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危機管理広報とは?重要性や役割、注意点を徹底解説

企業活動において、どうしてもトラブルに巻き込まれることがあります。そうした時に必要なのが、危機管理広報です。今回は、危機管理広報の重要性や役割、注意点について解説します。

危機管理広報とは

危機管理広報とは企業がトラブルや災害などの問題に巻き込まれた時に、その被害や影響をできる限り抑えるための広報活動です。最近では、ネット上でのブランドイメージの侵害への対応やユーザーからの問い合わせの増加への対応も必要ですので、危機管理広報の仕事は増え続けています。

危機管理広報の役割

トラブルが発生した際の危機管理広報の役割は、大きく分けて以下の3つです。

  • 想定されるトラブルに対する事前準備
  • トラブル発生時の情報開示
  • 風評被害の防止

「想定されるトラブルに対する事前準備」では、災害や事故など大きな問題が発生した際に素早く対応できるように、社員に対応方針や自分たちの役割を事前に把握させておきます。平時からシミュレーションによる訓練などを行い、備えることも大切です。

次に「トラブル発生時の情報開示」は、トラブル発生時に素早く情報をまとめて周囲に公表することです。この部分が遅れると組織やブランドのイメージ悪化につながり、さらに追及を受けます。できるだけ迅速に情報を開示して、被害や影響の拡大を抑えなければいけません。

最後に「風評被害の防止」です。自分たちが発信した情報が正確に伝わっているか、世間に間違った情報が広まっていないかを確認する作業で、この部分も非常に大切です。ここをおろそかにすると意図せぬイメージダウンのような風評被害が発生するため、しっかり確認する必要があります。

危機管理広報の重要性

社会で活動する際に、トラブルは避けられません。トラブルが発生した場合は、迅速かつ適切な対応を行わなければなりません。こうした場面で誤った判断をするとトラブルの解決が遅れるだけでなく、大きな2次被害にもつながりかねないため正しい対応が求められます。

危機管理広報とリスクマネジメントの違い

危機管理広報は起きてしまったトラブルによる被害を抑え、2次被害の発生を防ぎます。ここでのトラブルは、災害や事件、不祥事など多岐にわたります。

一方で、リスクマネジメントは、さまざまなトラブルによるリスクをあらかじめ把握して未然に防いだり、リスクが顕在化したときにはその被害や影響を最小限にとどめるたりするための活動です。

2つの大きな違いは、リスクマネジメントはリスクを事前および事後の双方において対応する概念なのに対して、危機管理広報は主に事後の発生したトラブルへの対応に特化したものということです。

ただしこのあたりの用語の定義はあいまいなところもあるため、それほど気にしなくてもよいでしょう。

リスクマネジメントとBCPの違い

リスクマネジメントは、事前のリスクの抑止・回避と、顕在化したリスクへの対応の両方に焦点をあてた概念です。

一方、BCPは事業継続計画と呼ばれ、リスクが顕在化した後に焦点がおかれ、被害を抑止し、迅速な復旧のもとに事業を継続しようとする計画です。

危機管理広報の業務内容

ここからは前述した危機管理広報の役割を踏まえて、危機管理広報の具体的な業務内容について解説します。

トラブル発生前の準備

まず起こりうるトラブルを想定し、どの程度の発生可能性があるのか、また起きた場合にはどの程度の被害や影響があるのかを細かく洗い出します。なかでも危険性の高いものについては、しっかり会社全体で共有することも大切でしょう。

次に、対応についてまとめたマニュアルを作成します。マニュアルは、トラブル発生時の各自の役割や連絡の手順、情報収集や発信の方法などさまざまな部分を明確にしたものです。

また、広報なので緊急時は記者会見や取材があるケースもあります。そうした場面に備えた、メディアトレーニングも大切です。会見時の発言は多くの人が注目するため、不適切な発言や対応がないように、事前訓練で適切な振る舞いを身に着けます。

トラブル発生後の対応

トラブル発生時、真っ先に行うことは、情報収集です。不確定な情報の開示はかえって混乱を招くため、いま起きていることに関する正確な情報を関係者から集めます。

集めた情報をもとに、資料作成と情報開示の準備をはじめます。

この時に、想定問答集として、会見で聞かれそうな質問には答えをあらかじめ準備しておくことも重要です。

また、情報開示をきっちり行っても報道によっては事実誤認されるおそれがあります。報道を継続的に確認し、事実誤認があれば訂正をお願いして、正しい情報を伝えましょう。

危機管理広報がすべき事前準備

ここまで、危機管理広報の業務について説明しました。これらの業務は、いきなり行えるわけではありません。

ここからは、危機管理広報担当者が業務にあたるための準備について解説します。

①リスクを把握する

リスクを把握するためには、リスクの洗い出しから始めなければいけません。洗い出すべきリスクには組織外の「社会リスク」と組織内の「経営リスク」があり、これらのリスクが発生する危険性を分析・予想します。

「社会リスク」には、メディア報道、SNSでの自社関連情報の収集などが主に該当します。一方で「経営リスク」には、クレーム対応やインターネットでの書き込みなどが挙げられるでしょう。近年では1人の書き込みがSNSで拡散されて、非常に大きな問題として炎上することがあるため、これらのリスクの把握がとくに重要です。

②危機管理マニュアルを作成する

先ほど把握したリスクをもとに、危機管理マニュアルを作成します。作成するマニュアルには、平時に使うマニュアルと緊急時に使うマニュアルがあります。

平時のマニュアルにはトラブルが起きないように事前に対策したり、緊急時にすぐ動けるような体制の構築に関する内容を記載します。

平時のマニュアルは世間の状況に応じて変化させる必要もあり、定期的に社内で情報交換を行い、更新して対応できるようにしましょう。

緊急時のマニュアルは具体的な行動や連絡網を明確にして、トラブルが発生した際、迅速に対応できるような手順を定めておきます。

③マニュアルの検証や訓練を繰り返す

マニュアルを作成したら、マニュアルに基づく研修/訓練や見直しが必要です。緊急時にそのマニュアルに沿って動けるか、そのマニュアルが組織改編や社会情勢の変化で古くなり、不適切なものになっていないかなどを確認しましょう。定期的な確認をしなかったために不適切な対応になってしまい、被害が拡大した例はよく見られます。

研修や訓練をしてマニュアルに間違いがある場合は、迅速な対応ができるようにマニュアルの更新をしましょう。こうした定期的な確認を行い、緊急事態時に活用できるマニュアルを目指します。

トラブル発生時の危機管理広報の流れ

前述のように、危機管理広報はトラブルに備えて準備を行ったうえで業務に取り組みます。ここからは、実際にトラブルが起きた際の危機管理広報の流れについて詳しく説明します。

事実関係を確認してまとめる

トラブル発生の初期段階では、事実関係の確認が最も大切です。危機管理広報担当が、どのような問題が起きているのか、自社との関係性や問題点を把握します。

確認した事実関係を書類にまとめて、今後の方針を決定します。この書類をポジションペーパーと呼び、ここには事実関係に加えて今後の対応も記載することが重要です。

トラブル発生後に素早く対応策をたてられるか、この部分のスピードがその後の世間からの評価を大きく分けるため初動が大切です。

窓口を一本化する

緊急時の対応窓口は、一本化しなければいけません。窓口が複数あると窓口ごとに回答が異なる可能性があり、メディアや一般の人たちからの問い合わせに適切に回答できないためです。

また、社内でも混乱が起きるおそれもあるため、窓口の一本化をして問い合わせにしっかりと対応できるようにします。

窓口の一本化によって、情報を集約して混乱や把握漏れを防ぎます。

プレスリリースで公式見解を発信する

トラブルの時の企業対応は、プレスリリースの発表が基本です。

プレスリリースの発表は最初に作成したポジションペーパーをもとに内容を作成し、トラブルの原因や今後の対応を公表します。

誤解を招かないように、誤字脱字やあいまいな表現などがないよう、正確で丁寧な文章で発信しましょう。

また謝罪が必要なケースではしっかり謝罪の意思を記載して、なるべく早い段階で、起きたトラブルや世間を騒がせたことへの反省などを示すことも大切です。

誤った情報が拡散されないように各方面に説明をする

こうしたトラブル発生時は、時として誤った情報や誤解が広まります。誤情報の拡散を防ぐために、ステークホルダーや報道関係者への重ねての丁寧な説明が求められます。

一方ですべての文書作成や、説明・対応を広報が行うことはできないため、各部署との連携をとりながら、書類の作成や説明・対応を行いましょう。この際に部署ごとに、あるいは聞くたびに情報が変わってしまうこともあります。危機管理広報担当者側で、整合性や統一感を確認し続けましょう。

危機管理広報の注意点

トラブル時には混乱して、慌ててミスが起こることもあるでしょう。そうしたミスや注意点について最後に解説します。

誠実に対応する

トラブルが起きた時に最も重要なことは、誠実な対応です。

特に自社が起こしたトラブルで迷惑をかけてしまった場合は、謝罪を最優先に行い、今後の対応や補償が必要なら補償についての説明を行います。

事態を軽く見た対応やあと回しにするような発言は、世間の印象を悪くして誹謗中傷や二次被害を生み出しかねません。

情報開示は可能な限り早く行う

情報開示は迅速に行いましょう。

もし情報開示が遅くなると、意図的であるにせよないにせよ憶測によるデマが流れて世間に誤った情報が広がってしまい、大きな問題になる場合があります。

また、デマに関する問い合わせが増えてしまい、さらに作業も増えるのでより情報開示が遅れるおそれもあります。

対応の遅れは世間の印象を悪くするため、情報開示は素早く行って世間に正しい情報を伝達する姿勢が大切です。

専門家に相談する

トラブル発生時、広報だけでは難しい場合、法律の専門家への相談も大切です。

また、RP(パブリック・リレーションズ)の専門家やリスクマネジメントの専門家などへの助言も必要な場合もあるでしょう。

とくに、記者会見は通常であればめったに行わないため、社内の人だけで対応できないこともあるでしょう。そうした場合に専門家と連携をとると、誤った対応をとる危険性も下げられます。

企業の危機管理広報を設置し、万が一のトラブルもスムーズに対応しよう!

この記事では危機管理広報の流れや対応、注意点について解説しました。

現代ではインターネットの発達もあり、これまでなかったさまざまなトラブルやリスクが発生するようになりました。これらの危険に備えるためにも、普段からマニュアルの作成や研修/訓練、社内での情報共有を欠かさないようにしましょう。

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