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業務時間外の従業員に安否確認訓練に強制参加させることは可能か

「災害が発生した際に備えて、安否確認訓練を実施したいが、業務時間外に従業員の参加を強制してもいいものだろうか」

「時間外に安否確認訓練を実施すると法律違反と言われるのではないか」

と悩んでいる会社は多いと考えられます。

災害はいつ起きてもおかしくありません。

そして、それを予測することもできません。

そのため、安否確認訓練は業務時間外にこそ行うべきと考えることもできます。

本記事では、業務時間外の安否確認訓練への参加を従業員に強制することについて、問題はないのか、そして従業員の自主的な参加を促す方法はないのかについて解説していきます。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

業務時間外の安否確認訓練参加の強制はできない

実際に業務時間外に安否確認メールへの返信を依頼することは、法に反することではありません。

しかし、送信したメールに対して回答を強制することは難しいことが現実です。

メール回答を「強制」にした場合、「労働」とみなされてしまい、その工数に対する賃金を払わなければいけなくなります。

そしてもし業務時間外に安否確認訓練に参加しない従業員が存在しても、その従業員に対してペナルティを課すことは困難です。

メールに返信してもらうために、会社側からアクションを起こすことはできません。

一方で業務時間外の安否確認訓練は重要

業務時間外に災害が起きた時、会社側から安否確認のメールを従業員に送っても、それに対する返信を強制することは会社にはできません。

しかし、皆が同じ空間にいない業務時間外こそ、安否確認訓練を行う意義があります。

業務時間内に起こった災害であれば、少なくとも同じ空間にいる従業員の安否確認をすることは比較的容易ですが、これが業務時間外となると一気に安否確認が難しくなります。

また会社側としては、従業員の安否確認はもちろんのこと、会社の事業継続にも関わる重大なことであります。

いかに速やかに従業員の安否確認を行い、会社に出勤できる従業員を把握するかが、会社の存続にも影響することと言えます。

しかし、従業員の災害に対する危機感や知識が欠如していると、安否確認訓練への参加意欲も湧かず、参加しないという選択を取ることでしょう。

そのため、会社側としては、安否確認訓練への参加を強いるのではなく、自主的に参加したいと思えるような当事者意識を醸成できるよう工夫していく必要があります。同時に安否確認を行うことによるメリットを会社側は従業員に対して明示する必要があるでしょう。

従業員が災害に対する正しい知識を深められるように配慮することで、企業防災の肝となる安否確認訓練に「強制」ではなく、「協力」してもらえるように促していくことができます。

安否確認訓練の参加を強制することなく従業員に協力してもらう方法

前述の内容から、安否確認訓練への参加を従業員に強制することは難しいことがお分かりいただけたと思います。

強制する場合はそれは「労働」となるため、当然賃金が発生しますが、それでは災害への危機感と当事者意識を持つことには繋がりません。

「有事の際に、迅速かつ冷静に対応することで自身と周囲の人の安全を守れるようになる」ことが訓練の目的です。

つまり、訓練に自主的に参加してもらうためには、まず従業員一人ひとりの災害に対する認識を変える必要があります。

ここで意識すべきは、訓練への「強制」ではなく、訓練に「協力」してもらうために如何に工夫していくかです。

ここからは、従業員一人ひとりが自主的に安否確認訓練に参加できるようにするための取り組みとポイントを紹介します。

企業防災の目的を従業員に理解してもらう

まずは企業防災の目的を理解してもらうことから始めましょう。

「そもそも、なぜ安否確認訓練が必要なの?」

を従業員に理解してもらわなければ、たとえ訓練を行っても「有事の際に迅速かつ冷静に愛王出来るようになる」という本来の目的が果たされません。

そもそも、訓練の実施をアナウンスしても、参加してくれる人すら現れない可能性があります。

その状況を打破するには、まずは災害に対する危機感や当事者意識を従業員一人ひとりに持ってもらうため、「災害」や「防災」そのものについての基礎知識を身に付けられるような研修会を行ってみましょう。

災害に関する知識を身に付け、防災への意識を高めた後に、「では被害を最小限にするためには一人ひとりが何をすべきか」を説きましょう。

一人ひとりが担うべき災害時の役割を明確にすることも、当事者意識の醸成に役立ちます。

もちろん、有事の際は想定通りに行動できないことも珍しくなく、状況に応じた臨機応変な対応が求められますが、自分の役割を明確に認識することで、当事者意識が芽生えます。

「有事の際の自分の行動が、自身を含めた周囲の人の安否を左右する」

ことが分かれば、訓練に対する意識も変わるでしょう。

また、防災対策を自ら立案できるような行動力のある人材を育成することも重要です。

全ての従業員が防災に対して高い意識を持つことは重要ですが、訓練の内容を考えたり、BCPを策定したり、企業防災の統括を行ってくれる防災担当者の専任も行いましょう。

訓練のシナリオを定期的に見直し・変更する

安否確認訓練を行う際には、訓練のシナリオを定期的に見直し、必要であれば変更することも、従業員が訓練に協力的になってもらうために必要な施策です。

何度も同じ訓練を繰り返して行うことで、マンネリ化を引き起こしてしまい、緊張感がなくなってしまうからです。

緊張感がなくなると、従業員側としても訓練を行う必要性が感じられなくなり、本末転倒です。

そのため、訓練のシナリオは定期的に見直し、毎回新たな学びと改善点が見つかるようにすることが重要です。

その結果被災時にどのような対応をとればいいかを理解することができ、有事の際の迅速な対応につなげることが可能です。

また取引先だけでなく、普段地域の拠点となっているような施設(例えば学校や公共施設、一時避難先として宿泊施設など)との連携を図り、訓練を行うことができればさらに被災時の対策の幅を広げることができます。

会社側から地域が行っている防災訓練に参加することを促すことも、参加従業員の防災に対する意識を変えることにつながります。

自社だけで行おうとせず、様々な施設と連携し合って従業員の企業防災に対する理解を深めていきましょう。

備蓄品を用意しその内容を従業員に共有する

会社で緊急時の食料や防災グッズを用意し、社内に備蓄していることを従業員に共有することも、安否確認訓練を行う際に協力的に参加してもらえるようになる施策と言えます。

社内に防災グッズや非常食があることを知ってもらうことで、災害を少しでも身近に感じることができるからです。

また消費期限が切れそうなものから社内で消費し、新たに追加で購入して備蓄する「ローリングストック法」を社内で実際に実施し、従業員一人ひとりが常に防災に関する意識を持てるようにすることも大切です。

新たな非常食や防災グッズを購入した際には、しっかりと従業員に周知し、日頃から防災に対して意識を向けることがポイントです。

さらに、備蓄品の収納方法にも工夫が必要です。非常食や防災グッズが「どこに」「なにが」「何人分」あるのかをすぐに把握できるよう、収納棚の前に収納している備蓄の名前をテプラで貼り付けたり、写真を掲示したりしましょう。

備蓄品がどこに、何が、何人分あるのかを従業員が把握するだけでも、防災に対する意識を高める効果があるからです。

訓練のときだけでなく防災に関する定期的な情報発信を行う

安否確認訓練の際に防災に関する情報発信をしていても、一時のイベント事のように捉えられてしまうため、従業員一人ひとりに当事者意識を持たせることが難しくなります。

そのため防災に関する情報発信をイベントとして取り上げるのではなく、日常的に意識するべきこととして定期的な防災に関する情報発信を会社側から行うことが必要です。

例えば別の地域で起こった災害に関する情報や、新たに始めた防災訓練・BCPに関する情報を提供することです。

定期的に災害についての情報を耳にできるように配慮することで、従業員の防災に関する知識を深めたいという意欲を促進させることにつなげることができます。

また災害には2次災害(直接的な被害から派生するさらなる被害のこと。例えば、地震による建物倒壊で火災が発生するなど。)と呼ばれる現象があり、一つの災害からまた別の災害を引き起こしてしまう恐れがあります。

防災訓練や安否確認訓練を行った際に、2次災害についての情報を共有し合うことが重要です。

ある災害から予想される2次災害を予想し、それを防ぐためにはどのような行動が必要になるのかを社内でしっかりと定期的に共有し合いましょう。

そして訓練の振り返りや反省会を開き、出てきた話を社内に周知することも大切なポイントです。

前述した通り、訓練の際だけ防災に関する情報を発信するだけでは、従業員の防災意識を高めることは困難です。

行った訓練についての反省点を出し合い、その内容を社内に広めることで段階的に従業員に防災に関する情報を発信できるようになり、社内の防災意識を高めることに繋げられます。

防災ゲーム・アクティビティを行う

近年では、従業員の防災意識を高める施策として防災訓練ではなく、ゲームやアクティビティを行う形が流行する傾向にあります。防災訓練や防災に関する研修を開催して、従業員に参加してもらうことで企業防災に関する理解を深められます

その点、防災ゲームやアクティビティは従業員自身が楽しみながら参加できるため、一人ひとりが壁を感じずに防災に関する知識を獲得でき、結果的に防災意識を高めることが可能です。

例えば、「防災運動会」「防災コンセンサスゲーム」「防災謎解き」といったイベントがあります。

「防災運動会」とは、運動会というイベントに防災知識を取り入れた企画です。体を動かしながら防災を学べることがメリットで、防災に興味を持つきっかけ作りになります。

「防災コンセンサスゲーム」は、物語に沿って複数人で合意形成をする要点を実践するゲームです。災害時の対応をテーマとしたストーリーを舞台に、参加者同士で議論を行い、没入感を味わいながら楽しく防災について学べるゲームです。

また「防災謎解き」とは、謎解きをしながら防災について学べるアクティビティです。社内で相談し合いながら謎解きに取り組むため、コミュニケーションの活性化が図れるほか、防災に対する知識や心構えも習得できます。

安否確認訓練に強制ではなく主体的に参加したくなる仕組みを作ろう

業務時間外の安否確認訓練への参加を従業員に強制することはできません。

そもそも訓練に強制的に参加させることで、本来の目的である「災害発生時に、迅速に対応することができるようになる」ということが果たせなくなる恐れがあります。

そのため、訓練に強制的に参加させようとするのではなく、従業員自らが当事者意識を持って訓練に参加したいと思わせる仕組みを構築することが重要です。

他にも、安否確認を積極的に利用したくなる工夫として、会社からの安否確認の対象者に従業員の家族を加えることも有効です。

外出先で被災し、家族に連絡がとれない際にも、会社からも連絡がいっているはずと思えれば、安心して次の行動に移せます。

また、家族も安否確認の対象とすることで、会社が従業員を大切にしているというメッセージにもなります。

「従業員にもメリットがある仕組みだ」ということを従業員に理解してもらうことにつながるほか、家庭内でも防災が話題にあがり、自助の高まりも期待されます。

また安否確認の正確性や防災意識の向上を図る上で、安否確認システムを導入することも検討しましょう。安否確認システムを導入することで、スムーズに従業員とその家族の安否確認をすることが可能です。

さらに安否確認システムは、従業員にとっても多くのメリットがあります。

例えば有事の際にすぐに会社と連絡が取れる点や、操作方法がわかりやすくマニュアルを参照しなくても活用できる点です。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。