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新型インフルエンザに屈しない企業へ!パンデミック対策のための情報収集と周知、BCP策定の基本

新型インフルエンザが広い範囲で流行する「パンデミック」は、企業にとって大きなダメージを与える要因となります。
従業員が1人でも新型インフルエンザを発病すれば、その強力な感染力によりオフィスにいる全員が被害を受けます。次第に、従業員の出社がままならない状況となり、事業継続が困難になる可能性は十分にあるのです。
今回は、新型インフルエンザによるパンデミックを防ぐため、企業が取るべき具体的な対策をご説明します。

パンデミックの歴史と脅威


パンデミックとは、感染症が全国的・世界的に大流行すること。爆発感染とも表現されます。

長年の歴史の中でさまざまなパンデミックがありましたが、近年は新型インフルエンザによって引き起こされる「インフルエンザ・パンデミック」がほとんど。新型インフルエンザは通常の季節性インフルエンザとウイルスの型が違うため、免疫のない人が多く、感染が広がりやすい特徴を持ちます。そのため、パンデミックにつながりやすくなります。

パンデミックの歴史

パンデミックの脅威を知るために、20世紀に入ってからの世界的なパンデミックの歴史を紐解いてみましょう。

1918~1919年 スペインインフルエンザ
全世界で6億人が感染し、2300万人が死亡。日本では人口の半数(2380万人)がかかり、約39万人が死亡。
1957年 アジアインフルエンザ
日本では約100万人が感染し、約7700人が死亡。インフルエンザは通常、気温が低く乾燥している12月〜3月が要注意時期ですが、長期間猛威を振るい、夏の時期にも学級閉鎖が行われていました。
1968年 香港インフルエンザ
日本では約14万人が感染し、約2000人が死亡(翌1969年には第2波で約3700人が死亡)。
2009年 新型インフルエンザ
日本における推計患者数は2000万人と、この20年間のうち最大の被害を記録。感染は世界214カ国・地域に及び、死亡者は1万8449人に達しました。

これらのインフルエンザウイルスは、その後も少しずつウイルスの型を変異させながら、流行を繰り返しています。

厚生労働省が公表している「新型インフルエンザ(A/H1N1)に関する報道発表資料」を参照することで、2009年の秋から冬にかけて多数の集団感染が発生したことを読み取れます。

同年の8月24日から10月11日の期間における「集団感染の発生総数」は、東京都だけで4,795にのぼったのです。また、新型インフルエンザの感染によるリスクを回避するため、多くの企業が早期に営業自粛を検討しました。

2019年冬も東京都内でインフルエンザが大流行

2009~2010年以降、新型インフルエンザが大々的に取り上げられる機会はなくなったものの、インフルエンザ被害の危険性は常に潜んでいます。2019年冬にも、東京では大規模なインフルエンザ被害が起こっており、患者数は過去最多となりました。

NHK NEWS WEBが公開した記事「ついに職場が閉鎖…ここまで来てます「インフル×人手不足」」では、インフルエンザの被害を受けた企業の一例として、以下のようなケースが挙げられています。

企業名被害状況・対応
関東バス運転手15人がインフルエンザに感染し、3つの路線で減便
若狭高浜病院患者数増加により病棟を閉鎖。新規患者の受け入れも中止
サムライト株式会社社内感染が確認できたため、社員にリモートワークを推奨

いずれも、急激に拡大する被害に対処するべく、急いで対応を講じたようです。
特に慢性的な人手不足の傾向にある業界・職場では、インフルエンザ被害の拡大が「事業の完全停止」という最悪のケースに繋がりやすいため、一層インフルエンザ対策の強化が求められるところです。

パンデミック(新型インフルエンザ)の脅威と社会への影響

近年の流行が確認されている新型インフルエンザは、「高い感染の確率と死亡率」「感染のスピードの速さ」を特徴としたウイルスです。インフルエンザと他の風邪症状との違いは以下の通りです。

【インフルエンザ】
症状:高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、せき、喉の痛み、鼻水 など
発症:急激
症状の部位:強い倦怠感など全身症状
【風邪】
症状:喉の痛み、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、せき、発熱(高齢者では高熱が出ない場合あり)
発症:比較的ゆっくり
症状の部位:鼻、喉など局所的
参考:厚生労働省「新型インフルエンザ患者数(国内発生)について

パンデミックの警告フェーズ

世界保健機構(WHO)は、新型インフルエンザの流行の度合いを数値で示す「警告フェーズ」を設定しています。警告フェーズは1から最大6の6段階。

WHOでは、定めた6つのフェーズのうち6番目(最悪事態)の「パンデミック期」と判定したときに、「パンデミックが起こっている」と宣言します。

パンデミック(新型インフルエンザ)の脅威がわかったところで、企業内での対策方法を確認してみましょう。

企業のパンデミック(新型インフルエンザ)対策

新型インフルエンザの発生と蔓延を社内で予防するための対策と、従業員への周知方法を紹介します。
企業がパンデミックの影響を受けることのないように、パンデミックを未然に防ぐための方法を「情報収集と発信」「備蓄対策」「企業の感染防止策」の3つの切り口から考えてみましょう。

パンデミック発生時に企業が行うべき情報の収集と発信

まずは総務部が正しいインフルエンザの情報を得て、柔軟に対策が施せるように就業規則を整備した上で、従業員にインフルエンザの脅威・未然に防ぐ方法(ワクチンなど)、そして感染した際の行動について、情報発信をしましょう。

新型インフルエンザの情報を収集する

正確な情報があってこそ、「どのように従業員を感染から守れるか」「万一の場合にどの事業を優先させるか」といった判断が可能です。新型インフルエンザ対策への取り組み、発生状況などに関する正しい情報を国(厚生労働省、外務省、内閣官房など)や自治体のホームページなどから入手しておきましょう。
この段階で正しいインフルエンザの知識を収集・共有し、対策を徹底することの大切さを従業員に理解してもらうことが、後々の被害拡大を抑えるカギとなります。
また、総務部自身が正しい情報を把握しておかなければ、従業員に対する行動指針の提示が遅れたり、誤った指示を出してしまったりミスの原因となります。パンデミックを軽視することなく、常にアンテナを張った状態で情報収集することを心がけてください。

パンデミック発生時の就業規則を確認・周知する

就業規則は会社によって違います。「インフルエンザに感染したとき、どのくらい休むべきか。また、いつから出勤するのか」ということについて、欠勤のルールが適切か確認し、その基準を具体的な説明を交えて周知しましょう。

「出社する従業員」と「欠勤すべき従業員」を明示しなければ、欠勤に対する抵抗から体調不良を隠して出社する可能性が懸念されます。正しい知識の共有とあわせて、パンデミック時にまつわる就業規則の認識を一致させるよう意識した行動が必要です。

なお、厚生労働省によると、インフルエンザのウィルスが排出される期間は以下の通りのようです。

Q.17: インフルエンザにかかったら、どのくらいの期間外出を控えればよいのでしょうか?
一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。そのためにウイルスを排出している間は、外出を控える必要があります。
排出されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後もウイルスを排出するといわれています。排出期間の長さには個人差がありますが、咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、不織布製マスクを着用するなど、周りの方へうつさないよう配慮しましょう。

出典:厚生労働省 インフルエンザQ&A より

あくまでも、インフルエンザのウイルスを排出する期間には個人差があります。インフルエンザと思われる症状があるのなら、個人がマスクをして対応するのはもちろん、テレワークやリモートワークなど、感染者がなるべく人と交流しないように、就業規則を整えておくことも大切です。

パンデミック状況下の職場における感染防止策

政府は企業に向けて、新型インフルエンザの感染機会を減らすための工夫を検討することを要請しています。意識的に感染機会を減らしましょう。
特に、出退勤に公共交通機関をもちいれば、人混みのなかで新型インフルエンザウイルスに感染するリスクが格段に増します。以下のような、感染防止のための通勤方法を検討してみてください。

通勤方法の変更による感染防止策

通勤ラッシュを避けるための時差出勤を適用
自家用車や自転車による通勤の推奨
出社が不要な業務は在宅勤務で対応

また、出社した従業員には、職場内でも感染防止策を徹底してもらいましょう。

職場内における感染防止策

職場の入口に消毒用アルコールを設置
ドアの取っ手・水道の蛇口を消毒
加湿器の導入による乾燥の防止
こまめな空気の入れ替え

お互いに感染防止の行動を促し、新型インフルエンザに対して高い意識を持って警戒するような職場環境の構築が望まれます。
また、感染を未然に防ぐ心がけはもちろん、感染した場合は、かならず職場に連絡をするよう周知しましょう。

パンデミックBCPの考え方

パンデミックBCPを考えるには、一般的な自然災害などを想定したBCPとは異なる、パンデミック特有の事情を念頭に置く必要があります。

○ピークに達するまで、被害が時間の経過と共に拡大する。また公共施設の閉鎖や事業自粛が長期間(数ヶ月単位で)継続する可能性がある。
○影響が出るのは、物的資源ではなく、主に「人的資源」。設備や工場を動かすのは人間なので、要員不足による機能停止が予測される。
○従来のBCPでは業務やシステムが突然ダウンし、徐々に復旧させていく計画を立てるが、パンデミックBCPは海外での発生から国内への侵入まで1~2週間のタイムラグがあり、事業停止に至るまでの準備期間が少しは残されている。その”猶予期間”でなにができるかが重要となる。
○流行が広範囲なので、代わりのサプライヤーの確保が困難(他からの援助が見込めない)

これらの特徴を考えると、通常のBCPを策定済みだとしても安心することはできません。上記の特殊性を加味した内容のBCPであることが必要です。具体的なポイントは次のとおりです。

パンデミックBCP策定のポイント

パンデミックBCPの策定には3つのポイントがあります。

1、トップダウンによる全社的対応の必要性
経営トップ自らが、状況を的確に判断し、業務継続や中断のタイミングといった意思決定をする必要があります。

地震や災害と異なり、新型インフルエンザの被害状況は、一般人が自分の目で見て実感できるものではありません。それだけに客観的に正確な情報を得て指示を出すことが求められます。そして新型インフルエンザは目に見えず被害がじわじわと拡大するだけに、現場では判断がつかないことも事実。従業員各自の判断に任せると右往左往する事態を招きかねません。

2、人の資源の確保
同時感染を防ぐため複数班による交替勤務(同時感染を防ぐ)、在宅勤務、クロストレーニング(ひとりの従業員が複数業務をこなせるようにする)など、代替要員を確保する工夫ができれば、経営への影響を最小限にとどめることができます。

新型インフルエンザの場合、欠勤率の高さを見込む必要があります。自然災害のように、非常事態がおさまれば会社に従業員が参集できる……とは限りません。

3、運転資金の確保対策
2ヶ月程度を想定して運転資金の確保に努める必要があるでしょう。

地震などの自然災害に被災した場合は、建物や設備の復旧費用が発生するものの、通常想定する操業停止期間は1ヶ月程度です。一方、新型インフルエンザの場合、建物が損壊するわけではないので復旧費用は小さいと考えられます。

むしろ問題なのは、事業がストップしてしまうことによる、従業員の給与、ビルの賃借料といった運転資金が確保できないこと、操業停止(もしくは縮小)する期間が長期にわたることもありえます。

徹底したパンデミック対策でこの冬を乗り越えよう

世界規模の大流行の可能性が指摘されている新型インフルエンザ。国内で流行した場合、最悪のケースで日本の全人口の約25%が感染すると厚生労働省は想定しています。

新型インフルエンザが大流行したときに事業をどうやって継続するか――。見えない脅威に備え「企業人」として、特に次の点を意識する必要があります。

○職場で集団感染を引き起こさないこと
○お客様や取引先に迷惑をかけないこと

個人の健康問題なら「各自、健康には気をつけましょう」の注意で済みます。しかし、各自が企業の一員である以上、ひとりの感染は組織に迷惑を及ぼし、社外の関係者に影響を与え、ひいては企業の事業の継続を左右しかねません。

そのためにも、社内に対策の周知を図ることが大事です。特に日本企業では、体調が優れなくても出社することを美徳とする風潮がありますが、BCPの観点観点から、自宅での積極的な療養を自然なものとする規則や雰囲気を作り上げることが大切です。

何よりもパンデミック対策で重要なことは社内が一丸となっていざという場面に備えること。その要となるのが、総務担当者です。従業員の健康と安全を守れるか、事業の継続を図れるかは担当者の努力にあるといっても過言ではありません。従業員の命に関わることだからこそ、必要な知識を備え、準備を蓄えておきたいものです。

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