自然災害や人的災害から、従業員や会社を守るためには「企業防災」が必要不可欠。どういった業種・業態の企業であったとしても、取り組まないという選択肢はありません。
企業防災をおろそかにしていると、企業としての信頼を失うリスクを抱えるだけでなく、最悪の場合従業員の命に関わる事態を引き起こす可能性があります。
この記事では、企業防災の啓蒙やBCP策定のサポートを行うトヨクモ株式会社 防災士の坂田が「企業防災において注力するべき4つのポイント」を解説します。
記事内で解説する内容を含め企業防災の対策をまとめた、無料資料「企業防災チェックリスト」もダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
40項目の防災対策チェックリスト(PowerPoint形式)をダウンロードする
※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
目次
企業防災とは
企業防災とは、「自然災害(地震や台風など)」と「人的災害(事故など)」、全ての災害に対して企業が取り組むべき防災対策です。企業防災は「防災」と「事業継続」の2つの観点が重視されます。
防災の観点で最も重要なことは、従業員の身を守ること。災害から、自社で働く従業員を守るための対策を考えます。
事業継続の観点でも、従業員の身を守ることが最重要という前提は変わりません。しかし、「被災後に迅速に事業を復旧させる」という目的が付随します。
つまり「防災」は従業員の安全を確保するための取り組み、「事業継続」の観点からは従業員の安全を確保することで会社を守るという取り組みが求められるのです。
企業防災に注力すべき理由
企業防災が企業にとって重視されるのは、前述のとおり従業員と企業を守るためです。
しかし、企業防災が必要な理由はそれだけではありません。労働契約法第5条において「企業は従業員の安全を守らなければならない」と定められていることも理由の1つです。
「第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
(引用:厚生労働省・労働契約法第5条「労働者の安全への配慮」)
企業防災を怠った結果、災害によって従業員が怪我をしたり、万が一命を落としたりした場合、企業側が責任を負うことになります。
ここで、東日本大震災の際の事例を紹介します。震災時、宮城県にある七十七銀行女川支店の支店長は、自治体で指定されていた避難所ではなく、銀行の屋上へ避難するよう従業員に指示。その結果、被害者が出てしまいました。そして遺族は、銀行側が安全配慮義務を怠ったとして七十七銀行に対して裁判を起こしました。
この裁判では原告である遺族側が敗訴となりましたが、従業員が亡くなってしまったこと、そして企業の責任を問う裁判があったという事実は変わりません。
企業防災に取り組まないことは企業として大きなリスクを抱えることにつながります。従業員と会社を守るためにも、必ず企業防災を実施しましょう。
企業防災において考えるべき4つのポイント
この項目では、企業対策において具体的にやるべきことを、企業防災チェックリストで紹介する内容をもとに、4つに分けて解説します。
40項目の防災対策チェックリスト(PowerPoint形式)をダウンロードする
※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
1.訓練の実施
防災訓練は、従業員に災害時の対応を把握させるほか、危機意識を高めるためにも必要です。
大きな災害に遭った経験がないと、災害を他人事と捉えてしまいがち。そういった意識が社内に広がっていると、いざ災害が起きた時に冷静に対応できなくなってしまいます。
そういった事態を防ぐために、防災訓練が必要です。防災訓練を定期的に実施することで、従業員の防災意識の低下を防ぎます。
最低でも年に一度は、全従業員が参加する規模の防災訓練を実施しましょう。
2.備蓄品の準備
災害が起きると、従業員が帰宅困難者になる場合があります。
状況が改善するまでオフィスで過ごすことになるため、下記リストに記載のある食料品や寝具といったものを企業として可能な範囲で備蓄しておきましょう。
備蓄品のなかでも重要なものが、食料と水、衛生用品、情報関係の物資です。
食料品や水は、全従業員が3日生活できるだけの量が備蓄の基準と考えましょう。短期間とはいえ、オフィスで生活することになるので簡易トイレやトイレットペーパー、歯ブラシや生理用品も必要です。
ラジオは、スマートフォンやテレビが使えなくなった場合でも使用できる可能性が高いため、用意しておきましょう。
また上記リストに記載はありませんが、解熱鎮痛剤や胃薬といった薬類や、止血ができる包帯、消毒液などがあると、避難中に体調を崩したり、怪我をしたりした人の応急処置ができるため、オフィスに常備しておくと安心です。
3.防災マニュアルの作成
事業継続の観点では、BCP(事業継続計画)の策定を行いますが、防災の観点では防災マニュアルの作成が求められます。
防災マニュアルを作るときは、まずマニュアルを作成する目的を明確にすることから始めましょう。どの企業でも共通する防災マニュアルの作成目的は「災害時に従業員の命を守る」ことです。
この目的を前提とし、目的を達成するために非常時には誰が何を担当するのか、という役割を定めていきましょう。有事の際、対応を主導する担当部署や担当者を決めておくことで、従業員が判断に迷わず、対応しやすくなります。
さらに、災害時の従業員の安否確認方法を定めておくこともこの防災マニュアル作成時に重要な点です。BCPにも関わる内容のため、漏れがないように注意しましょう。
4.オフィスの耐震補強
自社ビルを保有しているのであれば、その建物の耐震性を確認しておきましょう。
また、建物そのものだけでなく、オフィス内の耐震も考えるべき事柄です。たとえば、高さのある棚を倒れないようにしたり、避難経路においてあるものを撤去したりするなどの対策が求められます。
災害が起きた時に、従業員の怪我につながる可能性があるものを見極め、事前に対策をしておきましょう。
「企業防災チェックリスト」の活用方法
「企業防災チェックリスト」は、私たちトヨクモ株式会社が提供している企業防災を強化するための必要な対策をまとめたチェックリストです。
こちらのチェックリストを活用することで、現時点で企業としてできている防災対策とできていない防災対策を把握できます。
まず、企業として防災対策をしないという選択肢はありません。しかし、0の状態から対策に取り組もうとすると担当者の負担が大きくなるため、優先順位をつけて対策を進めていく必要があります。
まず、チェックリストを活用して現状対策できていない項目を把握。そのなかから、優先順位をつけて対策に取り組んでいき、最終的には全ての対策を完了させることを目標にしましょう。
また「企業防災チェックリスト」はすでに防災対策に力を入れている企業でも、漏れなく対策できているかのチェックに活用できます。
40項目の防災対策チェックリスト(PowerPoint形式)をダウンロードする
※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
企業防災における2つの注意点
続いて、企業防災に取り組むうえでの注意点を2つ解説します。
現場の従業員だけでなく上層部も関わる
企業防災に取り組む時は、現場の従業員だけでなく社長や役員クラスが参加することが重要です。
会社の上層部の防災意識が高いと、防災意識が会社全体に広がります。反対に、上層部の意識が低いと、従業員の防災意識も低下し、有用な防災対策が構築できなかったり、防災訓練を適当に済ませてしまうようになったりすることが懸念されます。
そうならないためにも、防災訓練や防災マニュアルの作成にも積極的に上層部の人員が関わるようにしましょう。
リモートワークをしている従業員のことも考慮する
最近はリモートワークを導入している企業が増えています。
リモートワークは防災の観点から考えると、帰宅困難者の発生を防げる利点があります。さらに事業継続の観点から考えても、オフィスが被害にあっても自宅が被害がなければ業務を継続できるというように、メリットがあります。
しかし、自宅の防災対策は各従業員が自分で行う必要がある点に注意が必要です。耐震補強や非常用の備蓄品の準備など、会社側からは関与が難しくなります。
そのためリモートワークを導入している場合は、自宅の防災対策の重要性を従業員に周知することが大切です。
企業防災において最も重要なポイント
企業防災の目的は、従業員の命を守ることと、被災後も事業が継続できる状態をつくることです。そのために、従業員の安否確認が必須といえます。
従業員の安否確認体制ができていると、災害が発生したときに従業員の怪我の有無や、助けを求めていないかどうかを迅速に確認することが可能です。
そして従業員の安否が確認できれば、事業継続のためのヒューマンリソースの確保にもつなげられます。そのため、企業防災に取り組む時は、同時に従業員の安否確認体制の構築も実施するようにしましょう。
従業員の安否確認には『安否確認サービス2』がおすすめ
従業員の安否確認には、トヨクモが運営しているシステムである『安否確認サービス2』がおすすめです。
電話やメール、チャットサービスでも安否確認ができないわけではありません。しかし災害時は通信回線が不安定になっていたり、そもそも従業員が連絡をできない状態であったりすることなど、企業防災としては不安要素があります。
『安否確認サービス2』では、災害発生時に自動で従業員に対して安否確認を行えます。またクラウドサーバー上にシステムを構築しているため、災害時にアクセスが急増しても、自動的にサーバーを拡張し通信状況には影響がありません。
さらに、オンラインのチャットツールや掲示板機能も付属しているため、災害時には会社としての対応方針を迅速に従業員に共有できるため、事業継続の観点からも有用なシステムです。
従業員と会社を守るためにも、『安否確認サービス2』をぜひご検討ください。