施などがあります。安全衛生管理体制を強化できると企業全体が危機管理意識を高められ、労災の発生リスクを低減できます。

また、定期的な安全点検やリスクアセスメントを実施し、労災が起こり得る場所を見つけることも重要です。従業員の作業環境を定期的に見直し、改善が必要な箇所については速やかに対策を講じましょう。

従業員とのコミュニケーションを強化する

労災を二度と起こさないようにするためには、従業員とのコミュニケーションが欠かせません。従業員が危険を感じた際に、上司や管理者に報告できる関係性を築いていないと、労災を未然に防げないからです。

また、従業員に対して定期的に安全教育や訓練を実施して、労災への理解を深めることも大切です。従業員の理解がなければ、気付かないうちに労災隠しが行われる可能性もあるでしょう。全ての従業員が自主的に安全対策を講じられると、労災のリスクを大幅に減少できます。

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労災隠しはせずに企業としての責任を果たそう

労災隠しは法律違反であり、いかなる理由があってもやってはいけません。労災隠しがバレると罰則やリスクを負うことになり、企業の存続にも大きな影響を与えるでしょう。従業員が安心して働ける職場を作るためにも、労災が起きたら必要な手続きを行ってください。

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