緊急連絡網に記載されている電話番号やメールアドレス、SNSのアカウントなどは個人情報です。作成の際には、個人情報の不正利用や情報漏洩に気を付けて取り扱うことが求められます。
この記事では、個人情報を取り扱う際の注意点やポイントについて解説します。
監修者:木村 玲欧(きむら れお)
兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授
早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。
目次
緊急連絡網運用時は個人情報の取り扱いに注意!
緊急連絡網に記載されている個人情報は、氏名や電話番号、メールアドレスなどです。運用する際は流出したり、悪用されることがないように慎重な取り扱いが求められます。
緊急連絡網の保管に関しては以下のように対策が可能です。
- スマートフォンやPCに保管する際は、ファイルにパスワードをかけるなど、セキュリティを強化する。またウイルスソフトがインストールされているデバイスにしか保存しないようにする。
- クラウドに保管する際は、アクセスやダウンロードを制限するとともに、ファイル自体にもパスワードをかける
緊急連絡網を運用する際には、個人情報が流出、悪用されないように有効な対策を立てましょう。
個人情報取り扱いの原則
個人情報取扱事業者は、可能な限り個人情報を利用する目的の特定が義務付けられています。例外はありますが原則、利用目的達成のために必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うことは禁止されています。
緊急連絡網を運用するにあたって、個人情報を利用する際は目的を事前に明示して、同意を得ておくことが必要です。
従業員が拒否した場合は?
従業員に個人情報の提供や開示を拒否される可能性があります。個人情報利用の目的が、緊急連絡網という業務上重要なものへの記載でも、個人情報開示に懸念を抱く従業員はいるでしょう。
従業員に対して私用の電話番号、メールアドレス、SNSアカウントの開示を強要することは困難です。会社側としては、緊急連絡網作成の目的やメリットの説明を丁寧にすることしかできません。
個人情報を慎重に取り扱う姿勢を見せて、従業員の懸念を払拭してから協力を得ることが大切です。どのようにしても拒否されるなら、会社から電話などの緊急連絡用端末を貸与することもひとつの方法としてあります。
企業における緊急連絡網とは?
企業における緊急連絡網とは、緊急連絡のフローをあらかじめ定めたものです。災害や事故などの緊急事態が発生した際、「誰が、どこへ、どのツールで、どのような内容で連絡するのか」というフローを決めておきます。緊急事態に安否確認をして、従業員の安全や出勤可能性を把握しながら、対応について指示することは、企業の事業継続においては欠かせないもののひとつです。
緊急連絡網があれば、休日夜間や営業時間外などの安否確認や、台風接近時などの事前対応、指示連絡に対しても役立ちます。
緊急連絡網の信頼性を高めて、迅速な安否確認や情報伝達を可能にしましょう。
緊急連絡網の作り方
緊急時に運用する緊急連絡網は、迅速で確実な連絡をするために必要なものです。
ここからは緊急連絡網を作る際、事前に決めておいたほうがよい内容を紹介します。
緊急連絡先を決める
災害やトラブルなどの緊急時に備えて、社員へ連絡する手段を事前に決めておきます。どのような状況であっても連絡がとれるような、到達率の高い連絡先を準備しておくことが大切です。
かつての緊急連絡網は固定電話の番号を一覧にして配布していました。近年では多くの人が携帯電話を保有しています。携帯電話は自分の手の届く範囲にあることが多く、連絡がつきやすい手段です。
しかし、緊急時は通信障害や通話制限の発生が考えられるため、固定電話や近親者の連絡先、メールアドレスやSNSのアカウントなども把握しておくことが望ましいでしょう。
運用ルールを決める
緊急時であっても迅速な対応ができるように、運用ルールを決めておきます。たとえば、連絡する順番や、連絡がつかなかったときにどのようにするかなどです。
なお、連絡する順番はあまり複雑にならないように気を付けましょう。複雑な連絡網だと、最後の人に情報が行き届くまでに時間がかかるため、できる限りシンプルな構成を意識します。
緊急連絡網では安否確認や出勤可能性、被害状況などの情報収集が可能です。運用ルールを策定するにあたり、集めた情報の集計や確認係を決めておくとよいでしょう。万一、決めておいた担当者が動けないときのために、代理人を選んでおくことも重要です。
緊急連絡網の運用条件を決める
緊急連絡網を策定する際は「誰が」「どのようなときに」緊急連絡網を運用するのかを事前に決めておきます。
運用条件は主に「内部要因による発動」と「外部要因による発動」の2つに分けられます。
「誰が」については、企業なら社長や危機管理本部長などが指示すると考えられるでしょう。
内部要因での発動条件としては、「自社保有ビルで火事が発生したとき」「システム障害が発生したとき」など、決めておいた運用開始の条件に沿って指示します。
一方、外部要因での発動条件としては、「震度〇の地震が発生したとき」「避難指示が出されたとき」など気象庁や自治体の発表に応じて運用します。
緊急連絡網の運用条件を明確に定めておくことで、万一のときに迅速な対応ができます。
適切な緊急連絡網作成のポイント
緊急連絡網は、緊急時でも簡単に扱えるように作成することが大切です。
ここからは緊急連絡網を作成する際のポイントを紹介します。
役割分担を明確にしておく
緊急連絡網を作成する際は、役割分担を明確にしておきます。連絡、集計、報告、管理の各作業ごとに担当者を決めておくことで作業効率が向上します。
担当者は、班やグループ単位で決めておくとよいでしょう。担当者は多くの場合、班やグループの管理職が務めます。
管理の担当者は個人情報を慎重に取り扱いましょう。
連絡手段の選び方
緊急連絡網の連絡手段も事前に決めておきましょう。一般的な連絡手段は、以下のとおりです。
- 電話
- メール
- SNS(交流サイト)
- SMS(ショートメッセージ)
電話なら、固定電話や携帯電話などを所有している従業員が多く、連絡に気づきやすいというメリットがあります。メールは、文字数の制限がなくファイルを添付したメールの一斉送信も可能です。SNSやSMSは一斉周知が可能で、どれだけの人が連絡を見たかという情報の到達率の把握ができます。
連絡手段を選ぶ際は、それぞれのメリットを踏まえて決めましょう。
従業員への周知
緊急連絡網が完成したときには、事前に従業員へ、緊急連絡網の意味や運用方法を伝えておきます。個人情報が記載されているため、周知の際は慎重な取り扱いが求められます。
緊急連絡網はいつ運用することになるか分かりません。休日や夜間の運用であっても円滑に連絡できるように、緊急連絡網の重要性を理解してもらいましょう。
従業員への周知に有効な方法のひとつとして、緊急連絡網を使って実施する緊急連絡訓練や、安否確認訓練があります。
緊急連絡網運用時の注意点
緊急連絡網の運用には注意点がいくつかあります。
ここからは、保管場所や個人情報の扱いなど緊急連絡網運用にあたって気を付けておく点について紹介します。
保管場所
緊急時であっても緊急連絡網を容易に取り出せたり確認できたりするような場所に保管します。
たとえば、以下の場所です。
- PC、携帯電話のローカルファイル
- オンラインのストレージ上
- オフィスや自宅の重要書類保管場所
オンラインとオフラインのどちらであっても利用可能にしておくことが大切です。
保管する際は、個人情報保護のために慎重に扱いましょう。
個人情報漏洩や不正利用の対策
緊急連絡網には個人情報が記載されています。個人情報漏洩の可能性があるため、不正利用されないための対策は重要です。
不正利用対策のひとつとして、全従業員へのコンプライアンス研修を実施する方法があります。緊急連絡網を利用した訓練とあわせて実施することも効果的です。研修をすることで従業員のコンプライアンス意識が高まり、具体的な対策を立てられるでしょう。
個人情報漏洩や不正利用による問題に対しては、被害を発生させないための対策を事前に講じておき、未然に防ぐことが重要です。
想定外の事態への対応
緊急連絡網を作成する際は、想定外の事態が起こることを理解したうえで、その対応策まで考えておきます。
たとえば、想定外の事態として以下のような状況が考えられます。
- 緊急連絡網の責任者・担当者が不在で運用できない
- 緊急連絡網が最後まで回らず途絶える
想定したシチュエーションに対しては、複数の対応策を事前に準備しておくことが重要です。緊急時は誰しも適切な判断を下すことが困難になると考えられます。想定外の事態への対応策を考えておくことで、万一の際でも迅速に対応可能です。
災害時は安否確認ツールを活用する方法も
市販されている安否確認ツールを利用すれば、緊急時に会社側が従業員の安否確認や情報伝達、収集ができます。登録されている従業員の連絡先へ、安否確認メッセージなどを一斉に送信可能です。
受信した従業員がメッセージへ回答すると、安否確認ができる仕組みもあります。安否確認ツールは数多くの通知手段に対応しているものが多いといえます。対応している通知手段の例としては、以下のとおりです。
- 電話
- 電子メール
- SNS
- SMS
- スマートフォン向けの専用アプリ
登録されている連絡先は、本人以外閲覧できないように設定することも可能です。他の従業員に連絡先を見られることがなくなるため、個人情報漏洩や不正利用防止も容易に行えます。
緊急連絡網の運用には個人情報の取り扱いに気を付けよう
緊急連絡網には、電話番号やメールアドレス、SNSのアカウントなどの個人情報が記載されています。運用する際は取り扱いに気を付けて、情報漏洩や不正利用をされないようにしましょう。個人情報が守られ緊急時の対応がスムーズにしたい場合には、市販の安否確認ツールがおすすめです。
たとえば、トヨクモの『安否確認サービス2』なら、不正アクセスを二段階認証で撃退するように個人情報保護機能を充実させています。個人情報の保護を重視したい方は、ぜひご検討ください。
監修者:木村 玲欧(きむら れお)
兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授
早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。