災害時の安否確認は、災害時の企業の初動対応として非常に重要な役割を果たしますが、安否確認の手順はどのようにすべきか、安否確認の手段はメールのままでよいのか、などといった悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。
また、安否確認をメールで行う場合は、どのようなメール文をどのようなタイミングで送るべきか悩んでいる防災担当の方もいるでしょう。
本記事では、安否確認メールの例文や、災害時にメールを送信・返信する際のポイント、安否確認システムの導入の重要性などについて詳しく解説します。これらの情報を活用して、安否確認をよりスムーズに行えるようにしましょう。
目次
安否確認メールを送る際のポイント
安否確認メールとは、災害が発生した際に従業員などの健康状態や状況を確認をするために送付するメールです。従業員本人はもちろんのこと、従業員のご家族の安否についてもあわせて確認することで、今後の業務に影響があるか、今後の事業継続や復旧に向けての人員配置をどうするかなどを判断する材料となるでしょう。
迅速かつ正確に従業員の安否情報が取得できるように、安否確認メールを送信する際のポイントを紹介します。
災害が起こったら、できるだけ早くメールを送る
災害が発生したら、できるだけ早くメールを送りましょう。当然ながら、災害発生時には従業員の安否こそ最優先で確認すべきことだからです。
従業員の安否情報を取得できるスピードが速ければ速いほど、次の対応も考えやすくなります。事業継続・再開もそれだけスムーズに進むでしょう。
また、メールの送信が遅れると、様々な初動対応に着手する時間も遅くなりますので、取引先や社内の従業員からも不満や不信感を抱かれるおそれがあります。
メールの内容は安否確認のみにする
安否確認メールの内容は、安否を確認することのみに限定すべきです。。簡潔で分かりやすい内容にすることで、安否確認メールの受信者が素早く内容を理解して、適切に行動を取ることができるでしょう。よって「お疲れ様です。」「こんにちは。」といった冒頭の文言は不要です。
また、社外の方へ送る安否確認メールの場合でも、時候の挨拶などは省いて簡潔にしましょう。
安否確認メールに余計な情報が含まれていると、メールを受信した人が内容を瞬時に判断できず、その分その後の対応が遅れます。
災害時、被災した人々は強烈なストレスを抱えていたり、混乱状態に陥っていたりすることが考えられます。そのような状態にあっても、なるべくスムーズにメールの内容を理解してもらえるよう、シンプルな文面を心がけましょう。
返信を急かさない
安否確認メールを送信したら、返信を急かさないことも大切です。相手がどのような状況下に置かれているのか分からないため、無理に返信を求めることで逆にストレスを与えてしまう可能性があります。すぐの返信を促すような表現は用いず、何よりも自身の安全を確保することを最優先するよう伝えてください。
しかし、いつまでも返信が帰ってこない場合も考えられます。一定時間返信がなかった場合にはメールを再送するなど、事前に計画を作っておきましょう。
安否確認メールの例文
災害時の安否確認メールは、その内容や送信タイミングが非常に重要です。ここからは、社内向けと社外向けの安否確認メールの例文をご紹介します。
【社内向け】安否確認メール 例文
社内向けの安否確認メールには、以下の内容で作成しておくとよいでしょう。
件名:【重要】安否確認
本文:
各位
こちらは【企業名】【防災担当】です。
先ほど発生した【災害の内容】に関しての安否確認メールです。
まずはご自身やご家族の安全確保を最優先に行動してください。
その後、以下の安否状況の回答をお願いします。
1)無事
2)軽傷
3)重傷
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上記本人確認のほかにも、必要に応じて下記のような内容も確認
・家族の状況:無事 | 負傷者あり | 不明
・現在の居場所:自宅 | 社内 | その他
・出社の可否:可能 | 不可能
・出社までの交通手段(可能な方のみ): 徒歩自転 | バス | 電車 | 自家用車 | その他
・出社までにかかる時間:30分以内 | 30分~1時間以内 | 1~2時間以内 | 2~3時間以内 | 3時間以上、
・自宅の状況:無事 | 被災 | 不明
・その他連絡事項:
【社外向け】安否確認メール 例文
社外向けの安否確認メールには、以下の内容で作成しておくとよいでしょう。
件名:災害のお見舞い申し上げます。【企業名】
本文:
【相手企業名】
○○様
【自社企業名】の○○です。
この度の震災で、貴社が所在する地域の被害が甚大であることを知りました。
○○様をはじめ、皆様のご心労を拝察いたします。
被害状況に関する詳しい情報が入ってきておらず、貴社のご状況についても想像できかねますが、貴社ならびに従業員の皆様方におかれましては、くれぐれもご無事でいらっしゃることを心より祈念しております。
【日時】の【納品・打ち合わせ等の予定内容】につきましては、ご心配に及びません。
落ち着かれてからで結構ですので、貴社の皆様の安全確保にご専念いただければと存じます。
また、私共でお役に立てることがございましたら、遠慮なくお申し付けください。
微力ながら、お力添えをさせていただきたく存じます。
取り急ぎの連絡とはなりますが、心よりお見舞い申し上げます。
【自社企業名】
【名前】
社外の方からの安否確認メールに返信する際のポイント
自社が被災した時に社外の取引先から安否確認メールを受信した場合、返信する際にも気を付けるべきことがいくつかあります。
営業再開の目処が立たなくてもまずは一報を速やかに返信する
災害後、営業再開の目処が立たなくても、まずは一報を速やかに返信しましょう。。
具体的な現状報告と営業再開の予定を伝えることで、相手に安心感を与えられます。
以下のような内容で送信しておくとよいでしょう。
「現在、当社の営業再開の目処は立っておりませんが、全力を尽くして復旧作業を進めております。営業再開の目処が立ち次第、改めてご連絡させていただきます。皆様にはご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。」
現状を正直に伝えつつ、今後の対応についても触れましょう。
また、相手の理解を求める表現を入れることで、より丁寧で誠実な印象を与えられます。
安否確認をいただいたことへの御礼
安否確認メールをいただいたことへの感謝の意を伝えることも大切です。また、相手から支援や協力を得た場合は、具体的にどのような支援をいただいたのかを明記したうえで、相手の行動や配慮に対して感謝の意を伝えましょう。
具体的・簡潔に現在の会社の状況を伝える
社外の方からの安否確認メールに返信する場合は、手短に会社の現状を伝えることが求められます。被害の状況や復旧の進捗、今後の対応について具体的に述べることで、相手に素早く現状を理解してもらえるように心掛けましょう。また、支援や協力が必要な場合は、その旨を伝えることも有効です。
安否確認メールへの返信例文
災害時に社外の方から安否確認メールを受信した場合の返信例文をご紹介します。
下記の返信例文は、営業再開の目処が立った時のものです。
件名:◯◯のお見舞い御礼(今後の事業再開について)【企業名】
本文:
<相手企業名>
◯◯様
いつも大変お世話になっております。【自社企業名】の◯◯です。
この度の【災害】におきましては、温情あふれるお見舞いを頂戴し、誠にありがとうございました。
幸いなことに、弊社においては社員の負傷も社屋被害も軽微にとどまっており、停電は◯日頃に復旧いたしました。
現在、通信環境も回復しております。
しかしながら、上下水道の復旧作業に時間がかかっていることから、工場内の一部設備の点検・復旧に今しばらく時間がかかる見通しです。
※↑実際の被災状況に応じて内容を変える
現在のお取引については、◯月◯日頃の納期を目処に、できる限りの対処をしております。
少しでも貴社とのお取引を早く再開できるよう、従業員一同鋭意尽力してまいります。
ご理解いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
取り急ぎのメールにて恐縮でございますが、まずはお見舞いの御礼ならびに現状のご報告を申し上げます。
皆様におかれましても、どうぞご自愛ください。
【自社企業名】
【署名】
災害時にはメールが届かない・送れない場合がある
災害時には、通信障害や制限、メールサーバーの一時的なダウンなどによりメールの送受信ができない可能性があります。安否確認メールが送受信できないケースについて、詳しくご紹介します。
通信障害や制限によりメールの送受信ができないおそれ
東日本大震災の発生時、電話やインターネットなどにアクセスが集中して、通信障害により連絡が取り合えないという問題がありました。キャリアによって事情は異なりますが、各キャリアのサーバーで処理件数の急増による滞留が発生して、メールの受信に遅延が発生しました。
災害時の連絡フローにおいても、5W1Hが基本です。
- いつ
- どこで(どのような状況で)
- 誰が
- 誰に
- 何を
- どのように連絡すべきなのか
災害時の連絡フローが構築されていないと、安否確認を速やかに行えません。
通信障害以外の懸念点
安否確認をメールで行うには、回線の混雑のほかにも懸念点があります。具体的には以下の4つが挙げられます。
- 担当者自身が被災をして安否確認業務が行えない恐れがある
- 企業の被災状況により安否確認業務になかなか着手できない恐れがある
- 安否確認状況を集計し共有するために多大な作業量が必要である
- 安否確認メールのフォーマット作成や集計・共有方法の構築、そのための訓練など綿密な事前対策が必要である
安否確認には安否確認システムがおすすめ
災害発生時、従業員の安否を速やかに確認し、スムーズな事業再開を目指すのであれば、安否確認システムの導入も選択肢に入れましょう。
安否確認システムの導入により、自然災害であれば気象庁の情報をもとに自動で安否確認連絡を発信することも可能です。安否確認の担当者が自らの安全を確保した上で、一人ひとり個別に安否確認のメールを送受信して集計・共有する、といった膨大な手間もかかりません。
また、安否確認システムの多くは以下の連絡手段に対応しています。
- メールや電話
- アプリ
- SNS
- 自動音声ガイダンス
複数の連絡手段に対応することで、通信状況や利用者の状況に応じて最適な連絡手段を選択でき、より確実で正確な安否確認ができるでしょう。
さらに、従業員の安否情報や、被害状況などの回答結果を自動集計することも可能です。被害状況を自動集計することで、全体の状況を一覧で確認でき、必要な支援や対応を素早く行えます。
安否確認システムの機能は、災害時の混乱を軽減して、従業員の安全確保と事業の早期再開に大いに貢献します。企業が行うべき災害対策として、安否確認システムの導入をぜひご検討ください。
安否確認メールは速やかに且つ簡潔に送ろう
安否確認メールを送信する際のポイントとして、災害が起こったらできるだけ早くメールを送信すること、メールの内容は安否確認のみにすること、返信を急かさないことが挙げられます。
また、社外の方からの安否確認メールに返信する際のポイントとして、営業再開の目処が立たなくても、まずは一報を速やかに送ること、安否確認をいただいたことへの感謝の意を伝えること、そして手短に会社の現状を伝えることが重要です。
しかし、災害時にはメールが届かない・送れない場合があることも忘れてはなりません。通信障害や制限、メールサーバーの一時的なダウンなどによりメールの送受信ができない可能性があります。また、回線の混雑のほかにもさまざまな懸念点が存在します。
以上の内容を踏まえて、災害時の安否確認について十分に理解して、適切な対策を講じることが重要です。それにより、従業員の安全確保と事業の早期再開に貢献できるでしょう。