【業種別】労働災害(労災)の事例13|発生状況や対策をあわせて紹介
遠藤 香大(えんどう こうだい)
労働災害は、被災した労働者に大きな苦痛をもたらすだけでなく、企業にとっても生産性の低下や社会的信用の失墜につながる重大な問題です。労働災害を未然に防ぐためには、適切な安全対策を講じることが不可欠と言えます。
この記事では、厚生労働省の統計データや災害事例を基に、労働災害の発生状況と防止対策について解説します。業種別に事例を紹介するため、労働災害対策の見直しを検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
労働災害の発生状況
自社でどのような労働災害が起こりうるのか、事前に把握して対策を講じておかなければ、最悪の場合、死亡労働災害の発生する可能性があります。そのような事態を防ぐためにも、まずは業種ごとの労働災害発生状況をしっかりと確認し、理解しておくことが大切です。
ここでは、労働災害の多い業種と、発生の多い労働災害の型について紹介していきます。
労働災害の多い業種
2024年1月1日から6月30日までに発生した死亡労働災害について、2024年7月9日までに報告があったものは、以下のとおりです。
【死亡労働災害】
業種 | 発生状況 | 割合 |
---|---|---|
建設業 | 101件 | 33.8% |
第三次産業 | 68件 | 22.7% |
製造業 | 56件 | 18.7% |
陸上貨物運送事業 | 42件 | 14.0% |
林業 | 15件 | 5.0% |
その他 | 17件 | 5.7% |
合計 | 299件 | – |
(参考:厚生労働省|令和6年労働災害発生状況(令和6年7月速報値))
このデータからわかるように、製造業、建設業、陸上貨物運送事業では、とくに労働災害による死亡者数が多いことがわかります。
また、2024年1月1日から6月30日までに発生し、4日以上の休業を要した死傷働災害のうち、2024年7月9日までに報告があったものは、以下のとおりです。
【4日以上の休業が発生した死傷労働災害】
業種 | 発生状況 | 割合 |
---|---|---|
製造業 | 11,045件 | 20.4% |
陸上貨物運送事業 | 6,858件 | 12.7% |
小売業 | 6,474件 | 12.0% |
建設業 | 5,598件 | 10.3% |
社会福祉施設 | 5,020件 | 9.3% |
清掃・と畜 | 2,972件 | 5.5% |
飲食店 | 2,295件 | 4.2% |
その他の第三次産業 | 10,591件 | 19.6% |
その他(林業等) | 3,281件 | 6.1% |
合計 | 54,134件 | – |
(参考:厚生労働省|令和6年労働災害発生状況(令和6年7月速報値))
製造業、陸上貨物運送事業、小売業にて、労働災害の発生がとくに多いことがわかります。
発生の多い労働災害の型
一口に労働災害と言っても、事故の型はさまざまです。2024年1月1日から6月30日までに発生した死亡労働災害について、2024年7月9日までに報告があったものの型の割合は、以下のとおりです。
【死亡労働災害】
災害 | 発生状況 | 割合 |
---|---|---|
墜落・転落 | 91件 | 30.4% |
はさまれ・巻き込まれ | 52件 | 17.4% |
交通事故(道路) | 47件 | 15.7% |
衝突され | 23件 | 7.7% |
飛来・落下 | 20件 | 6.7% |
崩壊・倒壊 | 19件 | 6.4% |
その他 | 47件 | 15.7% |
合計 | 299人 | – |
(参考:厚生労働省|令和6年労働災害発生状況(令和6年7月速報値))
企業で発生する労働災害のうち、墜落・転落、交通事故、はさまれ・巻き込まれによるものは、死亡者の割合が高いことがわかります。
また、2024年1月1日から6月30日までに発生し、4日以上の休業を要した死傷働災害のうち、2024年7月9日までに報告があったものの型の割合は、以下のとおりです。
【4日以上の休業が発生した死傷労働災害】
災害 | 発生状況 | 割合 |
---|---|---|
転倒 | 15,179件 | 28.0% |
墜落・転落 | 8,475件 | 15.7% |
動作の反動・無理な動作 | 8,155件 | 15.1% |
はさまれ・巻き込まれ | 5,814件 | 10.7% |
切れ・こすれ | 2,941件 | 5.4% |
衝突 | 2,712件 | 5.0% |
その他 | 10,858件 | 20.1% |
合計 | 10,858件 | – |
(参考:厚生労働省|令和6年労働災害発生状況(令和6年7月速報値))
企業で発生する労働災害のうち、転倒、動作の反動・無理な動作、墜落・転落によるものは、4日以上の休業が発生した割合が高いことがわかります。
死亡労働災害の事例
先述したとおり製造業や、建設業、陸上貨物運送事業では、労働災害による死亡者数が多いです。ここでは、厚生労働省の運営する「職場の安全サイト」から各業種別に死亡労働災害の事例を紹介していきます。
製造業
製造業における、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれの死亡労働災害の事例を紹介します。
墜落・転落
金属精錬業の企業で、ベルトコンベアの修理中に1名の労働者が墜落・転落により死亡する労働災害が発生しました。
被災者は、高さ約8mの位置にあるベルトコンベアに乗り、修理を行っていたところ、バランスを崩して墜落しました。夜間で足元が暗かったこと、足場を設けるなどの墜落防止措置がなされていなかったこと、原則として外部に発注すべき修理作業を自身で行ったこと、作業手順や方法が十分に検討されていなかったことが原因として考えられます。
同種災害を防止するためには、以下の対策が必要です。
- 墜落の恐れのある場所での作業では、作業床の設置や安全帯の使用などの墜落防止措置を実施する
- 労働者が実施できる作業の範囲とその作業基準を周知し、禁止されている作業を行わないように徹底する
- 作業方法などを定め、それに基づく作業を徹底する
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
はさまれ・巻き込まれ
金属製品製造業の企業で、フォークリフトを使用中に1名の労働者が死亡する災害が発生しました。
被災者は、フォークリフトのフォークに約270kgの金型を載せ、床面より高い位置でプレス機械に向けて停車させた状態で、運転席から降りてプレス機械とフォークリフトの間に立ち入りました。その際、フォークリフトがプレス機械の方へ動き出し、金型とプレス機械の間に腹部を挟まれて死亡しました。
原因として、フォークリフトの運転者が運転位置を離れる際にエンジンを停止しなかったこと、フォークを最低降下位置に置いていなかったこと、金型底面の清掃をフォークを上げたままの状態で行っていたこと、月次自主検査でクラッチの異常を確認できていなかったことが挙げられます。
このような事故を防ぐために、以下の対策を講じることが必要です。
- 運転位置を離れる際は、フォークリフトのエンジンを停止する
- 運転位置を離れる際は、フォークを最低降下位置に置く
- フォークを上げたままでの金型底面の清掃をやめ、作業手順を見直す
- 月次自主検査の項目にクラッチの異常確認を加え、適切な検査手法を導入する
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
建設業
建設業における、墜落・転落、交通事故、はさまれ・巻き込まれの死亡労働災害の事例を紹介します。
墜落・転落
建設業の企業で、ダム建設工事現場の排水管工事中に1名の労働者が墜落により死亡する災害が発生しました。
被災者は擁壁上の手すりを撤去する作業を行っていた際、墜落制止用器具を掛けていた手すりが倒壊し、約10m下の水路に手すりと共に墜落しました。被災者は病院に搬送されましたが、その後死亡が確認されました。
原因として、手すりの解体作業中に労働者の墜落防止措置が講じられていなかったこと、手すりの単管同士の固定に直交クランプではなく自在クランプが使用されていたこと、その事実を関係者が把握していなかったことが挙げられます。
このような事故を防ぐためには、手すりの設置が困難な場合、墜落制止用器具を使用するための取り付け設備を設ける必要があります。解体作業の開始から終了まで使用させるなどの墜落防止措置を講じましょう。
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
交通事故
道路建設工事業企業で、道路の中央線塗替え作業中に8トントラックが作業区間に進入し、作業者3名が激突される事故が発生しました。1名が死亡、2名が被災しました。
事故当日、元請け現場代理人1名と下請け作業者5名で作業を行っていました。溶融ペイントハンドマーカーによる塗替え作業の途中で、塗料が少なくなったため、塗料補充のために一旦作業を中断。作業再開後、車両誘導担当者が適切な位置につく前にトラックが進入してきたため通過させました。その結果、そのトラックが突然センターラインを越えて、作業者に激突しました。
事故の原因は、道路使用許可条件である「片側交互通行」「防護車の配置」を遵守せずに作業を行ったこと、元請け現場代理人が下請け作業者に安全な作業のための具体的指示を行っていなかったこと、作業手順が定められておらず安全教育も実施していなかったことが挙げられます。
このような労働災害を防止するためには、以下の対策が必要です。
- 道路使用許可条件を遵守し、防護車の配置、交通整理員による片側交互通行、作業予告案内板の設置などの措置を講じる
- 元請け現場代理人は全関係者に作業前打合せを行い、安全な施工方法などを具体的に指示し、周知を徹底する
- 工事開始前に安全な作業手順を定め、作業者に安全衛生教育を実施し、周知を徹底する
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
はさまれ・巻き込まれ
建築業の企業において、一般家屋の解体作業中に1名の労働者がドラグ・ショベルの履帯に両足を挟まれ、被災2日後に死亡する災害が発生しました。
被災者は、ドラグ・ショベルで支えられた立木にチェーンソーで切り込みを入れる役割でした。ドラグ・ショベルの運転者が切り込みを入れた立木をバケットで倒すために後退した際、後方にいた被災者に気づかず、被災者は履帯に両足を挟まれました。ドラグ・ショベルの運転者は運転資格を持っていませんでした。
この事故が起こった原因として、無資格者にドラグ・ショベルを運転させていたこと、誘導員の配置や立入禁止柵の設置などの接触防止策を講じていなかったこと、作業計画が具体的でなかったことが挙げられます。
このような事故を起こさないために、以下の対策を講じることが必要です。
- 無資格者にドラグ・ショベルを運転させない
- 誘導員の配置、立入禁止柵の設置、作業半径内感知システムやバックカメラなどの装置設置により接触防止策を講じる
- ドラグ・ショベル運転に関する作業計画を書面化し、作業員に周知する
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
陸上貨物運送事業
陸上貨物運送事業における、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ、衝突されの死亡労働災害の事例を紹介します。
墜落・転落
貨物取扱業の企業で、養鶏用飼料の運送中に1名の労働者がトラックの荷台から転落し、死亡する災害が発生しました。
被災者が飼料運送のために出荷口へ向かったあと、しばらくして他の作業員が当該出荷口で積み込み作業が行われていないことを不審に思い、現場に向かったところ、トラックの横で被災者が倒れているのを発見しました。被災者は飼料の積み込み作業中に誤ってトラックの荷台から転落したと推測されますが、目撃者がいないため正確な状況は不明です。
この事故の原因として、高さ約3mの墜落の危険がある荷台上で安全帯を使用していなかったこと、最大積載重量13トンのトラックの荷台上で保護帽を着用していなかったこと、作業者に対し保護帽及び安全帯の使用を確認・管理していなかったことが挙げられます。
同種災害を防止するためには、以下の対策が必要です。
- トラックの荷台上の作業では、必ず安全帯を使用する
- トラックの荷台上の作業では、必ず保護帽を着用する
- 作業者に対し、保護帽および安全帯の使用を徹底する
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
はさまれ・巻き込まれ
貨物取扱業の企業で、ウイングルーフトラックの運転中に1名の労働者がウイングに首を挟まれ、死亡する災害が発生しました。
被災者は、ウイングルーフトラックを運転して事業場を出発しましたが、配送予定先に到着せず、連絡も取れなくなったため、捜索が行われました。そのあと、高速道路のサービスエリアで、被災者がトラックの右側ウイングに首を挟まれた状態で発見されました。
サービスエリアで積荷の状況を確認するためにウイングを開き、タイヤ後方の架台に足を掛けて荷台の中を覗き込んだ際に、架台の奥にあるウイングの閉スイッチに足が触れたため、ウイングが作動して挟まれたと考えられます。
具体的な対策は、以下のとおりです。
- ウイングの開閉スイッチの押しボタンの設置位置を変更する、ガードを設置するなど、不意の起動を防ぐための適切なリスク低減措置を講じる
- ウイングを閉じる方法をより安全な方式へ改善する
- 積荷の確認作業のための適切な作業手順を定める
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
衝突され
貨物取扱業の企業において、台風の接近に伴った強風により、キャスター付き通函が逸走しました。その通函の回収作業中に作業者が逸走した通函に激突され、コンクリート壁と通函との間に挟まれて死亡する労働災害が発生しました。
この災害は、強風下で逸走しやすいキャスター付き通函の荷置場で作業が行われていたこと、通函のキャスターに歯止め機構が備えられていなかったこと、逸走防止のために使用した木片による歯止めが十分でなかったことなどが原因と考えられます。
同種災害を防止するためには、以下の対策が必要です。
- 通函に、歯止め機構を備えたキャスターを取り付ける
- 強風時の通函の集積は、歯止めを確実に行い、シートで覆うなど確実に逸走防止する措置を講ずる
- 強風時の作業は、作業指揮者の指名、作業方法、集積方法、監視人の配置、急迫する危険の対処方法などを定めた作業手順を作成する
- 作業指揮者は、作業手順に沿った作業方法、監視人の配置などについて、作業開始前に作業員に対して作業の安全を確保するための具体的な指示を行う
- 安全衛生推進者を選任し、その者に日常の安全衛生管理業務として、作業手順の作成状況およびその履行状況の確認など作業の危険または健康障害を防止するための措置に関することを行わせる
- 作業者に対して、定期的に安全教育を実施する
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
休業者を出した労働災害の事例
製造業、陸上貨物運送事業、小売業では、4日以上の休業を要する労働災害の発生が多くなっています。ここでは、厚生労働省の運営する「職場の安全サイト」から各業種別に休業者を出した労働災害の事例を紹介していきます。
製造業
製造業における、転倒、動作の反動・無理な動作、墜落・転落の労働災害の事例を紹介します。
転倒
金属製品の加工場において1名の労働者が鉄筋を運搬中に転倒し、休業災害を負う事故が発生しました。被災者は、鉄筋を担いで移動中に集積されていた鉄筋に足を乗せたところ、足元の鉄筋が回転し、バランスを崩して鉄筋加工台に背中を強打しました。集積されていた鉄筋は束ねられていない状態でした。
労働災害の発生した原因として、被災者が大丈夫だと思い込んで集積された鉄筋に足を乗せたこと、鉄筋が束ねられずに作業動線上に放置されていたことが考えられます。
この労働災害を防止するために、次のような対策を講じることが重要です。
- 鉄筋の運搬経路を定めて、集積箇所では鉄筋を放置せずにしっかりと結束させる
- 作業方法や搬入・運搬についての作業実施計画書や手順書を作成し、事業場内で周知徹底する
- 結束されていない鉄筋が作業動線上に放置されている場合、鉄筋の上を歩行しない
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
動作の反動・無理な動作
製造業の企業では、1名の労働者がパワーコンディショナーを移動させる作業中に腰を痛め、休業災害となる事故が発生しました。
被災者は、組立現場において、もう一人の作業者とパワーコンディショナーを設置場所へ移動させていた際、腰を痛めた。病院を受診したところ、腰椎捻挫と診断されました。重量物を持ち上げる際に前屈やひねりなどの不自然な姿勢をとり、腰部に負担がかかったことが原因と考えられます。
この労働災害を防止するために、次のような対策を講じることが重要です。
- リフターなどの昇降装置やローラーコンベヤー、台車などの補助機器を使用する
- 人力による重量物取り扱い作業では、作業速度や取扱物の重量などを調整し、腰部に負担がかからないようにする
- 満18歳以上の男子労働者が人力のみで取り扱う物の重量は、体重の概ね40%以下とし、女子労働者ではさらに男子の60%程度までとする
- 重量物を2名以上で取り扱う場合、適切な姿勢で各々の労働者に重量が均一にかかるようにする
- 荷物は適切な材料で包装し、取り扱いを容易にする
- 立ち作業では、約1時間ごとに1、2回程度の小休止、休息をとらせ、下肢の屈伸運動やマッサージなどを行わせる
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
墜落・転落
肉製品・乳製品製造業の企業で、簡易リフトを使用中に1名の労働者が墜落し、上腕部を切断する休業災害が発生しました。
被災者は、客先から回収した空の段ボール箱とプラスチック製コンテナを簡易リフトで2階に運ぶため、自ら搬器に乗り込みました。2階で荷物を下ろした際、搬器を吊っていたワイヤロープが切れ、被災者は搬器とともに1階に墜落。落下時に搬器から外に出した腕が昇降路の壁面に挟まり、上腕部を負傷しました。
ワイヤロープが素線切れなどで強度低下を起こしていたこと、労働者を乗せて作業させたこと、構造規格に適合しない簡易リフトを設置していたことなどが原因と考えられています。
この労働災害を防止するために、次のような対策を講じることが重要です。
- 構造規格に適合した簡易リフトを設置する
- 積載荷重を超える荷重をかけて使用しない
- 簡易リフトに労働者を搭乗させるなど、用途外に使用しない
- 作業開始前点検と定期自主検査を確実に実施する
- 労働者に対して、安全な操作方法や注意事項を周知・徹底する
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
陸上貨物運送事業
陸上貨物運送事業における、動作の反動・無理な動作による労働災害の事例を紹介します。
動作の反動・無理な動作
貨物取扱業企業で、納品先においてかご台車を使用している際、1名の労働者が肩と腰を痛め、休業災害となる事故が発生しました。
被災者は、通常2名で行う納品作業を1人で行っていたため、かご台車を押した際に肩と腰を痛めました。かご台車を押した際に前屈やひねりなどの不自然な姿勢をとってしまったこと、通常2名で行う作業を1人で行ったため腰部に負荷がかかり、十分な小休止・休息をとれなかったことが原因として考えられます。
この労働災害への具体的な対策は、以下のとおりです。
- 重量物を積載したかご台車などを使用する際は、不自然な姿勢を避け、腰部に負担をかけない姿勢をとる
- 作業による負荷に応じて小休止・休息をとり、連続した重量物取り扱い時間を軽減する
- かご台車に積載する重量物の重量や重心の偏りを明示する
- 重量物取り扱い作業の際は、作業前、中、後に腰痛予防体操を実施する
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
小売業
小売業における、転倒、動作の反動・無理な動作、墜落・転落の労働災害の事例を紹介します。
転倒
小売業の企業において、スーパーの惣菜売り場で1名の労働者が転倒し、休業災害となる事故が発生しました。
被災者は、作業場からスイングドアを通って売り場に出ようとした際、水で濡れた床で足を滑らせて転倒しました。売り場の床が水で濡れていたにも関わらず拭き取られていなかったこと、作業場から売り場に出るところに、靴の水滴を拭き取るマットなどが設置されていなかったことが原因に考えられます。
このような労働災害を防止するために、次のような対策を講じることが重要です。
- 床の水濡れに気づいたら、直ちに水切りやモップなどで拭き取る
- 定期的な職場巡視によって水濡れの危険箇所を特定して、マットの設置や頻繁な清掃・水切りなどを行うとともに、水濡れの原因を究明して解決する
- 事業場内で安全衛生活動を行う者を選任し、労働者に対して転倒災害防止のための安全衛生教育や研修を実施する
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
墜落・転落
小売業の企業、トラッククレーンの点検作業中に1名の労働者が墜落し、休業災害となる事故が発生しました。
A社の労働者YとA社の下請業者B社の労働者Zの2名で点検作業を行っていた際、Zがトラッククレーンを運転し、Yが運転席の横に立って点検を行っていました。ジブを後方に向けて傾斜角を50度にし、左旋回を始めたところ、トラッククレーンが横転し、Yが地面に転落しました。
原因は、アウトリガーを完全に張り出していなかったこと、過負荷防止装置を作動させずに運転操作を行ったこと、点検作業の手順が定められていなかったことなどが考えられます。
このような事故を防ぐために、以下の対策を講じることが必要です。
- ジブの長さや傾斜角に応じた安定度を考慮し、アウトリガーを完全に張り出した状態で点検作業を行う
- トラッククレーンの運転は、必ず過負荷防止装置を作動させた状態で行う
- 作業の安全を確保するための作業標準を作成し、関係者に周知する
- 作業開始前に作業標準に沿って作業方法を決定し、安全を確認する
- 積雪などによる環境変化を確認し、必要に応じて作業場所の整備を行う
- 作業の安全を確保するための安全教育を実施する
(参考:厚生労働省|労働災害事例)
従業員を守るには安否確認システムの導入がおすすめ
本記事で紹介したように、企業経営のなかには、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ、転倒、動作の反動・無理な動作などによる労働災害が発生するリスクがあります。最悪の場合、従業員が命を落とすこともありうるため、自社にどのような労働災害のリスクがあるのかを把握し、事前に十分な対策を講じておくことが極めて重要です。
なお、労働災害に限らず、自然災害が発生した際にも従業員を守る義務が企業にはあります。自然災害が発生した際にも従業員の安否を迅速に確認し、次のアクションに移れるように、安否確認システムを導入しておくことがおすすめです。安否確認システムは、災害発生時などの緊急時に自動で従業員に安否確認メッセージを送るシステムであり、手動で一人ひとりに連絡を取る手間を省けます。
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