内閣府が発表した「令和4年版 防災白書」では、災害時における不明者の安否確認について、以下のように触れられています。
「災害が発生した際、人命の救助活動の効率化・円滑化に氏名等公表が資する場合がある。発災当初の72時間が極めて重要な時間帯である。」引用:内閣府(令和4年版 防災白書)
資料からもわかるとおり、災害発生時の対応を円滑に行うためには、早い段階での安否確認によって安否不明者を同定して、いち早い救助活動などにつなげることが肝心です。
そのため、緊急時は国や自治体だけではなく企業側も積極的に従業員の安否確認を行うことが重要です。
迅速な対応をすることで、捜索の手助けになったり人命救助につながったりする可能性も高くなるでしょう。
今回は企業における災害時の安否確認の必要性や、目的について解説しています。
自社の安否確認の方法やBPC策定などについてお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
企業が行うべき「安否確認」とはそもそも何か
災害時に企業が行うべき安否確認とは、従業員の生存確認を行うことです。
「現在安全な状況にあるのか?」「怪我をしていないか?」「適切な連絡手段があるのか?」などの確認も、あわせて行います。
原則として従業員が対象ですが、家族や同居人などの関係者の安否確認を同時に行う企業もあります。
昨今、日本では地震災害や風水害などが多発しています。この傾向はしばらく続くとも言われています。企業は、災害時に迅速な安否確認を行えるようにしておく必要があるでしょう。
企業によって従業員の働き方は異なるため、各社それぞれの業種や業態に応じた安否確認方法の確立が求められています。
とくに近年はリモートワークを取り入れている企業も多いため、同じ場所にいない場合でもスムーズに連絡を取れるようにしておくことが大切です。
安否確認が企業の義務である理由
災害時に従業員の安否確認をしなくてはならない」といった具体的な法令はありません。
しかし、いかなる場合においても、企業は雇用している従業員の安全を確保することが義務付けられています。
これは「労働契約法第5条」に定められている「労働者の安全への配慮」の項目に該当します。
以下は、労働契約法の抜粋です。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。引用:労働契約法
この法令では、従業員が安全かつ健康に働けるよう、企業側が配慮することが定められています。
また、従業員の安全配慮義務については、労働契約法だけでなく、労働安全衛生法にも記載がされています。
(事業者等の責務)
第三条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。
災害発生時に従業員を助けなかったり、ケガをしているのに無理に出勤させたりした場合、企業側にペナルティが課せられる恐れがあるのです。
しかし単に「法律で定められているから」といった理由だけでなく、なぜ緊急時の安否確認が必要なのか理解しておく必要があります。
以下では主な2つの理由について解説します。
理由1. 迅速な事業継続・再開につなげるため
迅速な安否確認を行うことで、従業員の安全確保を図るとともに、今後の事業の継続や早期再開に必要な人員の把握をすることができます。
災害発生時にも従来どおり事業を行ったり、再開したりする体制を整えたりするためには「BCP(事業継続計画)」を策定しておくとよいでしょう。
BCP(事業継続計画)とはBusiness Continuity Planningの頭文字で、緊急事態における事業の継続計画のことを指します。
災害時は想定外の事態が度々発生し、冷静な判断ができなくなってしまうことが想定されます。
想定外のことも起きやすい災害時に「どのような被害状況が想定されるか?」「誰がどのように行動するのか?」などを事前にマニュアル化しておくことが重要です。
理由2. 社会的信用を保つため
安否確認を含むBCP(事業継続計画)を策定することは、企業の社会的信用度のアップにもつながります。
災害発生時における対策を事前に策定していることは、多様なステークホルダー(利害関係者)に対して安心感を与えられます。
また、このような企業(管理側)の姿勢を公に見せることで、従業員の信頼感が高まることも期待できるでしょう。
反対にBCPへの取り組み意識が低い企業は、労働契約法などの安全配慮義務に抵触してしまったり、社会的信用を失ってしまったりするおそれがあるので注意が必要です。
企業が安否確認のために準備しておくべきこと
企業の安否確認の重要性が理解できたところで、次は具体的な安否確認の方法を紹介します。
- 従業員に安否確認の重要性を理解してもらうための発信
- 連絡手段の確立
- 従業員に対して伝えることを事前に決めておく
- 安否確認の担当者を決め情報の収集・発信手段を決めておく
防災担当者が準備するべきことは多岐にわたりますが、まずはこの4点を確認しておきましょう。
従業員に安否確認の重要性を理解してもらうための発信
緊急時の安否確認をスムーズに行うためには、従業員側の協力が必要不可欠です。
BCPや防災への取り組みは、企業からの一方通行ではなく従業員自身が危機感を持って取り組むことが大切です。
後述する、連絡手段の確保やツールの導入を検討する前に「なぜ安否確認が必要なのか」を、従業員に正しく理解してもらわなければなりません。
管理側だけではなく、従業員一人ひとりが「わがこと意識」(自分事意識)を持つ必要があります。わがこと意識とは、災害を自分たちに身近なこととして自分たちに引き付けて、「他人事」ではなく「わがこと」と考えることです。わがこと意識を持つことによって、単なる不安だけでなく、具体的な行動に移すことができると言われています。
連絡手段の確立
安否確認の方法として、従業員への連絡手段はあらかじめ決めておきましょう。
それぞれの従業員への連絡手段が異なると有事の際の対応が遅れてしまうので、連絡ツールは少数に絞っておくことがおすすめです。
以下では、連絡ツールの種類とそれぞれのメリット・デメリットをまとめています。
連絡ツールの種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
電話 | ・導入費用がかからない・普段から使い慣れている | ・災害時は回線がつながらないことがある・大人数への連絡が大変 |
メール | ・導入費用がかからない・大人数に一斉送信できる | ・メールの管理が大変(返信の有無の確認、集計、再送信(リマインド)など) |
SNS | ・導入費用がかからない・電話が不通の際でもアクセスできるケースがある | ・プライベートアカウントとの併用に問題が発生するケースがある |
チャットツール | ・グループチャットが便利・レスポンスが早くできる | ・導入時に費用がかかる・災害に特化したシステムでないため、安否確認システムに比べると便利な機能が少ない |
安否確認専用システム | ・機能が豊富(災害時のメッセージ自動送信、回答の集計、再送信(リマインド)など)・セキュリティレベルが高い | ・導入時に費用がかかる |
連絡手段を1つに絞っておくと管理が楽ですが、災害時にそのツールに不具合が出ることも考慮し、予備として複数の方法を用意しておくことがおすすめです。
従業員に対して伝えることを事前に決めておく
安否確認のために従業員に連絡する際のマニュアルとして、伝える(確認する)内容は事前に決めておきましょう。
もちろん臨機応変な対応が必要になるシーンもありますが、あらかじめいくつかのパターンを想定した連絡内容を決めておくことが大切です。
マニュアルを準備しておくことで、パニックに陥らず冷静な対応ができます。
テキストベースで安否確認を行う場合は、災害時に送信するメッセージの定型文を作成しておきましょう。
一例として、地震発生時の従業員への安否確認の定型文を紹介します。
件名:【重要】安否確認メール
例文:〇〇地域の地震についての安否確認メールです。各自、状況の登録をお願いします。
1.怪我はありませんか?
無事/軽症/重症
2.現在、どこにいますか?
自宅/会社/通勤途中/その他
3.出社できますか?
可能/不可能
メールやアプリなどを用いて、状況を端的に教えてもらえるような内容にしておきましょう。
安否確認メールの他の例文は、こちらの記事でも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
>>災害時、非常時に利用する安否確認メールの例文
安否確認の担当者を決め情報の収集・発信手段を決めておく
安否確認時の混乱やミスを避けるためには、指示系統を明確にしておくことが大切です。
例えば「安否確認の連絡を送る担当者」「安否確認情報を収集・整理して次の対応を指示する人」など、分担を決めておきましょう。
ただし、担当者本人が被災してしまい身動きが取れなくなる可能性もあるため、複数人の担当者を決めておくことが望ましいです。
安否確認の義務を果たすために安否確認システムの導入を検討しよう
前述した通り、安否確認の連絡手段はいくつかあるものの、災害時の通信制限や、アクセス集中によるインターネットや電話回線のパンクのリスクは否めません。
スムーズな安否確認を行うためには、専用の「安否確認システム」の導入が最も安全と言えるでしょう。
安否確認システムの中には、災害時でも影響を受けにくいサーバー環境を整えているものもあり、いざという時も連絡が取りやすい点が特長です。
またスマートフォンやタブレット、ガラケーなど多くのデバイスに対応しているものもあり、従業員の環境にあわせた配信を行うことが可能です。
以下では、自社に適した安否確認システムを選ぶ上での重要な3つのポイントをまとめました。
- 自社に必要な機能を有しているか
- 簡単に操作できるか
- お試し期間が設けられているか
安否確認システムの導入前には、これらの項目をチェックしておくとよいでしょう。
自社に必要な機能を有しているか
安否確認システムの選び方で大切なのは「自社に必要な機能を有しているか」を確認することです。
安否確認システムのシステムや加入プランには、シンプルなものから手厚い内容まで多種多様なラインナップがあります。
高機能すぎても使いこなせなければ無駄になってしまうので、自社に必要な機能だけが入っているものが望ましいです。
価格と使える機能の範囲を比べ、コストとのバランスを見てプランを選ぶとよいでしょう。
基本的な機能の一覧は以下を参照にしてみてください。
機能名 | 内容 |
---|---|
一斉送信機能 | ・従業員に対して一斉にメッセージを送信する機能 ・あらかじめ決めておいたテキストを送信できる |
自動送信機能 | ・災害が発生した際に自動的にメッセージが送信できる機能 ・特別警報や津波警報など、気象庁など公的な機関からの通知と連動させてメッセージを自動送信できる |
集計機能 | ・送信したメッセージに対してのレスポンスを自動的にまとめてくれる機能 ・回答、未回答などから従業員の状況を把握できる |
掲示板機能 | ・チャットのように使用できる機能 ・社内で複数人のやりとりをする際に役立つ |
簡単に操作できるか
安否確認システム選びの重要なポイントとして「操作の簡単さ」は外せません。
災害発生時は多くの人が冷静さを失ってしまうため、簡単な操作方法でなければ肝心な時に使いこなせない可能性があります。
なるべくシンプルで操作性の良いものを選ぶことがおすすめです。
また、スマートフォン専用のアプリが使える安否確認システムも便利です。
アプリはメールとは異なり、メールサーバーの混雑状況の影響を受けにくいため、通知やフォーム送信がスムーズにできます。
また管理者がパソコンが使えない状況であっても、アプリから集計機能の結果が見られる点もメリットです。
従業員からの回答内容を外からでも瞬時に確認できるため、緊急時に役立つでしょう。
お試し期間が設けられているか
安否確認システムの導入時には「お試し期間」が設けられていることがあります。
導入してから使い方を覚えるのではなく、使い方をある程度理解し、災害時でも使いこなせると確信を持って導入を決められると安心です。
お試しプランの有無はメーカーや企業によって異なるため、事前にチェックしてみてください。
本格的な導入を決める前にシステムの使い勝手を試せるサービスがあるので、ぜひ無料トライアルを利用してみましょう。
迅速な安否確認を行えるよう準備しておこう
企業にとって従業員の安否確認は非常に重要です。
安否確認自体は義務化されていませんが、自社の存続のためにもBCPの策定は欠かせないと言えるでしょう。
また、効率よく安否確認を行うためには、使いやすい「安否確認システム」の導入が大切です。
例えば、トヨクモの「安否確認サービス2」は、大手企業を含む3,000社以上が利用している、安否確認の専用サービスです。
安否確認サービス2は、システムの品質にこだわっており、災害時にアクセスが集中した場合でも、海外を含む複数箇所のサーバーで安定した稼働を保てます。
初期費用は0円なので、導入時の多額のコスト負担の心配がありません。
トヨクモが企画する防災訓練(一斉訓練)も行われており、従業員の防災意識のアップにもつなげられます。
実際のサービスを30日間使用できるので、ぜひ「安否確認サービス2」の使い勝手を試してみてください。
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災害から会社を守るため、できるだけ早急に組織の安否確認の仕組みを作っておきましょう。