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朝の登校時に地震が発生…児童の安否確認はどう行うべきか

2018年6月18日。多くの児童が登校中である、朝7時58分に、大阪北部地震は発生しました。
この時間帯は、子どもたちはすでに自宅を出てしまった後……。学校も保護者も、子どもの所在が確認できない中、児童の捜索や集団下校などの対応に追われました。

中には、災害時登下校マニュアル外の対応をとった学校が、そのことを保護者に伝えきれなかったために混乱が生じたこともあったと報道されています。確実な情報伝達の手段が必要であることが浮きぼりにされたのです。

ここでは、実際に現場の混乱をきたした事例をふまえ、その原因を探っていきます。また、学校と保護者が直接連絡を取り合える「安否確認システム」の有効性について解説していきます。

朝の登校時に地震が発生…マニュアル外の対応に保護者が困惑

大阪北部地震では、学校と保護者との連絡網や学校のHP上の情報が役立たなかったり、学校側がマニュアルどおりの行動をとらなかったことで、混乱を招いたケースが見られました。事例を3件、ご紹介します。

【事例1】
大阪市立堀川小学校では、児童の8割が登校したため、運動場に避難させ点呼をとった後、保護者へ引き渡しました。登校しなかった児童も、保護者への電話などで所在と安全を確認。

同校は昨秋、南海トラフ地震を含む災害対応訓練を実施しており、落ち着いた対応につながったとしています。しかしながら、保護者からの電話や学校のホームページへのアクセスが殺到し、普段よりも通話やHPの情報更新がスムーズにできなかった、という課題も残りました。
参考:登下校時に地震発生、児童どう守る 保護者への連絡など課題

【事例2】
高槻市では市立小学校3校が、「迎えにきた保護者に児童を引き渡す」という各校のマニュアルに反し、教員が引率して集団下校させました。奥坂小と丸橋小は保護者にメールなどで連絡して児童を集団下校させる一方、迎えにきた保護者には引き渡しを行いました。

松原小では大半の児童を保護者に引き渡しましたが、保護者が迎えにこられなかった児童を集団下校させました。3校は「できるだけ早く児童を保護者のもとに届けたかった」と説明しましたが、保護者からは「マニュアルと異なり、混乱した」という声も上がり、市教育委員会による謝罪が行われました。
参考:高槻の3小学校、マニュアルに反し児童を集団下校 迎えの保護者に引き渡さず

【事例3】
震度4だった芦屋市は、マニュアルでは「授業再開」と定められていました。しかし、交通網の麻痺などに加え、「児童が揺れを怖がっている報告がある」として、同市教育委員会が午前8時20分過ぎ、全8校に休校を指示しました。保護者が午前中に迎えに来られない場合、ある学校は災害用の備蓄食を昼食にし、児童を待機させました。

また、児童を引き渡す相手は原則、保護者ですが、友人の親が一緒に連れて帰るケースもありました。「友人の親に引き渡した場合、下校途中に何かあれば責任はどうなるのか」「余震がある中、すぐ引き渡すよりも、学校に子どもをとどめておいてほしい」等の声も聞かれました。

災害発生時の学校・保護者・児童、それぞれの対応はどう考えればよいのか

災害が児童の登下校中に生じた際、関係者がどう行動すべきかについては、学校もしくは自治体ごとにマニュアルが策定されています。災害時の基本的な対応を整理すると、次のようになります。

【学校】
・児童の状況確認(既に登校しているか、登校途中か、まだ自宅にいるか)
・災害用伝言ダイヤル(171)への録音
・一斉メールや電話連絡網などで保護者に通知した上で、保護者に児童を引き渡す
・安否を確認できない児童の捜索
【保護者】
・学校からの連絡を受け、子どもが登校していた場合には学校に迎えに行く
・震度5以上を観測し、電話での連絡が困難な場合は学校からのメールの有無にかかわらず児童を引き取る(自治体により違いあり)
【児童】
・被災した時にいた場所に応じ、帰宅・登校のいずれかを児童自身が選択
・登校した場合は、保護者の引き取りがあるまで校内に待機
・津波や火災などが発生し、自宅にも学校にも行きようがない場合には、安全な場所(公園、集会場など)に一時避難し、近くの大人に指示を求める

登校するか自宅に戻るかは児童の判断に任されますが、通学路が落下物や倒壊物でふさがれるなど、1人での決断が難しい場面も考えられます。また、東日本大震災のように、地震後に津波や火事が発生したりするという、想定外の事態も起こりえます。

このような場合に、保護者と学校が確実な方法で直接連絡を取り合えないと、児童の所在が把握できず、災害に巻き込まれる可能性が高くなります。子どもの無事や引き取りについて学校からの連絡を待つ保護者にとって、メールの遅延や電話回線の混雑は、一層の不安をかき立てられるものです。

具体的には次のような場面で支障が生じる可能性があります。

【支障が生じる場面】
・安否をすぐに確認できない場合、誰が捜索にあたるか(学校もしくは保護者)を決定できない(学校側の職員の人手が足りず、保護者に児童の捜索を依頼する場合、その旨を保護者に速やかに連絡できない)。
・学校側が集団下校させる場合、その旨を保護者に速やかに連絡できない。
・指定した引取り者が学校に赴けない場合、代理の家族等を学校に知らせる手段がない。
・学校は、あらかじめ決められた引取り者以外の人物が現れた場合、保護者に確認をとることができない。

非常時だからこそ、一歩間違えば現場がパニックに陥ったり、大きな手違いを招いたり、手遅れをもたらすおそれがあります。児童の安全の鍵となるのは、学校と保護者の確実な連絡手段です。

例えば、情報共有機能付きの安否確認サービスが導入されていれば、いずれの場合もトラブルを防げた可能性が高いのではないでしょうか。

安否確認サービスで保護者と学校の速やかな情報共有を

今回の大阪北部地震では、電話での緊急連絡網や一斉メール、学校のウェブサイトでの情報更新といった、既存の災害対策にひそむ盲点が露呈したといえます。

大事な子どもを預ける保護者にとって、学校関係者の落ち度やミスは許しがたいもの。非常事態に備え万全の体制をとることが求められますが、学校にとって安否確認サービスを導入するメリットの例として、次のような点が挙げられます。

【学校で安否確認サービスを導入するメリット】
・一斉メール配信、回答の集計、掲示板による情報共有を1つのシステムに集約できる。
・児童の所在を効率的に把握できるので、その分、保護者や学校職員の人手を所在不明の児童の捜索にあてることができる。
・集団下校させるなどの、想定外の学校の決断を瞬時に保護者に伝えることができる。
・災害発生時にサーバーが自動的に拡張するので、アクセス集中時にもストレスなく利用できる。

まとめ

家庭から子どもを託されている学校は、無事に子どもを保護者の手に引き渡す瞬間まで、細心の注意が求められます。だからこそ、学校と家庭の間で普段以上に密な連絡方法が必要です。

事例を見ても、緊急時の電話や一斉メールは万全の手段とはいえないのではないでしょうか。連絡のミスや遅れは児童の命や安全に関わり、学校への信頼にも大きく影響します。今回の地震をきっかけに、従来のマニュアルや連絡方法を見直し、確実な安否確認ができるようシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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