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【国内のテロ対策】中小企業がテロを未然に防ぎ、被害を最小減にする方法とは

企業のテロ対策について、あなたはグローバル企業でなくともするべきだと思いますか?2020年の東京オリンピックを控えている今、海外で相次ぐテロの報道を受け、日本国内でもテロ発生への恐怖が高まっています。内閣府が2015年に行った世論調査*では、「日本国内のテロ発生に不安を感じる」との回答が約8割を占めました。

*「テロ対策に関する世論調査」の概要(平成27年7月23日)より
調査対象:全国20歳以上の日本国籍を有する者3,000人
有効回収数:1,873 人
調査時期:平成27年6月11日〜6月21日
調査方法:調査員による個別面接聴取

特に企業の場合、自らがテロの標的とされる恐れに加え、テロ実行のための資器材の調達や運搬などに利用される危険性もあります。政府が監視するには限界があり、それぞれの企業が自覚をもってテロ対策を講じることで、少しでもテロを未然に防ぐ役割が期待されます。

万が一テロが発生した場合、最小限の被害で食い止めるためにはどうすればよいのか。企業のテロ対策について具体的なシチュエーションを交えながら考えてみましょう。

1.国内で発生する可能性のあるテロの手法


まずは国内で発生する可能性のあるテロの手法とその場所について紹介します。

国内で発生しうるテロは、おおむね下記のように分類されます。

①銃(自動小銃から拳銃まで)の使用
②刃物の使用
③車両で建物などに突入
④爆発物の使用(自爆装置付きジャケットなど)
⑤火炎瓶使用もしくは単純な放火
⑥核物質、生物兵器、化学物質使用
⑦毒物などの食物への混入

狙われやすい場所は、レストラン、ナイトクラブ、映画館、空港、鉄道・地下鉄の駅、観光スポット、ホテル、ビーチ、音楽イベント、マーケット、サッカースタジアムなど、不特定多数の人が集まり警備や監視が手薄なソフトターゲット*が多いようです。

*ソフトターゲットとは、軍事またはテロ攻撃に対して比較的守られていないか脆弱とみられる人または物(施設)のこと

警察は、テロ対策として、上記のような不特定多数の人が集まる施設で、制服を着用した警察官による巡回の実施、パトカーでの巡回の実施のように「見せる警戒」を実施するなど対応しています。しかしソフトターゲットは、全国民がターゲットであることとほぼ同義。警察だけでテロ対策をすることは困難なため、企業との協力関係が重要になってくるのです。

2.テロを未然に防ぐ!企業がとるべきセキュリティ対策


では、企業はテロ対策として何をすればいいのでしょうか。ここではテロを未然に防ぐための「警察への通報」「施設の管理」「資器材関連の管理」そして「訓練」の順番で説明します。

また、何らかの異常があったとき、どのように社内に周知し、警察に通報するのか、事業継続計画書(BCP, Business Continuity Plan)製作時にルールを決めておくと混乱が減ります。

警察への通報
不審物、不審者について以下の特徴がある場合は、すみやかに総務または防災担当者、警察に通報するよう全社員に周知します。

不審物の特徴
①持ち主不明の、放置された荷物がある。
②発見されにくいような場所に置かれた荷物がある。
③粘着テープやひも等で厳重に包装された荷物がある。④持ち主不明の荷物の中から機械音のようなものがする。⑤持ち主不明の荷物の中から火薬や薬品の臭いがする。⑥差出人がはっきりわからない、身に覚えのない郵便物が届いた。不審者の特徴
①同じ場所を行ったり来たりするなど不自然な行動をしている。
②普段見ない車両が長時間駐車している。
③場所や気候にそぐわない格好をしている。
④周囲を気にしながら施設の様子を窺っている。
⑤見かけない人が施設周辺でメモや録音をしたり、写真やビデオ撮影をしている。
⑥防犯カメラ等の向きを調べるなど、警備システムの設置状況を確認している。
⑦身分証明書の提示を拒否する。

施設の管理

施設内外をこまめに見回り、変化や異常がないか点検しましょう。見回りは定型的でなく、コースや時間をランダムに行うと効果的です。なお点検時は電話や無線機を所持し、異常があった場合はすぐに連絡をとります。

「非常口」「避難経路」を点検する
非常時に迅速な避難ができるよう、非常口、避難経路は定期的に点検しましょう。消火器やAEDの数、設置場所を確実に把握しましょう。特に消化器については以下の点検ポイントを確認します。

【消化器の点検ポイント】
・管理番号があるか
・消化器本体に腐食はないか

常に整理整頓し、変化や異常に敏感になる
「あるはずの無い物」が置かれたときに変化や異常がすぐに発見できるよう、常に整理整頓することも大切なこと。備品には管理番号を付し、封印シールを貼っておくと有効的です。

施設に出入りするすべての人をチェックする
施設の出入口を限定し、それ以外は施錠するなど、施設に出入りするすべての人を確実にチェックできる体制を整えておきましょう。

テロには自動車が使われるケースが多いため、施設敷地内に関係のない車両は駐車させないよう、駐車場の見回りを徹底。車両番号、車両利用者、駐車目的、駐車時間などの記録はテロの予防につながります。

郵便物など外からの物の受け取り窓口を一本化
郵便物や宅配物は、可能な限り、受け取り窓口を一本化。不審物が社内に紛れ込むことを予防することができます。

3.テロを未然に防ぐための設備と、テロが起きた後に被害を最小限にする設備

震災などの災害に関しては、ほとんどの企業が資器材の配備や備蓄といった対策をとっていますが、テロを想定した資器材を用意している企業は多くないのが実情です。しかし緊急時に、従業員や顧客の安全を守るためにも、適切な対策が必要です。

防犯カメラの設置、増設
防犯カメラは犯罪抑止や事件解決に不可欠です。
・必要な箇所を映せるか(撮影範囲が適正か)
・台数は十分か
・録画機能があるか
・日時の表示が正確か、などをチェックしましょう。

透明なゴミ箱の設置
不審物などを置きにくくし発見しやすくする効果があります。

有毒物質に対する資器材の用意
異物を皮膚に付着させたり、吸い込んだりしないよう、手袋、帽子、ゴーグル、雨合羽、マスク、タオル、消毒薬があると有効です。

備蓄資器材の用意
地震等災害への備えとして、食料品や衣料品、非常持ち出し品などの備蓄が重要ですが、テロが発生した際にも有効です。食料品については3日分を目安に用意しておきましょう。

被害抑制対策
「被害抑制」とは、テロが発生した際に被害を最小限に食い止める措置です。例えば、下記が挙げられます。

・エントランスや共有部分に設置するゴミ箱の耐爆化
・トイレの耐爆化
・窓ガラスへの耐爆ガラス設置、飛散防止フィルムの貼付

被害抑制対策がなぜ必要なのか、それぞれ考えてみます。

・エントランスや共有部分に設置するゴミ箱の耐爆化
爆弾テロでは、より多くの市民を殺傷でき、かつ爆発物の隠匿が容易な場所に爆弾が仕掛けられることが多いので、一般開放されていたり、駅などと直結している企業のエントランスや共有部分は狙われやすい場所といえます。仮に爆発したら、ゴミ箱の破片の飛散による被害も考えられるため、耐爆化が必要です。

・トイレの耐爆化
トイレも爆弾が仕掛けられやすい場所です。仮に爆発したら、トイレブースや壁面の破片の飛散による犠牲者の発生が懸念されます。

・窓ガラスへの耐爆ガラス設置、飛散防止フィルムの貼付
爆弾テロで懸念される、もうひとつの被害がガラス片の飛散です。爆発時の衝撃で生じるガラス片の飛散は、飛来するライフルの銃弾に匹敵するといわれます。エントランス部や共有部分のガラスの耐爆化をしておきましょう。

4.企業をテロから守るためのテロ対応訓練

テロを未然に防ぐため、またはテロが起きた場合どうするべきか、日頃から訓練しましょう。テロ発生に備えたマニュアルを作成しても、スムーズに実行できなければ意味がありません。積極的に訓練を実施し、有事に備えましょう。

避難訓練の実施
従業員のみならず、外来者や顧客の方々についても協力を依頼し、可能な限り連携して避難訓練を実施しましょう。

テロ予告等に対する対応訓練の実施

電話、郵便物、メール、SNSなどでテロ予告があった場合に慌てることなく対応できるよう、テロ予告に備えた行動基準や対応要領をあらかじめ定めておきましょう。電話受付の職員など、テロ予告の取り扱いをする可能性の高い職員は、特に次の点に重点をおいて訓練します。

・電話があった時刻や終了時刻を正確に記録する。「いつ、どこで何をするのか、理由は何なのか」など、なるべく多くの質問をして情報を聞き出す。
・相手の特徴(年齢、性別、話し方、方言など)、周囲の音などできるだけ多くの情報を把握する。可能であれば電話中に他の従業員が、無理であれば電話終了後、すみやかに110番通報する。

有事を想定した図上訓練の実施
テロが発生した場合、どのように行動するべきか。見取図を参照しつつ具体的な想定に基づいて意見を出し合う「図上訓練」を実施します。

まとめ

島国の日本は、他国に比べてテロを未然に防ぎやすい、武器や爆薬が調達しにくいなどといわれてきましたが、2020年の東京オリンピックに向けてさらなる国際化が進んでいく中、テロの脅威が急増することは間違いないでしょう。イスラム国などの国際テロ組織も、繰り返し攻撃対象として日本を名指ししています。

企業にとっては、防犯カメラの設置や耐爆化ひとつをとってもコストがかかることに加え、総務部門の責任と負担が増えることも事実です。しかしテロの未然防止や損害の最小限化という、社会的な目的のためにはやむをえません。世界規模のイベントを控えている今、日本は人命の重みとテロのリスクを再認識して、必要な措置を検討すべき時を迎えているのです。

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