防災・BCP・リスクマネジメントが分かるメディア

東日本大震災から振り返る防災訓練の重要性──企業の防災訓練と災害への取り組み

9月1日の防災の日まで残り1ヶ月を切りました。防災の日に防災訓練を実施する企業は非常に多いです。
みなさんが勤めている会社では、防災訓練を実施していますか?

「どのように防災訓練を実施すれば良いのかわからない」
「災害に向けた取り組みを検討しているが案が出ない」
「そもそも防災訓練なんて意味はない」


一例ですが、これらの理由から防災訓練を実施していない、なんてことありませんか。

今回は東日本大震災から防災訓練の重要性がわかる事例と身近な企業3社の防災訓練と災害への取り組みを紹介します。

防災訓練の大切さを過去の事例から振り返ります

2011年3月11日に起きた未曾有の大災害、東日本大震災は多くの人の命を奪いました。
特に東北地方の沿岸地域では高さ10mを超える津波が人や街を襲い、甚大な被害を出しています。
ここでは、岩手県釜石市にある釜石市立釜石東中学校と鵜住居(うのすまい)小学校の児童と生徒がこの大災害災害に直面した時にどのような行動を起こしたのかにスポットを当て、防災訓練の大切さを考えます。

東日本大震災の被害を知る

東日本大震災は、1994年の北海道東方沖地震のM8.2や1995年の阪神淡路大震災のM7.3を大幅に超える、M9.0の国内観測史上最大の地震です。
太平洋プレートと北米プレートの境界、水深6,000m以上の海溝で起きた「海溝型地震」で震源域は岩手県沖から茨城県沖までのおよそ南北500km、東西200kmと広大です。

東北・関東地方を中心に全国で地震や津波の被害が出ています。
特に沿岸沿いの地域の被害は大きく、大津波が漁港施設や農地、宅地などを呑み込み、一時的に荒野となりました。

その被害は、震災直後2011年5月時点で、死者 14,517 名、行方不明者11,432名、負傷者5,314名、避難者130,229名(18都道府県)、建物被害・全壊76,800戸と発表されています。
※死者と行方不明者の合計数は、2011年4月27日警察庁発表より

出典: 農林水産省 東日本大震災 地震と津波の被害状況
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1105/spe1_01.html

この死者・行方不明者の発生や甚大な津波被害、そしてサプライチェーンの寸断や原子力発電所の被災、電力供給制約などが影響して、経済活動も大幅に下押しされました。
資本ストックの毀損額は16兆円程度と言われています。

参考:復興庁 新たなステージ 復興・創世へ 平成29年度 予算概算決定概要
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat8/sub-cat8-3/20161222_2shiropanhontai.pdf

釜石の奇跡

釜石市は、東日本大震災により発生した大津波の影響で、人口約40,000人の市内で1000人を超える死者と行方不明者、2957棟の建物に全壊の被害が出ています。

出典: 釜石市 復旧・復興の歩み 被災〜復旧・復興10年間の出来事Ⅰ
https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2019060400109/file_contents/ayumi202103.pdf

このような未曾有の被害がでているのにもかかわらず、釜石市内の小中学校に通う児童や生徒のほぼ全員、99.8%の2921名が無事に生き延びたのです。現在では「釜石の奇跡」と呼ばれ、危機対応のモデルケースとして国内外の多くのメデイアで取り上げられています。

なかでも釜石市立釜石東中学校と鵜住居(うのすまい)小学校は海からわずか500m足らずの位置にあったのにもかかわらず、約570名の児童と生徒が地震発生と同時に迅速に避難して、押し寄せる津波から生き延びています。また、避難に際して、周囲の住民にも呼びかけ、若年者や高齢者を救ったという報告もあります。

釜石市立釜石東中学校と鵜住居小学校の児童と生徒には、自助「自分の身を自分で守る」、共助「地域や近隣同士での助け合い」の精神が根付いていたのです。

奇跡ではなく、防災訓練の積み重ねだった

釜石市を含む三陸地方は、東日本大震災以前に明治29(1896)年に明治三陸大津波、昭和8(1933)年に昭和三陸大津波、昭和53(1978)年にチリ地震津波と約80年の間に3度の大津波に襲われています。これらの歴史を踏まえて、1990年に防災標語として「津波てんでんこ」という言葉が生まれました。

これは、「津波が起きたら家族が一緒にいなくても気にせず、てんでばらばらに高所に逃げ、まずは自分の命を守れ」という意味を持ちます。

引用:警視庁 災害対策課ベストツイート集 気象・天候 「津波てんでんこ」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/saigai/yakudachi/weather/1237503238468816896.html

この言葉に象徴されるように釜石市の小中学校では、群馬大学大学院の片田敏孝教授指導のもと2004年から防災教育に取り組んでいます。東日本大震災で発生した大津波から多くの児童と生徒、そして住民の命を救ったのがこの防災教育だったのです。

防災教育で教え込まれた津波から命を守る「避難3原則」

①想定に捉われるな
「自然災害は想定外のことが起こり得る」と考えて行動をする。

②最善をつくせ
「被害が想定される地域から逃げたから大丈夫」「ここは避難所だから安全」と考えるのではなく、その時々の状況を俯瞰して考えて最善の行動をする。

③率先避難者たれ
「自分の命は自分で守る」真っ先に自分が逃げる勇気を持つ。

自然災害が発生して、避難警報が発令されても「避難を躊躇してしまう」「災害の被害の程度を低く見積もってしまう」そういった方は非常に多いです。

いざという時に判断が遅れてしまい、命を落とすということにならないためにも、平常時から防災訓練を実施するなどして、防災のあり方を考える習慣を作ることが重要です。構造物(ダム,堤防,防潮堤など)によるハード対策に頼りきるのではなく、いつ発生するかわからない災害でいかに対処するかというソフト対策も強化しましょう。

身近な企業3社の防災訓練と災害への取り組み

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン

株式会社セブン-イレブン・ジャパンは、コンビニエンスストア「セブンイレブン」をフランチャイズシステムにより全国に21,000店以上展開する業界最大手の企業です。
現在は、物を売るだけではなく、銀行ATMの設置や公共料金の支払いなど生活のインフラを支える役割も担っています。

2021年3月には大規模災害に対する事業継続計画(BCP)を大幅改定して、大規模風水害、首都直下型地震、南海トラフ地震、新型インフルエンザ等の感染症に対する BCP を追加策定しています。

この事業継続計画には大規模災害発生時の体制や災害対策本部および、各部署の役割と対応、社員の行動原則、事前の準備および、教育訓練など細かく策定されており、徹底して防災対策を行なっていることがわかります。また、支店ごとに自治体が主催する総合防災訓練に定期的に参加をして、さまざまな訓練を通して自然災害に対する防災体制の確立と防災意識の高揚を図っています。

参考:株式会社セブン-イレブン・ジャパン 大規模災害に対する事業継続計画(BCP)を大幅改定
https://www.sej.co.jp/var/rev0/0004/3390/1213815219.pdf

災害への取り組みも積極的に行なっており、店頭募金活動や従業員から未使用のはがきや切手、ベルマークなどを集め震災復興支援につながる活動団体に寄付する活動もしています。
さらには、全国183の自治体(43道府県140市区)と地域包括連携協定を結んでおり、地域の活性化や安全安心に対する取り組みに協力しています。

参考:株式会社セブン-イレブン・ジャパン 災害への対応
https://www.sej.co.jp/csr/sdgs/disaster.html

ヤマト運輸株式会社

ヤマト運輸株式会社は、日本初となる路線物流事業を展開し、現在は個人間荷物やお取り寄せ・通販・企業間荷物などの「宅急便」を開発し、物流の観点から時代の最先端ニーズに応えるイノベーションを創出しています。日本全国を網羅する精緻でフレキシブルな物流ネットワークを構築して社会インフラの一員として、物流を通じたお客さまや社会の課題解決に取り組んでいます。

2017年6月に策定された防災業務計画に防災訓練に関する記述がされており、各自治体と協定を結び、定期的に総合防災訓練に参加しています。

当社は、災害が発生し、又はそのおそれがある場合においては関係社員が迅速かつ的確に防災業務を遂行し得るよう、大規模災害等を想定した教育及び訓練を実施するよう努める。

引用:ヤマト運輸株式会社 防災業務計画
https://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/corp/csr/pdf/disaster_prevention_plan.pdf

災害への取り組みとしては、企業市民活動をテーマに震災など自然災害の活動を対象とした「ボランティア休暇制度」を2020年度から開始して、地域に根付いた活動を実施しています。

参考:ヤマトホールディングス株式会社 企業市民活動
https://www.yamato-hd.co.jp/csr/society/community/social_contribution/

キヤノン株式会社

キヤノン株式会社は、カメラやビデオなどの映像機器やプリンターや複写機などの事務機器、デジタルマルチメディア機器や半導体・ディスプレイ製造装置などを製造する、連結従業員数約20万人の東証一部上場の大手優良メーカーです。イメージング分野における高い開発力と幅広い製品群、ITの技術力など、さまざまな強みを生かし、お客さまとの共創により社会課題の解決に貢献しています。

被災した際に最適な行動をするために、災害の発生を想定して、従業員がSNSに自身の安否や被災状況の書き込みをするなど、いざという時に連絡が取り合えるようにするため、さまざまな連絡手段を活用した訓練を定期的に行なっています。事業継続計画を策定している部門では、机上でのシミュレーション訓練やシナリオに基づいた実動訓練などを行い、課題の確認や対応策の検討をして、被災した時に最善の対策で対処するための仕組みが構築されています。

また、災害が発生した際に従業員の安否状況の確認や緊急連絡を行うことを目的に「安否確認システム」も導入しており、災害発生時に確実に利用できるように全従業員を対象とした安否確認通報訓練を毎年実施しています

参考:キャノン株式会社 事業継続
https://canon.jp/corporate/csr/governance/bcm

災害への取り組みとしては、損害保険会社向け「広域災害迅速対応ソリューション」を提供して、広域自然災害による被災者支援に貢献しています。
デジタルカメラで撮影した自動車の事故画像を整備工場から伝送してもらい、保険金を支払うための損害査定を効率化するなどして、迅速な保険金支払いをサポートしています。

参考:キャノン株式会社 ITと豊富な業務知識を生かしたソリューションが、広域自然災害による被災者支援の迅速化に貢献
https://canon.jp/corporate/brand-stories/episode12

災害時、企業に求められること

今回は、東日本大震災から防災対策の大切さと身近な企業の防災訓練と災害への取り組みを紹介しました。

近年、地球温暖化の影響で大規模な自然災害が多発しています。地震や津波以外に大雨や土砂崩れ、大雪、噴火など自然災害が発生しやすい日本だからこそ、企業は万が一の被災に備える必要があります。

内閣府の防災情報のページに掲載されている防災基本計画でも「企業防災」の促進について記述があります。防災基本計画では、従業員の安全確保や二次災害の防止、事業継続、さらには地域貢献と地域との共存が企業の果たすべき役割として挙げられています。

参考:内閣府 防災情報のページ 防災基本計画
https://www.bousai.go.jp/taisaku/keikaku/kihon.html

企業規模に関係なく、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として防災対策を検討する動きもあります。「企業防災」や「事業継続」の観点に関することは、以下の記事にて詳しく紹介しています!こちらもぜひご参照ください。

企業防災とは?必要性と防災対策の基本を徹底解説 企業防災とは?必要性と防災対策の基本を徹底解説 非公開: BCP(事業継続計画)とは?チェックリストに沿って策定の手順をご説明します! 記事「BCPマニュアルの作り方【BCPコンサルタント監修のテンプレート付き】」のアイキャッチ画像です。 BCPマニュアルの作り方【BCPコンサルタント監修のテンプレート付き】

トヨクモが防災の日に提供する一斉訓練

企業向け安否確認システム『安否確認サービス2』を提供するトヨクモでは、9月1日の防災の日に、全ユーザーに向けた同時一斉訓練を実施しています。
一斉訓練実施から5年目を迎え、今年から契約前のユーザーも対象になりました。8月16日時点で1000を超える企業・団体、約48万ユーザーの参加が決まっています。

一斉訓練は大規模な災害を想定して実践に近い形式で行い、配信から12時間後までの回答を集計して、安否確認の習熟度を分析し参加企業・団体へ訓練結果のレポートを提供しています。

安否確認システムを提供するメーカーで、大規模な安否確認訓練を実施しているのはトヨクモだけです。
無償で参加することができるので、自社の防災力アップに活用するのはいかがでしょうか。

一斉訓練はこちらからお申し込みください!