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BCP訓練の事例8選をご紹介!訓練を行う上で抑えるべきポイントも解説

BCP(事業継続計画)は策定するだけではなく、BCP訓練を行い従業員にその内容を周知徹底し、実効性を高めることが重要です。

今回は、BCP訓練の事例や訓練方法について詳しく説明をします。

BCP訓練とは

BCP訓練とは、BCPで定めた内容を従業員に周知徹底し、BCPの実効性を検証するために行う訓練のことです。BCPとは「Business Continuty Plan」の頭文字を取った言葉で、自然災害やテロ/感染症の爆発的流行などの緊急事態時に被害をなるべく抑えたり、被害が出た場合でも迅速な復旧によって事業継続することを目的とした計画のことを指します。

BCPは、2011年の東日本大震災以降、その策定や運用について大きな注目を集めるようになりました。。日本では地震や津波/火山噴火/台風や豪雨などの自然災害が多く発生するため、このような災害に備えておく必要があります。

BCP訓練の事例8選

BCP訓練にはどのような種類があるのでしょうか。ここでは、8つの事例をもとに詳しくご紹介します。社内で訓練を行う際の参考にしてください。

1. イメージアップ教育訓練

イメージアップ教育訓練とは、災害時における自分自身の対応行動のイメージアップによって、災害への「わがこと意識」を向上させることを目的としたものです。「わがこと意識」とは、他人事とは思わず、自分自身に引きつけて考えることです。

。訓練参加者は、具体的な災害状況と課題を提示され、実施すべき災害対応について討議のうえ発表します。イメージアップ教育訓練では、イメージできた行動内容の数や行動解答例との比較をもとに評価が行われます。

この訓練では災害時に必要な対応を学べたり、BCPのどのような前提条件のもとに対応すべきかという発動条件を検討したり、災害時に状況判断することの難しさを実感したりできます。

2. ウォークスルー訓練

ウォークスルー訓練とは、策定したBCPの読み合わせを行い、実際に被災した場合を想定し、BCPの手順を確認しながら内容の矛盾点や課題を洗い出す訓練です。

BCPを使用する状況についてイメージして話し合うことで、例えば、災害時にライフラインが停止していると実行できない対応があるなどの課題を発見できます。このような課題を抽出することで、BCPの修正や改善ができます。

3. 情報システムのリストア訓練

情報システムのリストア(復旧/復元)訓練は、緊急事態時におけるシステムの被害状況確認と復旧時間の短縮を目的に、情報システム部門が中心となって行う訓練です。この訓練では、設定された被害状況において、情報システムの被害状況と復旧手順の確認を行います。

訓練を行うことで、システム復旧に対して従業員の理解が深まり、対応策が実効性の高いものへ改善されるでしょう。

4. 総合実働訓練

総合実働訓練は、実際の災害対応をともなう総合的な訓練です。愛知県の株式会社加藤建設での事例をご紹介します。

株式会社加藤建設では、全社員・他支社・地元住民などを対象に訓練を実施しています。

南海トラフ巨大地震や大規模水害を想定し、対象となる人々が各々の役割を理解したうえで行動に移せるようにすることが目標です。訓練では非常用電源の運転訓練や衛星電話を利用した応援依頼なども行われるため、普段は触れない機器の扱い方を学習することが可能です。

5. 情報伝達訓練

情報伝達訓練は、情報伝達手段の確保や、被害状況や避難状況などの情報を正確かつ迅速に伝えることを目標に行います。

以下は、静岡県の株式会社グロージオで実施された情報伝達訓練の事例です。

株式会社グロージオでは、全社員や地域住民を対象に訓練を実施しています。大地震や台風、水害などを想定した情報伝達訓練をはじめとして、そのほか仮設トイレの設営や非常参集訓練なども並行して行っています。緊急事態時に復旧目標時間を短縮することや連絡先や安否確認情報に変更がないかを確認することが目的です。

6. 安否確認訓練

安否確認は、緊急事態時における初動対応のひとつです。緊急事態時は、社員一人ひとりが自分自身の安全を確保することで、会社としても対応要員を確保することが重要です。いざという時に安否確認が滞りなく行えるように安否確認訓練を実施する必要があります。

静岡県の土屋建設株式会社では、定期的な防災訓練や教育を実施しています。災害時に対応できる能力の取得と社員や家族の安全確保を目的とした訓練です。

土屋建設株式会社では、年に一度の頻度で安否確認訓練を行うだけでなく、抜き打ちでも実施しています。SNSを連絡手段として活用する訓練を行っていましたが、安否確認システムを導入することで回答率が9割以上になるという成果が得られました。

通常の電話やメールでは、緊急事態時に安否確認をしようとしても、「電話回線がつながらない」「メールがスムーズに送れない」などの問題が起こる可能性もあるのです。土屋建設株式会社の例にあるように確実に安否確認をしたい場合は、安否確認サービスの導入を検討しましょう。

安否確認サービス2の製品サイトに遷移します。

7. 拠点立ち上げ訓練

自然災害などによって、普段使用している事務所や倉庫などが使用できない場合が想定されます。その場合、別の場所を「拠点」として立ち上げ、そこで災害対応をしながら事業継続を目指す必要があります。

このような拠点をスムーズに立ち上げるためには、災害発生前に具体的な手順を取り決めておくことが重要です。拠点立ち上げ訓練の事例として、東京都の鹿島建設株式会社の訓練をご紹介します。

鹿島建設株式会社では、事業継続力を向上させるため、さまざまな事態を想定した実践的な訓練を実施しています。それらの訓練の1つに、関東支店が使用不可になったと想定し、茨城県に代替本部を立ち上げる訓練を行っています。

8. 図上訓練

図上訓練とは、定められたテーマとシナリオに沿って、どのように対処するかを机上に置かれた地図や会社の図面をもとにシミュレーションする訓練のことです。図上訓練では実際に対応行動は行いません。BCPの内容や手順をイメージすることで、緊急時に行動ができるようにすることが目的です。

介護施設等を運営する医療法人社団 洛和会では、図上訓練を、より「簡単に」「短時間に」「楽しく」実施できるよう最短30分での訓練を実施しています。

通常の図上訓練は主に広域を対象とし、全体としての対策を検討するものです。しかし洛和会の図上訓練は、あくまで施設内のみを対象として個人の行動を検討することで、参加者の負担を減らしつつ、職員の防災意識と技術の向上に貢献しています。

BCP訓練を行う方法

BCP訓練を行いたいとき、どのような手順で進めれば良いのでしょうか。ここからは、BCP訓練を行う際の手順について説明します。

訓練を計画・準備する

BCP訓練を行うときは、訓練の計画を立てましょう。

計画を立てる際は、以下の項目について検討しましょう。

● 訓練の目的を決める

● 対象者や訓練場所を決める

● 訓練の種類を決める

● 災害の種類や規模などのシナリオを決める

災害の種類や規模は、会社がある地域のハザードマップを参考にして、発生可能性の高いものや被害が大きいものなどを調べた上で決めましょう。シナリオについては、自治体の地域防災計画や被害想定などを参考にすることもおすすめです。。

大規模な訓練であれば従業員全体、小規模であれば特定の部署や役員を対象におこないましょう。また、計画をもとに、シナリオや必要物品などの準備も同時に行います。

訓練を実行する

計画や準備が整ったら、訓練を実行に移します。

訓練の計画にしたがって、緊急事態時の対応行動について確認をします。被害状況などのシナリオについても細かく設定しておけば、難易度を変化させることもでき、参加者の一層の能力向上につなげることもできます。

また、緊急事態専用の機器やシステムを訓練時に使用すると、より高い対応力を身につけられます。

訓練の振り返りを行う

訓練後は振り返りを行って、その結果を参加者間で共有します。訓練のよかった点だけでなく、改善点や問題点も共有しましょう。

振り返りを適切に行うには、訓練に参加した社員が自由に意見を出せるような雰囲気や環境づくりが大切です。さまざまな意見をしやすい環境を作ったり、具体的に回答できる質問をしたりしながら、なるべく多くの意見を収集しましょう。そしてBCPなどの改善点が見つかった場合には、修正・改善をすることが重要です。

BCP訓練で効果を得るためのポイント

BCP訓練でより効果を得るには、どのようなことを大切にするとよいでしょうか。ここからは、効果的なBCP訓練を実施するために意識するポイントを解説します。

意味や目的を明確にしておく

BCP訓練を行う際は、訓練を行う目的について明確にしましょう。従業員に「何を目的にやらされているのかわからない」「意味を見いだせず面倒だ」という意識があるとうまく身に付きません。

自然災害やテロなどの緊急事態はいつ起こるかわかりません。このような事態に対して迅速に対応するには、発生前の段階でBCPへの理解を深めておくことが大切です。

会社・社員の安全を守り、事業を継続するために、BCP訓練を行う意味や目的を共有しておきましょう。

シナリオは具体的に設定する

BCP訓練のシナリオは「どのような災害が起きるか」「どのような被害や影響が発生するか」などのシナリオを具体的に設定しましょう。

シナリオを具体的に設定すると、緊急事態時にとるべき行動をイメージしやすくなり、参加者に緊張感や「わがこと意識」(他人事ではなく、自分に引きつけて考えること)を持たせられるでしょう。また、現在運用しているBCPやマニュアルに対しての改善案も出やすくなります。

BCP訓練は企業と社員を守るための大切な訓練!

今回の記事では、BCP訓練について具体的な訓練や事例をとりあげながら紹介しました。自社にあったBCP訓練を通じて、参加者全員が意欲的に取り組めるように工夫してみましょう。