近年、女性がより社会進出できるよう制度などを整える動きが活発になっています。2015年には、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律「女性活躍推進法」が国会で可決されました。企業においても、女性が働きやすくなる配慮がこれまで以上に求められています。
今回は、「女性の働きやすさ」が求められている企業において、どのように福利厚生を整備すべきかをご紹介します。
目次
女性を意識した福利厚生とは
企業にとって優秀な女性社員はできるだけ長く在籍してほしい存在です。しかし、従来の働き方を維持する企業は女性にとって働きにくい場所となっているケースがあります。
たとえば、休暇が取得が難しい企業です。飲食などのサービス業、先生など教育業では、特に休暇が取りにくいと言われています。飲食店では年末年始の休暇が取れない、学校の先生は部活動などで休日出勤しなくてはならない人もいるでしょう。
日本では「休み=悪」とみなす考えがまだまだ根強く、こうした思想や環境を改善しない限り、女性の離職率は高まるばかりです。
また、育成環境のない企業も女性にとっては不満の種になります。必要な研修やスキルアップの機会が少なく、即戦力を採用しても多くの退職者を出してしまうような企業は、そもそも入社を希望する女性が減ってしまうでしょう。
しかし現在は、そういった状況に企業がさまざまな形で対応し、女性が働きやすい環境を提供できるようになってきました。女性の定着率が高い企業は、労働環境の整備が進んでいます。次に、具体的な取り組み例をご紹介します。
積極的に休暇を推奨する
法律では、会社員の権利として有給休暇が定められています。しかし、社内に休みを取りにくい雰囲気があり、実際は有給休暇を自由に取得できない企業もあるのが現状です。
一方、環境改善に積極的な企業では、「仕事はしっかりやり遂げて、休みもしっかり取る」という職場の雰囲気作りにも取り組んでいます。このように従業員の生活を考えている企業は、従業員満足度も高い傾向にあります。
人間関係などを風通し良くする
離職理由として多いとされているのが、「人間関係の悩み」です。ある企業では、座席を固定しないことで座席位置による人間関係に悩まされる心配をなくしたり、さまざまな人とコミュニケーションが取れるようにしています。
また、社員同士のコミュニケーションを活発化させるため、ランチなどの費用を一部負担する制度を設けている企業もあります。社内のコミュニケーションを活発化すると、チームワークを強めたり、社員のストレスを軽減させたりできるのです。
社内で育児や介護に関する理解を深める
女性社員の場合、育児や親の介護などを理由に、フルタイムではなく時短勤務で働いていることもあります。
しかし職場に時短勤務の社員が少ないと、フルタイム社員よりも早く退勤する人に対して、悪い印象を抱く人も現れるかもしれません。こうした印象が社内に広まると、時短勤務社員がフルタイム社員と変わらない時間働いてしまったり、最悪の場合は退職につながったりします。
現在は働く女性が増えており、それにともなって時短勤務といったフルタイム以外の働き方も増えてきています。これまでと異なる働き方に対する社内理解を深めることは大切です。必要に応じて研修会などを開催し、社内での理解を深めましょう。
参考:
女性が働きやすい職場づくりとは
離職率の高い企業、低い企業の特徴は?多様化社会を生き抜くために必要なコト
女性の扶助に関係する制度
女性が働きやすくするためには、働きやすさにかかわる福利厚生の充実が重要です。次は、実際に導入されている福利厚生をご紹介します。
女性社員を意識した制度として、産休、育児にかかわるものがあります。産休の正式名称は「産前産後休業」といい、労働基準法第65条に定められています。内容は以下のとおりです。
・産後8週間は仕事をさせてはならない。ただし、女性労働者の希望があり、かつ医師の許可がある場合は6週間を超えた時点で職場に復帰させてもよい
労働基準法には、他にも妊娠した女性に対する事項があります。
・妊娠中、業務に負担を感じた場合は軽微な仕事への変更を申し出ることができる。ただし、そのような業務がない場合、仕事をつくってまで移動させる必要はない
・妊娠中、産後1年未満の女性から申し出があった場合には時間外労働・休日労働・深夜労働を禁じる(女性が管理職の場合には、深夜労働をのぞいてこの規定は適用されない)
・会社は、妊娠中または産後1年未満の女性が健康診査や保健指導を受ける時間を与えなくてはいけない
・妊娠を理由にパートへの雇用転換、解雇や減給など不利益な扱いをすることはできない
管理職も深夜残業の規定は適用されるため、妊娠中の女性管理職であっても、「深夜残業をしない」という申請は可能です。
出産が終わって8週間が経過すると、育児休暇が適用されます。これは、こどもが1歳になる前日までの間、希望する日数分の休みが取れる制度です。保育園に入園できない場合などは、申請をすることで子どもが2歳になるまで延長できます。
近年、「パパ・ママプラス制度」という制度も定められました。両親がともに育児休業する場合は、1歳2ヶ月まで育休を延長できる制度です。なお、産休・育休の期間、企業に給与支払いの義務はありません。休暇中は基本的に行政からの給付金を受給することになります。
参考:
産休とはどんな制度?~働くママの労働基準法~
産休・育休はいつからいつまで取れる? 制度の基本ともらえるお金
各社のユニークな女性向け福利厚生
これまでは、女性が働きやすくなるための取り組み方や制度について解説してきました。
こうした制度を受けて、各企業で個性的なサポートを行う取り組みがなされています。最後は、実際の企業が導入している女性を意識したユニークな福利厚生をご紹介します。
日産自動車株式会社
日産自動車は、「四季旬報2017年版」の調査で、入社人数が多い中でも、入社後3年間の離職率が0%の企業に選ばれました。また会社目標として、女性が働きやすい環境づくりに積極的に取り組んでいます。
積極的な女性の役員登用、勤務時間を定めないフレックス勤務制度に、半休制度や在宅勤務を認めるなど、社員のワークライフにあわせた補助が受けられるようになっています。
資生堂
化粧品メーカー大手の資生堂は、ほかの企業に先がけて育児休暇や時短勤務を取りいれています。同社は女性社員の働き方を常に考え、女性リーダーの任用と育成強化を目指したさまざまな取り組みを行っています。
ユニークな取り組みのひとつが「キャリナビランチ」です。ロールモデルとなる社内外の女性を招いてランチ会を行い、女性社員のキャリア意識向上を目的としています。同時に、キャリアウーマンのネットワークづくりも目的としてます。
また、育休経験がある男性社員のインタビューを中心とした「イクメンランチ」という意見交換会も開催しています。女性が働きやすくなるためには、男性の理解も必要不可欠です。同社が男性社員も巻き込んだ取り組みを行っているのは注目すべき点でしょう。
サイバーエージェント
サイバーエージェント社の「macalon(マカロン)パッケージ」というユニークな取り組みもご紹介します。この制度は「出産、育児を経た女性にも、長く継続して働いて欲しい」との目的でつくられた人事制度です。
マカロンパッケージは5つの制度で構成されています。
- エフ休
エフ休とは、女性特有の体調不良に適用される月1回の特別休暇です。「エフ」は、「Female」の頭文字です。また、女性が取得する有給などをすべて「エフ休」に統一することで、女性が休みやすいように配慮されています。 - 妊活休暇
不妊治療を受けている社員が月1回取得できる、当日取得も可能な特別休暇です。取得時はエフ休とすることで理由を明確にしなくてよい心遣いがあります。 - 妊活コンシェル
妊活コンシェルは、妊活に興味や不安のある社員が専門家に月1回30分の個別カウンセリングを受けることができる制度です。 - キッズ在宅
子供が急病になった場合などに、在宅勤務を可能にする制度です。 - キッズデイ休暇
子供の入学式などの学校行事がある場合に取得できる休暇です。年に半日休暇2回まで取得可能です。
サイバーエージェント社では、自分の体や家族をいたわりながら、安心して休暇や在宅勤務がとれる体制をつくっているのです。
参考:
女性の離職率から考える!働きやすい会社まとめ
女性活躍促進制度 macalon
まとめ
今回は、女性が働きやすい環境づくり、女性に向けた福利厚生について紹介しました。女性の社会進出が増え、企業にも環境の改革が求められています。社内ではどのようなニーズがあるのかを考え、女性も男性も一丸となり、働きやすい職場を目指してみてはいかがでしょうか。