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緊急連絡網はメールが良い?連絡手段の種類と緊急連絡網の作り方をご紹介します

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災害時に企業が社員に緊急連絡をする手段にはさまざまなものがあります。例としては、ほとんどの社員が持っている携帯電話を使った通話のほか、SNSやSMS、メールなどです。

東日本大震災時には、電話の発信制限が行われたもののパケット通信にはほとんど制限がかかりませんでした。そのため、メールの利用を考えるという方も多いでしょう。

本記事では、災害時に企業が社員にメールで緊急連絡をするときの問題点を考えながら、緊急連絡の手段や緊急連絡網を作成するときのポイントについて解説します。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

災害時のメールでの連絡について

メールは日頃から多くの人が利用している通信手段で災害時にも利用できます。

一斉送信サービスを利用すると、同時に複数人への送信ができることはメリットです。しかし、SMS(ショートメッセージ)と比べて文字数の制限がないなどのメリットもあります。

また、東日本大震災では災害時のメールでの連絡について以下のような問題が発生しました。

2011年に発生した東日本大震災では、メールの送受信が通信障害や通信制限、メールサーバーの一時的なダウンによってできない例が発生しました。

具体的には、メールサーバの混雑が原因で遅延、受信不可になった例があります。当時は発生して30分から1時間ほどで、回線の利用率がもっとも高くなりました。多くの人が回線を利用することでサーバーの処理件数が急増し、滞留が起こったためメールの送受信に影響が出たのです。メール受信に遅延が発生する原因になりました。

普段日常などで利用するメールですが、災害時においては上記のようなトラブルが発生し、連絡手段として機能しなくなる側面もあるといえます。

緊急連絡においてメールは有効なのか?

緊急連絡でのメール利用は企業の人数によって、有効ではないおそれがあります。

メールは非常に役立つツールです。しかし回線が混雑したり、人数が多かったりすると多くの時間を要したりといったリスクがあります。

災害時には多くの人が同時に連絡を取ろうとするため、回線が混み合います。混雑した回線に制限がかかれば接続しづらい状況が生まれるのです。

緊急連絡はなるべく早く取る必要があるにもかかわらず、接続ができなければうまくメールを送受信できない危険性があります。

もし、メールを安否確認の手段として使う場合は、メールのフォーマットを事前に作っておくことが重要です。安否確認や事業継続をするうえで、社員からどのような情報を収集したいのかについて考えてから作成することをおすすめします。

たとえば、従業員本人の健康状態や現在の状況だけでなく「家族の安否」「出社可能性(通勤手段を含む)」などもあわせて尋ねると、その後の対応を組み立てやすいでしょう。

安否確認をメールで行うことには、回線の混雑以外にも以下のような懸念点/問題点があります。具体的なものとしては、以下の4つです。

・担当者自身が被災して安否確認業務を行えない恐れがある

・企業の被災状況次第では安否確認業務になかなか着手できない恐れがある

・安否確認状況を集計し共有するために多大な作業量が求められる

・安否確認メールのフォーマット作成や集計、共有方法の構築、そのための訓練など綿密な

事前対策が求められる

メールで安否確認をするためには、これらのような問題点を事前に理解したうえで、問題が起こらないように入念な準備をしておくことが重要です。

メール以外の緊急連絡の手段

安否確認をメールですることには、いくつかの懸念点や問題点があることを述べてきました。緊急の連絡で利用する方法はメール以外にもあります。ここからは、緊急時に役立つ連絡手段を紹介します。

安否確認システム

安否確認システムとは、安否確認や緊急連絡を専門にしたサービスです。一斉送信や受信確認、集計を自動で行ってくれるため、情報の到達具合や誰が確認できていないかの把握が可能です。地震や特別警報が引き金となる自動送信機能もあり、送信する側の負担軽減につながります。

安否確認システムには、緊急の際にメッセージが同時送信できるメール機能も備わっています。

また、安否確認システムの多くは、社用や私用など複数のメールアドレスが登録可能です。

電話

回線が使用できれば、電話は確実に情報を伝えられる可能性が高い連絡手段です。安否確認の役割もあわせ持つため、緊急時の連絡手段として使われることも多いといえます。

固定電話や携帯電話などは多くの人が日常で利用しているため、安否確認専用のデバイスを購入したり、特別な操作が必要となったりしない有効な緊急連絡のツールです。

電話連絡の難点を挙げるとすれば「回線の混雑や制限でつながりにくいおそれ」があることです。

事実、2011年3月11日に発生した東日本大震災を例に挙げると、4月7日に発生した最大震度6強の余震が原因で停止した基地局があります。3月11日の災害以降、電力の復旧や復旧活動の進捗などで停波は減少していました。しかし、余震の影響で停止した基地局がふたたび増加したのです。

携帯電話は、基地局まで固定回線を使用しています。付近の基地局が停波すると、通話もメールでの通信もできなくなるおそれがあります。

SNSやチャットツール

SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)という交流サイトやチャットツールを利用する方法もあります。たとえば、LINEやSlack、Chat Workなどを緊急連絡に利用する企業は増加傾向にあります。

SNSやチャットツールを常用して使い慣れていれば、緊急時であっても操作に困ることなく複数人への連絡が容易にできます。

企業で緊急連絡がきた際のルールを決めておくことで、連絡到達率の把握が可能です。たとえば「コメントをする」「リアクションボタンを押す」と決めておきます。ただし企業の人数次第では集計に時間がかかり、安否確認や情報伝達が困難になる危険性があるでしょう。

セキュリティが万全でないSNSやチャットツールであれば、ビジネス向きのサービスを探すことが望ましいでしょう。

緊急連絡網の作成ポイントとは

緊急連絡網を効率よく円滑に実施するためには、いくつかポイントがあります。

ここからは、緊急連絡網を作成する際のポイントを紹介します。

連絡するフローを確定する

緊急時であっても焦ることがないように、連絡する順番などのフローを決めておきます。

迅速な情報伝達のためにはグループで分けることが望ましく、居住地域や部署、事業所などで分けられるのが一般的です。

グループと連絡するフローを策定しておくことで、緊急時でも円滑に対応が可能です。

連絡するフローが策定できれば、関係者への周知を図りましょう。

指揮系統を決めておく

緊急連絡網を作成する際には、連結点に責任者や担当者を配置しておきます。

  • 緊急連絡網での連絡を指示する人
  • 結果を取りまとめる人
  • 最終報告をする人

前述のように、作業ごとの担当者を決めます。作業内容をはっきりとさせながら、担当者を決めることで社内が一体となり速やかな情報共有が可能です。

発動条件を決めておく

緊急連絡網を作成する際には、発動条件を明確に決めておきます。緊急時の安否確認や対応の指示、事業継続に関する社内周知など、どのような事態が発生した際に緊急連絡網の利用が求められるのかを事前に決めておくことが大切です。

発動条件は主に「内部要因による発動」と「外部要因による発動」の2つに分けられます。

内部要因による発動とは、社内で事故や事件などの問題が生じた際の緊急連絡することです。

外部要因による発動は、災害時などに気象庁や自治体の発表した情報に従い緊急連絡することです。発動条件を決めておくことで、緊急時に遅滞なく対応できます。

緊急連絡網に記載すべき内容

緊急連絡網にどのような内容を記載されているのかがその後の円滑な安否確認、緊急連絡、対応指示を実現するカギです。誰にどのようなフローで連絡すればよいのかを一目で分かるように記載します。

緊急連絡網に望ましい記載項目は以下の4つです。

  • 従業員の連絡先
  • オフィスや管理職の連絡先
  • 連絡する順番
  • 緊急時の取りまとめ役(責任者/担当者)

前述した以外に、どのように安否を確認したり、情報を収集したりするのかの手順も定めておくとよいでしょう。緊急連絡の内容次第では、緊急連絡網全体ではなくある特定の部門や階層まで連絡を取ることも想定しておきます。

連絡先をいくつか確保する

緊急連絡網に用いる連絡先はいくつか保持しておきます。緊急時の際は通信障害や利用制限が考えられます。連絡する方法を複数持つことは、情報の未着や遅配を防ぐのです。

緊急連絡網に用いる際は、緊急時であってもつながりやすい手段を選びましょう。

運用時は個人情報の取り扱いに注意

緊急連絡網の運用時には、個人情報が流出、悪用されないように細心の注意を払いましょう。緊急連絡網に記載されている氏名、住所、電話番号、メールアドレス、SNSのアカウントなどは個人情報です。

社員から情報を収集する際は、利用目的を示して了承を事前に得ておくことが必要です。運用時は以下のように十分なセキュリティ対策を実行して、慎重に取り扱いましょう。

  • PC、スマートフォンなどへの保管時には不正アクセスやウイルスの感染対策を行う
  • クラウド上への保管時にはアクセスやダウンロード制限などの対策を行う

緊急連絡網は利便性と安全性を兼ね備えよう

企業を対象とした緊急連絡網は、緊急時の現状把握と事業を継続したり早期復旧したりするための重要な対策です。一方でメールは非常に役立つツールですが、緊急時では通信障害やメールサーバーダウンのおそれがあり思うように利用できないことがあります。

また、緊急連絡網には、個人情報が記載されています。取り扱いには細心の注意を払いましょう。

緊急時における連絡の方法は、数多くあります。たとえば、使いやすくセキュリティ対策の十分整った方法にするのならば、利便性と安全性の両方に優れている安否確認システムは、緊急の際に連絡する手段としておすすめです。下記のトヨクモの「安否確認システム2」なども参考にしてみてください。

安否確認サービス2の製品サイトに遷移します。
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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。