首都直下型地震のそのとき。東京を襲う震度7の被害は?|会社員・健二の物語

首都直下型地震のそのとき。東京を襲う震度7の被害は?|会社員・健二の物語

30年以内に70%の確率で発生するといわれている、首都直下型地震。東京を中心に甚大な被害となることが想定されています。東日本大震災を経験した東京の多くの企業は、対策を講じていることでしょう。

しかし、実際に直撃していない分、本当に起こるものとしての認識はあるでしょうか? 会社側はどういう対策を取ればいいのかはわかっていても、会社員は実感が湧かない人も多いはずです。

その意識を変えなければ、本当の意味での防災はできません。そのためには、首都直下型地震が直撃した場合を想定してみることが効果的でしょう。今回は、架空の会社員・健二が首都直下型地震に遭遇したとき、どう行動したのか、その足取りを追ってみましょう。

仕事を急ぐ水曜の18時、首都直下型地震発生


大手町の商社に勤務する会社員の佐藤健二は、社内の打ち合わせを終え、残っている業務の処理を急いでいた。今日は妻と夕飯を食べる約束をしているからだ。妻の美希は渋谷のIT企業に務めている。お互いハードワークで、平日はなかなか一緒にいる時間がない。

そういえば、あの店に行くの久しぶりだな、と健二は思う。今日19時に予約している店は、2人で結婚する前によく行ったイタリアンだ。時計を見ると既に18時を回っていた。急がないと。

そのときだった。オフィス全体が突き上げるような衝撃に襲われる。直後にやってきた、激しい横揺れ。

「地震だ!」と同僚が叫んだ。健二は咄嗟に机の下に入り、頭を守る姿勢でうずくまる。オフィスの棚が倒れる音が聞こえる。キャビネットがすごい勢いで通路を転がる。書類ケースがどこからか飛んできて、健二の机に当たる。まるで洗濯機の中にいるかのように、物が飛んでいた。女性社員の悲鳴が聞こえる。健二は歯を食いしばって、必死にうずくまるが、揺れは一向に収まらない。いったいいつまで続くんだ!

揺れは3分間続き、ようやく収まった。恐る恐る机から出ると、机の位置は大きくズレていて、物も散乱している。ひどい有様だった。

「おーい! 手貸してくれ! 山田が棚の下敷きになってるんだ!」

健二は手を貸して、一緒になって、棚を持ち上げ、後輩の山田を助け出す。なんとか無事のようだ。

総務部から社内放送でアナウンスがあった。震度7の地震が発生したこと、このビルは耐震化されているので倒壊の危険はない、今のところ津波の心配はないが、余震が想定されるのでオフィスの中に残るようにとのことだ。津波の心配がないなら、ひとまず安心だろうか……。

だが、すぐに不安に襲われる。妻の美希は無事だろうか……。耐震対策がしっかりとされているはずの渋谷の高層ビルなので倒壊や火災の危険はないと思いたいが……。健二は美希の無事を確認しようと、スマホを取り出し、LINEを開く。しかし、電波が繋がらない。健二は苛立ちを隠せない。

もしオフィスで被災したら?

耐震化された高層ビルにいる場合、地震の横揺れは1〜3mにも及ぶ可能性があるといわれています。キャスターなどのローラーが付いた家具は、相当な勢いでオフィスを転がり、凶器となります。

棚が倒れたりする被害も想定されるため、大きな揺れを感じたらすぐに机の下に入り、“ダンゴムシポーズ”でうずくまり、頭を守りましょう。

3日間のオフィスでの避難生活。妻・美希とは連絡が付かず……


地震発生から数時間が経ち、ニュースで情報を見ているうちに、この地震はどうやら首都直下型地震ということがわかった。その被害はまさに壊滅的。オフィス街での被害は限定的だが、多くの古い木造建築が立ち並ぶ墨田区や中野区などの地区では、広範囲な火災が発生しているらしい。この火災により、既に多くの人が亡くなっていることだろう……。

また、東京湾では重油に引火し、火の海になっているという。テレビに映し出されたその映像は、まるで地獄だった。健二の自宅マンションがある三軒茶屋には古い木造建築も立ち並んでいる。果たして家は無事だろうか……。

スマホはまだ繋がらず、美希とは連絡が取れない。だが、渋谷の被害は伝えられていないため、きっと安全なはずだ……。健二は、そう自分に信じこませる。

社員はオフィスに泊まることになった。災害発生時の行動計画として、地震発生後3日間はオフィスに残ることになっている。社員が一斉帰宅することによる二次被害を防ぐためだ。そもそも、電車も止まっているため、三軒茶屋の自宅マンションまではすぐには帰れない。帰宅困難者となった以上、安全が確保されるまで自宅に戻ることは避けた方がいい。

夜になり、健二はオフィスに備蓄してある食料や水を受け取り、同僚の福田と食事を摂る。電気もガスも止まっているため、非常用のライトでオフィスは薄明るく照らされている。オフィスは21階にあり、エレベーターは止まっているため、もし、備蓄がなければオフィスで夜を明かすことは困難だっただろう。

「いつか起こるとは思っていたけど、本当に起こるなんてな……。どうなるんだろう、俺たち」
福田がいつになく暗い声で言う。30年以内に70%の確率で起こると言われていた首都直下型地震。福田だけではなく、きっと社員みんなが、いや東京に住む人の多くが「まさか起こるなんて思っていなかった」と思っているはずだ。

「家族が心配だ……。俺の家、墨田区なんだよ……」と、泣きそうな声で福田が言う。
さっき見たニュースでヘリから撮影された、木造建築に拡がる火災が頭によぎる。それでもそんな意識を押し出すように、「大丈夫だよ、信じるしかない」と健二は励ますように言う。
「そうだよな……。佐藤も奥さんいるよな……」
福田も健二も不安でいっぱいだったが、今、彼らにできることは信じることだけなのだ。

地震発生から3日間はオフィスで避難生活を送る

もし、オフィスで被災した場合、3日間オフィスに留まることが、東京都から努力義務として求められています。これは「東京都帰宅困難者対策条例」というもので、帰宅困難者の問題に対応するために作られた条例です。条例により、会社は3日間分の備蓄を用意することを求められています。

また、高層ビルの場合、エレベーターが止まってしまった場合、地上に降りる手段が階段しかないため、高層難民と呼ばれる状態に陥ります。こうなったとき、備蓄を各階ごとに置いておくといった対策が必要です。健二の会社はその対策は万全だったので、社員はみんなオフィスに留まることができました。

オフィスから自宅まで徒歩2時間。そして、美希との再会


震災から3日が過ぎた。未だに美希とは連絡が付かない状態が続いている。震災の翌日にネットが繋がったので、LINEでメッセージを送ったが返事はなかった。電話は相変わらず混雑していて繋がらないようだ。美希は無事なのか……。もし、美希も会社にいたのなら健二と同様に留まっているはずだ。しかし、今日は既に3日が過ぎている。3日間は会社に留まるようになっているはずなので、既に家に戻っているかもしれない。

確かめるしかないな。健二はそう決意して、美希の会社を経由して、三軒茶屋のマンションに歩いて戻ることにした。

そのことを福田に伝えると「俺も帰ることにしたよ」と言った。福田の家は火災のリスクが高い墨田区ではあるが、どうやらマンションの周囲に火災は発生していないらしい。

大手町から三軒茶屋まで距離にして10km程度。そう遠くはない。しかし、道中の被害状況がわからない以上、装備は万全の方がいい。健二は会社からいわれて準備していた、非常時に最低限必要なものをまとめたバッグを持ってオフィスを出る。

福田と別れて、健二はまず、美希の会社がある渋谷へと向かう。震災後、初めてオフィス以外の街並みを見たが、歩いていると次第にどれだけ大規模な地震だったかがわかってきた。亀裂が走っている道路、倒壊した高速道路、瓦礫と化した民家。阪神淡路大震災のときにテレビで見た光景が、今自分の見知った街に広がっている。信じられない惨状だった。

しばらく歩くと、美希のいる会社にたどり着いた。しかし、美希はいなかった。同僚の社員に話を聞くと、外出中に被災したのだそうだ。しかし会社も連絡が取れず、それ以上の状況はわからないという。それを聞き、健二は崩れ落ちそうになった。

ふいにスマホに通知が来た。
「……!」
美希からの連絡だ。待ち望んでいた連絡に急に心拍数が上がる。美希は外出中に被災し、六本木の取引先のオフィスに避難していたのだという。スマホのバッテリーが切れていて、使えなくなっていたのだそうだ。

よかった……。安堵する健二。
『家に戻ろうと思う』と健二が打つ。
『うん、私もそう思ってた』と美希からの返事。

そして、2人は自宅マンションで落ち合うことになった。健二は渋谷から三軒茶屋までの道のりを急ぐ。そして、自宅に到着する。幸い、マンションは無事のようだ。健二はマンション前に座り込み、今までの疲れからか、眠ってしまった。

「健二」
健二は美希に名前を呼ばれ、飛び起きた。
「美希! よかった!」

再会を喜ぶ2人。3日ぶりに我が家のドアを開ける。たった3日だったが、健二はもう何週間も経っているように感じた。家の中は棚という棚の物が落ちていてひどい有様だったが、片付ければなんとかなりそうだ。健二は不思議と幸せな気分だった。美希を見ると、目が合った。2人とも自然と笑みがこぼれる。生きていこう。健二は、そう思った。

首都直下型地震による被害

未曾有の首都直下型地震から、無事、生き延びることができた健二と美希。では、実際にどれほどの被害に見舞われたのでしょうか。

冬の18時、風速15m/s以上あった場合、被害が最大となるという試算が出ています。その際、建物の倒壊と火災の軒数は合計85万棟火災がなんと65万棟。そして死者数の合計は11000人、そのうち火災により死亡が6200人にも及ぶとされています。

火災の被害は、特に古い木造建築が立ち並ぶ、墨田区や荒川区、足立区、中野区、杉並区などが危ないといわれています。こうした家が周囲にある場合、自分の家だけが火災対策をしていたとしても無意味です。すぐに火は広がるでしょう。もし防災を考えるなら、木造建築が多い地区に住むのは避けた方がいいかもしれません。

健二と美希の場合、オフィスが耐震化されていたことと、会社側が3日間の備蓄を用意することと、訪問者も含めて10%余分に備蓄をしておくといった、BCPが実施されていたために、命が助かりました。

BCPは会社が存続するためということはもちろんですが、従業員の命を守るためにも必要なのです。

もはや他人事ではない。生き延びるための備えを!

首都直下型地震が起こった場合、私たちはどう行動すべきなのでしょうか。本記事では架空の会社員・健二が取った行動を見てきましたが、こうした事態は東京に住む全ての人にとって、少なくとも30年以内に高い確率で起こることなのです。

もしものときに備えた企業の防災、そして個人の防災を十分に備えておくことが必要です。それは物理的な準備はもちろんですが、心理的な心構えを持っておくということも大切でしょう。未曾有の大震災から生き延びるために、今から準備しておきましょう。

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