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安否確認業務の時間外実施は違法ではない?具体的な安否確認方法も解説

安否確認業務は、災害時に従業員の身を守るための手段として欠かせません。

しかし、従業員から会社に対して「業務時間外の安否確認はおかしい」と反発された経験もあるのではないでしょうか。

そこで本記事では、業務時間外の安否確認は問題ないか解説します。

あわせて、従業員から安否確認連絡へスムーズに回答してもらう方法についても言及するため、会社で安否確認を担当している方はぜひ参考にしてみてください。

業務時間外の安否確認は業務とみなされるのか

業務時間外の安否確認は、業務とみなさなくても違法性はありません。

なぜなら安否確認は、従業員の安全を守る手段として重要なものであり、かつ回答作業は数十秒から数分程度と従業員への負担が小さいためです。

したがって、業務時間外であっても、従業員に対して安否確認連絡への協力を要請できます。

しかし、許されるのはあくまで「要請」であり、安否確認への対応を強制することはできません。強制したり、安否確認連絡への対応をしなかった者を咎めたり、マイナス査定を行うなどの行為をとったりした場合には、それらは労働とみなされ賃金が発生します。

そのため、あくまで「従業員自身を守るために必要だから協力してほしい」というスタンスで周知するようにしましょう。

企業が安否確認を業務の一環として行うべき理由

従業員への安否確認対応は、従業員に強制することは避けるべき一方で、企業には業務の一環として実施する義務が課せられています。

以下で、企業が安否確認を業務の一環として行うべき理由を見ていきましょう。

労働法によって定められた企業の義務であるため

労働法第5条にて、企業はいかなる場合においても従業員の安全を担保する義務があると明記されています。

(労働者の安全への配慮)第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
出典:労働契約法|e-Gov法令検索

したがって、企業は従業員の安全を確保する手段の一つとして、安否確認を実施しなければなりません。

安否確認を怠った場合は、労働法第5条の違反に問われる可能性があります。

また、労働者の安全への配慮の違反に対する罰則規定はないものの、労働者側から訴えによる損害賠償のリスクは存在します。

速やかな事業継続・再開に繋げるため(BCP)

企業は被災した際も、事業を速やかに再開できる体制を整えておく必要があります。

事業が長期間にわたって中断することで、当然業績は悪化し最悪の場合会社の存続の危機を迎えることになります。そうなれば自社の従業員だけでなく、商品・サービスの納品先などあらゆるステークホルダーに影響します。

よって、企業は被災時に速やかな安否確認を実施し、事業再開に必要な人材を確保することことが求められるのです、

そして、スムーズな安否確認と迅速な事業の継続・再開体制の構築には、「BCP(事業継続計画)」を策定しておくことが非常に重要です。

BCPとは、事業継続計画の名の通り、企業が災害時や緊急事態発生時に事業を迅速に復旧させ、継続することを可能にするための計画です。

避難訓練や安否確認訓練が緊急事態発生時の具体的な対応手順を学ぶものであるのに対して、BCPは事業の復旧と継続に欠かせない包括的な計画を指します。

各所からの社会的信用を維持するため

災害時に事業を再開できなければ、従業員だけでなく、顧客や仕入先などの取引先に対しても多大なる影響を与えます。商品・サービスを取引先に納品できなければ、その企業もまた事業を維持できなくなる可能性があるのです。

その結果、従業員や取引先などのあらゆるステークホルダーからの信頼を失い、社会的信用が失墜します。

一方で、事前にBCPを策定し緊急事態にも速やかな対応ができれば、それを未然に防ぐことはできるでしょう。

また、有事の際に迅速且つ正確な対応を行い、あらゆる被害を最小限に抑えることができれば、社会的信用度が高まることも期待できます。

安否確認業務をスムーズに進める方法

安否確認の業務は、災害発生後速やかに行われなければなりません。

以下で、安否確認業務をスムーズに進めるための具体的な方法を見ていきましょう。

全ての従業員に安否確認に対する当事者意識を持ってもらうようにする

企業側が安否確認の重要性を理解していたとしても、従業員とその認識を共有できていなければ、安否確認のスムーズな実施は難しいでしょう。

例えば、従業員が「業務時間外に安否確認の連絡が来ても答えたくない」「会社に自分の連絡先を知られたくない」と考えている場合、安否確認への協力を得ることは困難です。

そのため、安否確認の重要性について、企業側と従業員の認識を一致させる必要があります。

従業員に安否確認に対する当事者意識を持ってもらうためのいくつかの方法を紹介します。

災害に関する定期的な情報発信

災害に関して、社内で定期的に情報発信することで、従業員の災害に対する危機意識を高められる可能性があります。

数ヶ月に一回程度ではなく、毎月など発信頻度を上げたほうが、災害を「いつ起きてもおかしくないもの」と認識してもらいやすくなるでしょう。定例会議の議題にBCPを付け加えるのも無理なく続けられる方法です。

例えば、実際に過去に起きた災害の詳細内容や、安否確認の重要性などについて発信し続けることで、従業員の危機意識を向上させやすくなります。

災害に関する情報の発信手段としては、社内報や掲示板がおすすめです。

一方で、東日本大震災など、過去の大きな災害を自ら経験し、その際の写真や映像を見ることで過去のトラウマが蘇ってしまう方もいます。当時の被害状況が分かるような写真や映像を配信する際は、事前にその旨を告知するなど、配慮を欠かさないようにしましょう。

定期的な訓練の実施

災害への当事者意識をより高めるためには、定期的な訓練の実施が有効です。

訓練の内容は、災害発生時の状況をなるべくリアルに体感できるものが推奨されます。

具体的には、避難経路の一部を閉鎖したり、煙機で視界を制限したりすることなどが有効です。

防災訓練のシナリオは、数多く用意しておきましょう。例えば発生する事象として地震による建物被害や浸水被害、液状化による道路閉塞、停電によるシステム途絶、または人為的な事故などです。

なぜなら、防災訓練の内容が毎回同じだとマンネリ化してしまい、臨場感も薄れてしまう恐れがあるためです。

また、具体的な避難訓練を実施するためには、BCPの策定が重要です。

BCPを策定しておくことで、実際の災害発生時と同様の役割分担や、状況に応じた具体的な対処方法を実戦形式で経験できるようになります。

従業員への連絡手段を決める

災害発生時の従業員への連絡手段は、あらかじめ決めておきましょう。

連絡手段には電話やメール、アプリなどさまざまな種類があり、どれを使用するか決めておかないと安否確認がスムーズにできないためです。

また、連絡手段について従業員に周知しておくことも重要です。

例えばメールで連絡する場合、従業員が自身が使用してる最新のメールアドレスを共有できていないと連絡ができなくなってしまいます。

このようなリスクを防ぐためには、事前にメールで災害時の連絡を行うことを周知し、従業員に現在のメールアドレスを提出してもらう必要があります。

ちなみにメールやアプリの場合、災害時はインターネットや電話回線のパンクにより送受信ができないケースがあるため、確実性が高いとは言い難いです。

このようなリスクを防ぐためにも、安否確認システムの導入なども視野に、複数の手段を検討したほうがいいでしょう。

シンプルに回答できる文言を作成する

安否確認メールは、いつどんな時でも簡単に回答できるシンプルな文言にしましょう。

安否確認メールの返答率が低い主な理由として、従業員が返答することを面倒と感じていることがあげられます。

実際に、被災して冷静さを欠いている時に返答しにくい長文の安否確認メールが届いたら、回答を後回しにしてしまうこともあるでしょう。

そのため、安否確認メールはは回答しやすい内容にする必要があります。

例として、確認項目を必要最低限に絞ったり、質問内容を「はい・いいえ」で回答できるものにしたりするのが効果的です。

安否確認システムを導入する

安否確認システムを導入することで、災害発生時の連絡をスムーズに実施しやすくなります。

安否確認システムのおもなメリットは、以下のとおりです。

  • 安否確認メッセージを一斉送信できる
  • 集計や発信などを全てシステムが代行してくれる
  • 誰でも操作できる

安否確認をスムーズに行うためには、従業員側だけでなく、安否確認を行う企業側の手間も最小限にしなければなりません。

また、安否確認の担当者が被災して身動きが取れなくなった際は、他の従業員が役割を代行する必要があります。

したがって、災害発生時にも確実に安否確認連絡をできるようにするためには、誰でも手間をかけずに操作できる安否確認システムの導入が推奨されます。

安否確認連絡のスムーズな実施には従業員の理解が欠かせない

安否確認連絡を業務時間外に行うことは、違法ではありません。

しかし、従業員の理解が不十分だと、有事の際にスムーズな安否確認ができなくなってしまいます。

万が一の事態に、従業員の安否を早急に確認できるようにするためにも、普段から安否確認の重要性について教育しておきましょう。

また、安否確認連絡をよりスムーズに行うためには、安否確認システムの導入が望ましいです。

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