【対談記事】BCMとは?取り組むメリットや各プロセスを解説|福岡氏と防災士・坂田との対談から学ぶ

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福岡 幸二(ふくおか こうじ)

近年、大規模災害やロシアのウクライナ侵攻による物価の高騰、サイバーテロ攻撃、情報漏洩など、ビジネスに悪影響をもたらす事案が世界各地で多発しています。そのため、企業におけるBCMへの理解は必須であり、必要な取り組みを行うべきです。

そこで今回、2024年10月9日(水)~11日(金)に東京ビッグサイトで開催された危機管理産業展で、BCP&BCMコンサルティング代表の福岡幸二氏と、みんなのBCP編集部の坂田健太が対談を行いました。

この記事では、その対談内容を交えながらBCMの概要を紹介します。取り組みメリットや各プロセスなども紹介しているので、BCMへの理解を深めてください。

BCMとは

BCMとは、事業継続マネジメントのことです。大規模災害や未曾有の感染症、テロといった緊急事態が発生したときに、企業の損害を最小限に抑えるためのマネジメント活動です。つまり、緊急時に事業を停止させないための取り組みとも言えるでしょう。

BCPとの違い

BCMと似た言葉にBCPがあります。BCPとは事業継続計画のことで、事業資産の損害を最小限に抑えながら事業の早期復旧を可能にする計画です。緊急事態が発生した際に、限られた資源の中で業務を遂行できるように、事前準備を行います。緊急時は何が起こるか想定できないため、あらゆる事態を予想して事前にできうる限りの備えをしておきます。

つまり、BCPは緊急時に行う「計画」そのものを指し、BCMはBCPで定めた計画を実行できるように運用するのが役割です。BCMは事業継続のための計画や改善、見直し、教育などのマネジメント活動だけではなく、実行するための予算やリソースの確保なども活動の一環です。したがって、BCPを実行するための諸活動を継続的に行うのがBCMと言えます。

BCMとは経営戦略の1つであると捉えるべき(福岡教授)

坂田
坂田

BCMは経営戦略であると捉えるべきであると、福岡教授はおっしゃっています。まず、事業継続管理の中で行う、リスクマネジメントとクライシスマネジメントの違いについて教えてください。

福岡
福岡

リスクマネジメントは、リスクが発生する前に回避する手法で、地震・津波、パンデミック、サイバー攻撃など危機の規模によってリスク自体を分類していきます。

一方のクライシスマネジメントは、会社の存続に関わる重大局面に達したあとに行う手法です。事業継続管理においては特にクライシスマネジメントを重要視してBCMを立案すべきです。

福岡
福岡

先にご紹介した図に、企業がすべき活動を書き加えたものが上の図です。計画と準備、リスク分析の段階では、いざという局面に備えて計画と準備を進めていきます。

計画と準備の段階では、経営トップの組織横断的な活動に始まり、サプライチェーンとの調整、事業拠点の分散、地域や協力会社との協定締結などを行います。そして、災害発生後のBCPの実行は、操業と雇用の維持、地域コミュニティの社会経済活動の復旧・復興を行います。

災害時の事業継続マネジメントに必要な各項目をリストアップすると、いずれも事業戦略そのものと言えることばかりです。事業継続マネジメントが経営戦略であると考える、最たる理由です。

BCMが重要視される背景

BCMが重要視されるようになったのは、日本各地で自然災害が多発したことです。たとえば、2011年3月の東日本大震災がその一例です。

東日本大震災ではBCPを整備していたにもかかわらず、迅速な行動を起こせなかった企業が多くありました。その要因として考えられてるのが以下です。

  • BCPを発動するタイミングを見極められなかった
  • 代替手順を周知しておらず、非常時の行動がわからなかった
  • 訓練をしていないため、迅速な連携ができなかった

さらに、システム障害が多発したため、地震の影響が少なかった西日本においても、物資不足が生じたり企業活動が停滞したりといった問題も起きていました。

このような出来事を通して、BCPを作成するだけではなく計画や手順、コミュニケーションなどを含めて緊急時の全工程を運用する役割を持つBCMの重要性が見直されています。

令和6年能登半島地震の教訓から得た企業の課題

令和6年能登半島地震の教訓から、企業はどのような課題を得たのでしょうか。帝国データバンクによる、能登半島地震の影響と防災に関する企業アンケートを元に、企業が改めて大切だと考えた企業防災対策について見てみましょう。

今回の地震を機に、企業としての防災対策の大切さを実感した企業は94.9%にものぼります。実際に防災対策に取り組んでいる企業もあるでしょう。次の項目では、企業がBCMに取り組むメリットについて紹介します。

企業がBCMに取り組むメリット

内閣府の「事業継続ガイドライン(令和5年3月)」によると、企業がBCMに取り組むメリットは、主に以下のとおりです。

  • 取引先からの評価を得られる
  • 新規顧客の獲得につながる
  • 企業競争力の強化が期待できる

それぞれについて解説します。

取引先からの評価を得られる

BCMに取り組んでいれば緊急時に必要とされる商品やサービスを提供できるなど、取引先からの評価を得やすくなります。たとえば、介護保険料の請求を行っている薬局はBCP作成の義務付けられており、緊急時に迅速な行動を起こしやすいでしょう。すると、関連病院や周辺の地域住民は、緊急時でも必要な医薬品を受け取れやすくなり、安心して過ごせる方も多くなるはずです。

このように緊急時への備えを強化していると、万が一の事態が発生しても自社への評価が落ちにくいのがポイントです。慌てることなく必要な対策を迅速に実施でき、事業の早期復旧も目指せるでしょう。

新規顧客の獲得につながる

BCMに取り組んでいると、新規顧客の獲得につながりやすいのもメリットです。先ほどの事例であれば、緊急時に親身になってくれる薬局関係者とのつながりが生まれれば、その後も利用してくれる可能性があります。同様に、緊急時にも製品やサービスなどの供給が期待できれば、安心して取引できると感じられ、新規契約を結びやすくなるでしょう。その結果、取引拡大も見込め、企業としての成長も期待できます。

企業競争力の強化が期待できる

BCMへの取り組みは、企業競争力の強化にもつながります。先ほど紹介したとおり、緊急時に必要な行動を起こせる企業は取引先からの信頼を得やすくなり、競合他社との差別化が期待できるからです。大災害や感染症の拡大など、防ぐことのできない緊急事態が多発している現代において、緊急時に迅速な行動を起こせる企業への信頼は厚いと言えます。緊急時の事業停止期間を抑えられれば、自社の価値を最大限提供できるでしょう。

災害に有効なBCMを取り入れる方法

企業はさまざまなリスクを抱えているものの、災害への備えは早急に行うべきです。近年、発生のリスクが高まっている南海トラフ巨大地震は、関東から九州までの広範囲で被害が出ると予想されています。地震による津波や液状化の危険性も高く、企業としての備えは必須と言えるでしょう。

災害に有効なBCMを取り入れるには、以下の方法がおすすめです。

  • 自社の災害リスクを把握する
  • 起こり得る災害への備えをしておく
  • ICTを活用する

それぞれについて解説します。

自社の災害リスクを把握する

福岡
福岡

リスクレベルへの理解は必須です。

自社に最適なBCMを取り入れるためにも、災害リスクを把握しましょう。起こり得る災害リスクは自社の所在地によって異なるため、どのようなリスクが想定されるか事前に理解しておく必要があります。災害リスクを把握するには、ハザードマップの活用が有効です。被害状況を把握したうえで、必要な対策を行っておきましょう。

起こり得る災害への備えをしておく

災害は自社の力で防ぐことはできないため、いつ起きてもいいように万全の備えをしておく必要があります。令和6年能登半島地震では、94.9%もの企業が企業防災の大切さを改めて実感しています。とくに、飲料・食料などの備蓄や社内連絡網の整備・確認の必要性を感じた企業は多いはずです。つまり、企業における災害への備えは、早期の事業復旧を目指すうえで欠かせない重要な要素と言えるでしょう。

ICTを活用する

福岡
福岡

ハザードをすべて洗い出し、これらの対策を平時に準備しつつ、ICTを活用することが重要です。

ICTとは、通信技術を活用したコミュニケーションのことです。災害はいつ起こるか予測できないため、従業員や関係者がどこにいるかわかりません。しかし、迅速な初動を実現するためには、従業員や関係者とのスムーズな連携は必須です。そのため、ICTを活用して、いついかなるときに災害が発生しても、迅速な行動を起こせる体制を構築する必要があります。

BCMに取り組む際のプロセス

BCMに取り組む際のプロセスは、以下のとおりです。

  1. 方針の策定
  2. 分析・検討
  3. 事業継続戦略・対策の検討と決定
  4. 計画の策定
  5. 事前対策および教育・訓練の実施
  6. 見直し・改善

それぞれについて解説します。

1.方針の策定

まず、BCMの方針を策定します。自社を取り巻く現状をよく理解し、何が重要かを正確に見極めます。経営方針や事業戦略をもとに、取引先をはじめとする利害関係者からの要求・要請を整理しましょう。

その後、事業継続への考えを基本方針として策定します。事業継続目的やBCMで成し遂げたい目標も定めておき、必要に応じた対策を講じます。なお、BCMにおいて従業員や関係者の身の安全は最優先すべき事柄です。二次災害が起こることのないように、万全に備えておきましょう。

2.分析・検討

自社を取り巻くリスクを洗い出し、対策の優先順位をつけましょう。企業によって起こり得るリスクには差があり、その影響度にも違いがみられます。そのため、リスクが発生したときの影響度を詳細に分析し、その後の戦略に役立てることがポイントです。

分析する際は、自社の各事業が停止した場合の影響度やその変化を時系列で評価しましょう。たとえば、自社の主力商品を供給できなくなった場合、利益や売上への影響・資金繰りの影響・顧客取引への影響・従業員への影響などを順に考えます。そのうえで優先的に事業復旧する必要がある事業や事柄を絞り込んでいきましょう。

なお、リスクの影響度を考える際はリスクマップと呼ばれるフレームワークを活用するのも一つの有効策です。リスクマップとは、リスクの発生頻度や影響度を可視化できるフレームワークです。

縦軸に損害規模、横軸に発生頻度を位置づけて、それぞれのリスクを当てはめていき、洗い出したリスクを「損害大・高頻度」「損害大・低頻度」「損害小・高頻度」「損害小・低頻度」の4つに分類します。すると、企業が抱えるリスクの優先度がわかりやすくなり、BCMを考える際の参考になるでしょう。

3.事業継続戦略・対策の検討と決定

前述の分析・検討結果をもとに、事業継続戦略・対策を決めましょう。自社に起こり得るリスクに直面した場合、どのようにしてにボトルネックとなる要素を解消するのかを検討します。具体的には、以下の2点を考慮します。

  1. リスクによる被害を防御・軽減・復旧できる方法はなにか
  2. リスクによって必要な設備・人員などを利用できなくなった場合の代替案はなにか

なお、BCMは優先的に対応すべきリスクに応じて対策を行う必要があるものの「何が起きても重要業務を継続する」ことが目的です。つまり、BCM では原因事象を中心に考えるのではなく、結果事象における対応策を考えることが推奨されています。すると、幅広い原因事象に有効な戦略を立てられるため、自社の負担も減らせるでしょう。

4.計画の策定

上記までの情報をもとに、BCPを策定します。関係者の役割・責任、指揮命令系統を明確に定め、各部門を横断した事業継続のための特別な体制を構築しておきましょう。

BCPの策定がまだの方には、トヨクモの『BCP策定支援サービス(ライト版)』がおすすめです。前述のとおり、BCMを実行するためには、BCPの策定は欠かせません。しかし「どのように策定すればいいかわからない」「リソースを避けない」といった悩みを抱えている方も多いでしょう。

BCP策定支援サービス(ライト版)であれば、最短1ヵ月で策定できるため、少しでも早く策定したい方にも向いています。また、BCPコンサルティングは数十〜数百万円ほどするのが一般的ですが、BCP策定支援サービス(ライト版)であれば1ヵ月15万円(税抜)で提供できます。そのため、費用負担を軽減しながら、BCP策定を行いたい企業にもおすすめです。BCP策定を検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

5.事前対策および教育・訓練の実施

BCMを実効性のあるものにするには、経営者をはじめ役員や従業員に事業継続の重要性を周知させることが重要です。BCPを策定しただけでは実際に行動できるとは考えにくいため、継続的な教育・訓練が不可欠です。具体的には、緊急時を想定した避難訓練も有効策と言えるでしょう。教育や訓練を通じてBCMへの理解を深め、その重要性をすべての関係者が認識する必要があります。

6.見直し・改善

福岡
福岡

BCMは常にアップデートした状態を目指すことが重要です。

BCMは一度取り入れたら終わりではなく、定期的な見直しや改善が必須です。企業運営は常に変化がつきもので、その状況に合わせた対策が必要だからです。とくに、自社事業の内部もしくは外部環境に大きな変化があったときは見直しを実施、状況に応じた備えをする必要があります。さらに、実際にBCPを活用した場合も、反省点を踏まえたうえでBCMの見直しを実施しましょう。

地震発生時に企業・大学等が復旧するまでのプロセスの概要

福岡
福岡

BCMに取り組むには、復旧までのプロセスを理解しておくことが重要です。

下の図は、地震発生時に企業や大学等が復旧するまでのプロセスの概要を図化したものです。

坂田
坂田

実施項目のうち重要なのが、地震発生時の初動ですね。

福岡
福岡

地震発生時には、まず、安否確認を実施し、対策本部の設置と周知を行います。そのうえで、顧客や協力会社、行政と連絡を取り合い、策定していた非常時優先業務を実行していきます。

坂田
坂田

その後、安否確認を集計するのですね。

福岡
福岡

事業に携わる従業員は、企業にとって重要な資産です。また、これからの世の中を担う大学生は、社会全体の資産であると私は考えています。そのため、初動のうち、安否確認は最も重要な項目であると言えるでしょう。

災害への備えにはトヨクモ『安否確認サービス2』の活用がおすすめ

災害時に従業員とスムーズに連携するためには、トヨクモが提供する『安否確認サービス2の活用がおすすめです。安否確認サービス2とは、気象庁の情報と連動して従業員の安否確認を自動で行えるシステムです。専用アプリやメールアドレスなどを用いて従業員に安否確認通知を送り、その回答結果を自動で集計・分析します。そのため、安否確認にかかる手間を大幅に削減でき、事業の早期復旧に向けての対策を迅速に実行できるでしょう。

さらに、安否確認サービス2は国内の大規模災害を想定して、世界各地にデータサーバーを設置しています。災害時にアクセスが急増すると自動的にサーバーが拡張するため、つながりにくいといったトラブル防げるのが魅力です。つまり、大規模災害が発生しても、ICTとしての役割を最大限果たせるでしょう。

また、毎年9月1日に行われる全国一斉訓練は、BCMの教育・訓練に役立てられます。開始時間などの詳細は明かされていないため、実際の災害と同じような状況で訓練を実施できます。年に1回定期訓練を実施していれば、従業員や関係者にBCMを浸透させやすくなるでしょう。

BCMへの理解を深めておこう

BCMとは事業継続マネジメントのことで、緊急事態が発生したときの損害を最小限に抑えるためのマネジメント活動です。つまり、BCPを実効性のある計画にするために必要な対策です。BCMに取り組んでいれば、企業価値を向上させながら早期の事業復旧を目指せるでしょう。

災害への備えとして、トヨクモが提供する『安否確認サービス2を活用してください。大規模災害が発生してもシステムの安定稼働が見込めるため、従業員と迅速に連携できます。すると、事業復旧に必要な対策を迅速に実行でき、企業の損害を最小限に抑えられるでしょう。

また、安否確認サービス2は初期費用不要で、30日間のトライアル期間を設けているのも魅力です。災害時への備えとして、ぜひ無料体験を試してください。

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